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21 決戦前

申し訳ありません、プロットを修正したため、18話以降からの展開を少し修正させていただきます。


 シンシアのパーティー再加入後。

 アベルたちは一旦宿へと戻り、シンシアにレインへの報復の計画があることを告げ、参加を促した。


「レインの連れているあの女を潰すには……シンシア、お前の祓魔術(エクソシズム)が不可欠だ。どうか協力して欲しい」

「はい……勿論、協力させていただきます」


 罪悪感がシンシアの胃を軋ませる。

 だが、今のシンシアをレインの使い魔だ。彼のためならば、たとえ幼馴染であるパーティーメンバーを騙すこともしよう。


「レインを襲撃するのは今日の昼だ。アイツが街から離れたところで……殺すぞ」


 Sランク冒険者は非常に目立つ。アベルたちがギルドで聞き込みをしたところ、レインの動向はすぐに判明した。(変更により王都を離れた設定はないはずです)

 今日、レインはSランク迷宮、《奈落の坩堝(フォールン・アビス)》へと再び赴くらしい。


 あの強い使い魔を手にしたから調子に乗っているのだろう、とアベルは内心で舌打ちした。


 荷物運び、雑用役だったレインの分際で調子に乗りやがって……!


「どこで仕掛けるのかしら?」

「あまり王都に近過ぎる場所で襲撃すると最悪の場合、王都に逃げ込まれる可能性がある。そうしたら俺らは犯罪者だ」

「そうね。あんな奴のために犯罪者になるなんて私は嫌よ」

「俺だって嫌に決まってる。だから、絶対にレインの奴を逃がさずに殺す必要がある――レインが王都からある程度離れた時点で襲撃するぞ」

「かといって迷宮に近すぎるのも問題よねえ。レインが連れた女が吸血鬼(ヴァンパイア)だったなら、太陽光を遮る場所に逃げ込まれたら困るもの」


 主にアベルとユミナによって計画が立てられていく。

 腐ってもSランク冒険者なだけあって、その計画は綿密だ――レインが、アベルたちの襲撃を予期していなければ、の話だが。


 そんなアベルたちの様子を、シンシアがじっと眺めていた。


「レイン本人や所詮Dランクの妖精(フェアリー)は雑魚だが……使い魔の死霊種(アンデッド)は強力だ。俺らはまず集中して死霊種の女を狙い、処理する」

「ああ、了解だ」

 

 ロジェが口元を歪める。

 その手には新たな剣が握られている。愛用していた剣は折られてしまったが、この剣もそれに匹敵する魔剣だ。


「シンシア、相手の最大の手駒は死霊種(アンデッド)だ。お前の祓魔術(エクソシズム)が鍵となる……いいな?」

「……はい」

 

 シンシアは頷いた。

 事ここに至って説得は無意味だ。

 シンシアは既に決意している――レインの使い魔として動くことを。


 レインからの命令はただ一つ。

 自分からの命令があるまで、アベルの味方として行動するというものだ。詳細は聞かされていないが、恐らくは土壇場でシンシアに裏切らせることで、アベルたちの間に致命的な混乱を与えるつもりだろう。


「ねぇ……本当にシンシアに協力させるつもりなの?」


 ふと、ユミナが眉を顰めて言った。その目にはシンシアに対する猜疑が見え隠れしている。


「なんだ、不満か?」

「だって、おかしいじゃない。普段のシンシアだったらレインの暗殺なんて計画に乗らないはずよ?」

「ふん、つまりシンシアもようやくレインに愛想を尽かしたってことだろ?」

「それならいいけど……」


 アベルがその意志を変えるつもりがないと分かったのか、ユミナが苦虫を噛み潰したかのような表情をした。

 ぎろり、と彼女の鋭い視線がシンシアを刺す。


 レインの予想した通り。

 ユミナは明らかにシンシアのことを疑っているが――それでも、彼女はアベルの決定に従っている。


「まもなくだ……俺を見下しやがったレインを殺して、決着をつけてやる」




 □




 ――そんな計画を《使い魔契約ファミリア・エンゲージ》を通じてシンシア越しに監視していた僕は、宿の一室で嘆息した。


「決着をつける? それは……僕の台詞だ」


 アベルを殺して改めて――冒険者として活動しよう。

 花瓶の中に入り水浴びをしていたアリアの頭を撫でながら、僕は笑みを浮かべた。


「アリア、ルーシア、ライラ、そして――シンシア。勝負は今日だ」


 先日のアベルとの決闘騒ぎの後、僕が《奈落の坩堝(フォールン・アビス)》へと向かうという情報を、僕はあえてギルド内で流した。


「特にライラとシンシアは使い魔になってもらってすぐで申し訳ないけれど、存分にその力を振るってもらうよ」


 その目的は、アベルたちを釣り出すためである。

 僕にとって一番嫌なのは、アベルたちがなりふり構わずに街中で奇襲を仕掛けてくることだ。


 無論、街中で襲撃を仕掛けてきた日にはどうあってもアベルは犯罪者である。

 アベルとて、これまでの輝かしい経歴を棒に振るような選択肢を取るとは思えなかったが、頭に血が上ってその愚かな選択をしないとも限らない。


 ゆえに、念の為、僕が街を出るという情報を流した。

 そして見事にその情報に釣られたアベルたちは、僕の予定通りに行動している。

 最悪の場合はシンシアを通じて軌道修正させるつもりだったが、その必要もなさそうだ。


「できればルーシアの力を最大限に発揮できる夜に戦いたいところだったけど……ルーシアを吸血鬼(ヴァンパイア)だと予想されている以上、流石に無理だろうしね」


 吸血鬼(ヴァンパイア)には制限が多い。


 それは種族的な特徴、あるいは呪いのようなものであり、どんなに強い力を持っていようと、吸血鬼という種族である以上は完全な克服は不可能だ。


 吸血鬼の弱点。その最もたるものは太陽の光だ。

 それこそ、下位の吸血鬼ならば太陽の光を浴びただけで灰になってしまうレベルでの弱点である。


 最上級の力を有するルーシアならば、太陽の光を浴びたからといって灰になることこそないが、しかし、その力が半減してしまうことまでは避けられない。


「だが――対策は既に練った」


 準備は万端だ。ライラは思わぬ拾い物であったが、シンシアの協力を得ることもできた。

 これならばアベルたちへの勝率は十分だろう。


「今日で……全て終わらせてしまおう」


 万感の思いを込めて、僕は呟いた。


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