私はひどい
「どうした?リコ?暗い顔をして?」
「あ、ううん、何でもない。ちょっと、今日は疲れたみたいだから……本はやめてもう寝ることにするわ」
イザートにそう告げると、足早に部屋に向かう。
「メイ、今日はもう寝ることにするわ。1日ありがとう。お休み」
一人になりたくて、追い出すようにメイに声をかけ、ベッドに倒れこむように寝ころんだ。
着替えもせずに横になってしまったら服にしわがついてしまうとは思ったけれど、とても着替える気力がでない。
上等な生地で作られた服。
皺を気にするような美しい服。
山賊みたいだと言われた私の服とは比べ物にならないくらい高級そうだ。
だけれど……その山賊みたいな服よりもアイサナ村の人たちはボロボロの布を身にまとっていた。もう服とは言い難いものを身にまとっている者もいた。
声をかけてくれた女の子を思い出す。
穴が開いてるのママに縫ってもらおうかと……。穴が開いたら縫って着るのが当たり前なのだろう。あんな小さな子が口にするほどに、日常の風景なのだ。
アイサナ村にやってきた水侯爵と水聖女の服装を思い出す。
とても美しく立派だった。
だけれど、誰も自分たちがこんなに貧しい生活をしているのに贅沢をしていると批判するような者はいなかった。
それはそうだろう。精霊の加護を持ち、雨という恵みをもたらしてくれる……役割を果たす敬うべき存在だと分かっているのだ。
何も考えずに山賊風の服装をして行ったけれど……もし、私も今身につけているような立派なドレスで行ったらどうだっただろう。
自分たちは食べる物にも着る物にも苦労しているのに、何の力もない闇聖女は贅沢をしていると恨まれても仕方がなかったんじゃないだろうか。
力が無いのは仕方がない。
だけれど、それを言い訳に何もしないことは……言い訳できない。
だって、力がある人って、この世界に10人だけでしょう。それ以外の人はみんな特別な力はない。けれど、働いている。それぞれがすべきことをしている。
私は本来の聖女として奇跡のような魔法を使うことはできない。
だけれど……。皇帝にはどうせ選ばれないからと、課せられた役目。まずはアイサナ村を救うということを放棄していいわけはない。
水侯爵と水聖女が救うだろうから、私は何もしない……どころか……。
魔法が見たいと。アイサナ村に「遊びに行った」のだ。
日照りで苦しんでいる村へ「物見遊山」で尋ねて行った。
なんて、醜い。被災地に野次馬に行きスマホで撮影しているだけの人間と何が違うのか。




