18 ハイ・エルフ
エルフ。
光精霊とも称される彼女たちは、先程紹介された火精霊と同じ、精霊種の一種だ。
別名は森の民。
魔術に対する適性は人間よりもずっと優れており、またその容姿の美しさも相まって、奴隷としては特に高値で取引されている存在だ。
中でも、高位光精霊は上位種と呼ばれ、種族的に人間よりも高い魔術適性を持つ光精霊の中でも、特に優れた能力を持つ存在だ。
その存在は非常に希少で、彼女たちは《光精霊の王族》とも時に称される。
「元々、この容姿と処女性、それとハイ・エルフという希少価値から、後日に性奴隷として競売に掛ける予定だったのですが……」
奴隷商人の言葉を聞いた高位光精霊の少女が顔を青褪めさせる。
自らの身体をその細腕で抱くようにして、貫頭衣を押し上げている大きな胸をすっと隠した。
高位光精霊の奴隷を観察している僕の方を見て、奴隷商人はにやりと笑う。
「何せこの容姿です。きっと好色な貴族の方々がこぞって入札するでしょう」
「そうだね」
「可哀想だとは思いませんか? こんなに若い娘が貴族共の慰み者にされるだなんて?」
「はあ……まあ、思いますけど」
当の奴隷商人がそれを言うのか、と思ったが口には出さない。
口ぶりからして、僕の同情を引こうとしているのだろうか。
ちらり、と奴隷商人は僕の手にある金貨が詰まった袋を見て笑った。
「ですが……競売で予想される値段よりも高い金額で買ってくれるなら、喜んで売りましょうとも」
「で、能力は?」
容姿の良さには大してこだわりはない。
こっちはあくまでもアベルに対抗するために戦闘用の奴隷を買いにきたのである。
縋るような目で見てくる彼女に同情はするが、能力の要求を満たしていないのならば買うつもりはない。
別に僕は奴隷を救うためにこんな場所に来たわけではないのだ。
「安心してください。彼女はこうして奴隷になる前は精霊騎士として活躍をしていました。前衛としての能力は折り紙つきです」
精霊騎士――それは、精霊魔術と呼ばれる魔術を扱う近接職のことだ。
近接職という点では僕の条件とも合致している。
懸念点としては……光精霊ということは、彼女が得意とするのは光の精霊魔術だろう。ルーシアとの相性はあまり良いとは言えない。
だが、僕が見る限り彼女の魔術的素養はそれすらも補って余りある。
先程見た三人の奴隷とは天と地ほどの差だ。そして、近接戦闘もこなせるというのも高得点である。
加えて、光精霊魔術が使えるのなら、僕たちの中で不足している回復役もこなすことができる。
僕は内心、彼女を購入することを既に決めていた。
「それで、値段はいくら?」
「はい。金貨五〇〇枚ほどでいかがでしょうか」
僕は顔を顰めた。予算ギリギリだ。
Sランク冒険者として活動している中で今まで貯めた金のほぼ全額である。
金貨五〇〇枚という金額は決して安くはない。
Sランク冒険者にもなれば数年、早ければ一年程度で回収できる額ではあるが、同時に、庶民が一生で手に入れる金額よりもずっと多い額だ。
だが、ハイ・エルフという希少性やその魔術的素質、女神の如き容姿などを含めると、それだけの金額でも十分に売れると奴隷商人は判断したのだろう。
僕は少し考えたが、結局彼女を購入することにした。
「まあいいか。交渉成立だ」
「毎度ありがとうございます」
満面の笑みで奴隷商人が言う。
渋れば値切ることはできたのかもしれないが、生憎僕は自分にそういった能力がないことを重々理解している。どうせ金などまた稼げばいいだけの話だ。
「あ……ありがとうございます!」
「別に。僕としても君を買うだけの目的があって買ったわけだし、感謝される謂れはないよ」
泣き出すハイ・エルフの少女にそう返す。
よっぽど性奴隷になるのが嫌だったらしい。
しかし、僕に買われるということは戦闘で命を失う可能性もあるということなのだが、それを理解しているのかしていないのか。
とはいえ、相手が勝手に感謝してくれるのならそれで良いかと思い直す。
テイマーが使い魔の性能を最大限に引き出すには、強い信頼関係が不可欠だ。そう考えれば彼女の反応は悪くはない。
「では早速契約をお願いします。こちらの焼印の魔道具に魔力を込めて、彼女の身体の、心臓の位置に印を付けることで奴隷契約が完了となります」
「ふうん……《使い魔契約》とはまた違う感じなのか」
奴隷契約も同じ使役系の魔術であるが、あくまで僕はテイマーなので専門外だ。
手渡された焼印の魔道具を眺める。これを押し当てるだけで良いというのは、双方の同意が必要な《使い魔契約》との大きな違いだな……。
「これは奴隷を買う際には絶対必要なわけ?」
「ええ、契約なしで購入したがる方もいらっしゃいますが――万が一にも逃亡などされては、当商館の名にも傷がつきますので」
「なるほど……」
僕は立ち上がり、焼印を持ったまま奴隷少女の方へと近付く。
ハイ・エルフの少女が表情を強張らせながら、震える手で身に纏っていた簡素な貫頭衣をたくし上げ、心臓の位置を露出させた。
僕はそこにおもむろに焼印を押し当て、魔力を流す。
どうやら痛みがあるのか、少女は歯を食い縛って悲鳴を押し殺している。
「これで契約は完了です」
数秒後、奴隷商人が言った。
焼印を彼女の身体から離す。絹のような白い肌の、心臓付近の部分に黒色の文様が刻まれている。
「じゃあ、これからよろしく」
「はい……よろしくお願いします、ご主人様」
「面白い!」
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