06 分裂【《覇者の翼》視点】
一方その頃、レインを囮にしてドラゴンからなんとか逃れたはずの《覇者の翼》一行は、危機的状況に陥っていた。
「くそがッ、邪魔だ――ッ」
周囲の四方八方から襲い掛かってくる魔獣の群れに対し、アベルが吼える。
彼が得物である巨大な大剣を振り回すと、魔獣が次々と引き裂かれ、叩き潰されていく。
だが、それでも数が減らない。
あまりにも数が多すぎた。
迷宮の上層。
ドラゴンから逃げ出した先で、アベルたちは際限なく沸き続ける大量の魔獣に囲まれていた。
「どうなってるんだッ、このままじゃジリ貧だぞ……ッ」
「私の魔力ももう限界よっ! これ以上は無理!」
ロジェとユミナが悲鳴を上げる。
シンシアは無言になって支援魔術と回復魔術を使い続けているが、その顔色は険しい。
原因はレインだ。
パーティー内の誰もが気付いていなかったが、レインの使い魔であるアリアが行っていた索敵は、妖精固有の、魔女ユミナですら再現できない極めて高精度な魔術であった。
高度な索敵。それがなくなったことにより、《覇者の翼》はこうして魔獣の群れに囲まれるまで、魔獣の接近に誰一人気付かなかったのだ。
ここに至って……全員が気付いていた。
レインをあの場所で囮にしたアベルの行動は、完全に悪手であったと。
「アベル! あんたがレインを囮にしたせいでしょ! 何とかしなさいよ!」
「あ!? お前だってアイツのことを役立たずだと思ってただろうが!」
「……お二人ともいい加減にしてください! まずはこの群れに対処するのが先です!」
危機的状況にも関わらず口論を始めたアベルとユミナを、シンシアが一喝する。そのまま杖で大地を叩くと、光の波動が発生し、周囲の魔獣を吹き飛ばす。
不味い状況だ。シンシアは内心で舌打ちした。
パーティー内の雰囲気が険悪になっている。
そのせいで今まで取れていた連携も滅茶苦茶になっており、本来の《覇者の翼》ならば倒せる程度の相手にすらこうして苦戦する羽目になっている。
「――《閃滅》!」
シンシアの杖の先端から莫大な光が奔る。
幾条もの光に分かたれたそれは、寸分違わず魔獣だけを射抜き、その身体を燃やし尽くした。
それによって敵の攻撃の手が緩まる。
アベルとロジェが即座に反撃に転じ、ユミナが魔術を発動しそれを援護する。
アベルが薙ぎ払い、ロジェが切り開く。
群れ成す魔獣の海に隙間を作り、包囲を強引に突破する。
逃げようとする一行を狙う魔獣の攻撃によって全身に傷が刻まれ、全員が少なくないダメージを負っていくが、ここで足を止めてはジリ貧だ。
「……はぁ、はぁ」
「おい、アベル。このままじゃ全滅するぞ……どうするつもりだ」
「黙れ! とにかく上に逃げるぞッ、魔獣は階を越えては追ってこないはずだ!」
苛立ったようにロジェを怒鳴りつけるアベル。
何もかもが上手くいかなかった。
――レインを囮にして、殺したところまでは上手くいったと思ったんだが。
内心で呟く。あれはレインを陥れる千載一遇の機会だった。
ちらり、とシンシアを見る。
彼女は回復魔術で味方の傷を癒しつつ、走り続けている。
《覇者の翼》は同じ村出身の幼馴染五人で作り上げたパーティーだ。
当然、アベルとレイン、シンシアの三人も幼馴染である。
そして、だからこそ気付いていた。
シンシアが、レインに好意を持っていたことに。
だが……アイツは、レインはドラゴンにやられて死んだはずだ。
落ち込んでいるシンシアを慰めれば、きっと俺に靡くはずだろう。
アベルは疲労で息を吐きながら、内心でそんな下種な考えを巡らせていた。
しかし。
当のシンシアが、そんなアベルのことを冷め切った目で見ていたことには、気付いていなかった。
□
そして、一行が何とか魔獣の追撃を振り切り、地上へと戻ったとき、アベルは気付いた。
――シンシアの姿が、どこにも見えないことに。
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