07 蘇生魔術【《覇者の翼》視点】
シンシアはパーティーメンバーが無事に地上へと戻るのを見届けると、すぐに迷宮へと引き返した。
パーティーメンバーとしての義理は果たしたつもりだ。
迷宮内でシンシアが離脱したらアベルたちは全滅すると考えて留まっていたが、彼らを地上まで送り届けたのだから文句はないだろう。
「レインさん……どうか、無事でいてください」
幸いなことに、この《奈落の坩堝》には罠が存在しない。
パーティー内における罠解除はレインの役割で、シンシアはそれらの技能を会得していない。もしも罠があった場合、罠で受けたダメージを回復魔術で癒しながら進む羽目になっていただろう。
シンシアは懐から一つの魔道具を取り出した。
五つの水晶が連なっているその魔道具は、パーティーメンバーの生死を確認するための魔道具だ。
水晶は五つともその光を失ってはいない。
少なくとも、レインはまだ生きているのだ。
だが……急がなくてはならない。
レイン一人では、この迷宮の魔獣に太刀打ちできないのは明らかだ。
シンシアは来た道を戻る。
だが――先程の逃走時とは一転して、シンシアはほとんど魔獣に気付かれることなく迷宮の奥へと逆戻りしていく。
これはシンシアの使っている魔獣避けの魔術の効果によるものだった。
残念ながら自分一人にしか効果が及ばないため、さっきは使えなかったが、他のメンバーがいない今ならば活用できる。
そうして魔獣避けの魔術を使ったシンシアは、あっけなくドラゴンと対面した大広間の前にまで辿り着く。
鉄の扉は閉まっている。
シンシアは恐る恐る近付き、大広間へと繋がる扉をゆっくりと開いた。
背筋に冷や汗が流れる。
シンシアの使う魔獣避けの魔術は確かに強力だが、流石にドラゴンのレベルともなると通用しない。
彼女一人ではドラゴンにはまず勝てない以上、見つかったら一環の終わりだ。
「ふぅ……」
大広間にドラゴンの姿はない。
だが、ここはドラゴンの棲家なのだろう。
聖職者である彼女には、この場所で無数の冒険者が命を落としていることに気付いた。
「……どうか、安らかに眠ってください」
この場所でドラゴンに破れて散った冒険者たちの無数の魂が蓄積している。
聖職者の端くれとして、できるならばその全てを鎮魂して回りたいところだが、その余裕はない。
優先すべきは死者よりも……生者だ。レインを早く見つけなくては。
「あれ?」
しかし――ふと、その中に見覚えのある魂が混じっていることに気付く。
一瞬、レインのものかと思いシンシアの心臓が止まりかけるが、すぐに違うと気付く。人間のものよりも一回り小さいそれは、霊核と呼ばれる妖精の魂だ。
「アリアちゃん……!」
レインの使い魔であるアリアの霊核だ。
シンシアは急いで懐から液体の入った小瓶を取り出す。
蓋を開き、中に入っている聖水を地面に撒いていく。
そして杖を筆代わりにして、聖水で地面に模様を描く。魔法陣だ。
――急がなければ。
あまり時間の猶予はない――シンシアの蘇生魔術は、対象の死後から時間が経過しすぎると使えなくなってしまう。
聖水で魔法陣を描き終えたシンシアは、その上に立つと、静かに目を閉じた。
杖を使ってアリアの霊核へとそっと触れる。
そして、唱えた。
「《聖女の聖杯》」
《聖女》シンシア――ただの平民でしかないはずの彼女が、どうして《聖女》とまで呼ばれるようになったのか。
それは……この魔術によるものだった。
蘇生魔術――太古の昔に失われた大魔術。
シンシアによって現代において再び編み出されたその魔術は、アリアの霊核を淡い光で包み込むと、彼女の身体を復元し――その命を蘇らせた。
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