13 対《覇者の翼》戦
「お、お前……何しやがるッ!」
僕とアベルの会話を呆然と聞いていたロジェやユミナがようやく我に返る。
二人がそれぞれの武器を構え、僕に向けた。
「復讐だよ……殺されかけておいて許せるほど、僕は人間ができてないんでね」
ルーシアが殺気を撒き散らす。影が蠢き、臨戦体勢に入った。
僕の肩に止まっていたアリアも、魔力を練ってすぐにでも魔術を発動できる状態に移行する。
僕は言った。
「ロジェ、ユミナ……安心してくれ、僕は君たちには大して興味がないんだ。そのまま帰ってくれるなら君たちに手を出すつもりはない」
「死ね、レインッ!」
「アベルから離れなさい――ッ!」
ロジェがこちらに突貫し、ユミナが雷の魔術を放つ。
いつの間にか集まってきていた野次馬共が歓声と悲鳴を上げた。
……僕としては、あの二人との戦いを避けようとしての言葉だったのだが。
「流石はご主人様、素晴らしい挑発です」
「レインの今の台詞は本心からの言葉っぽいけどねー」
ルーシアがうっとりと頬を染めるが、どちらかというとアリアの方が正解だ。
そして二人に呼応するように、アベルが動いた。
石畳の上に転がっていたアベルが跳ねるように起き上がり、僕へ向かって殴りかかってくる。
「《使い魔強化》――アリア、防げ。ルーシアは二人を気絶させて」
「はいはーい――《妖精障壁》」
アリアが魔術で即座に障壁を展開し、それを防ぐ。
淡い緑色の障壁は、僕の支援魔術の効果もあり、アベルの攻撃を完全に受け止めている。
ルーシアが同時に動いた。
影を操りこちらに接近するロジェを牽制しつつ、《生命爆発》の衝撃波によって雷の魔術を消し飛ばす。
しかしそれを受けてユミナが笑みを浮かべ、詠唱を変える。
彼女の持つ杖の先端に炎が灯り――次の瞬間、炎が爆発し、影を吹き飛ばした。
僕は唇を噛む。影魔術の弱点である強い光。
あらゆる魔術を修めたと謳われる魔女、ユミナがその弱点を突かないはずがない。
あれでもユミナはSランク――最高位の冒険者だ。その戦闘能力や対応能力はかなり高い。
「ルーシア、いけるか?」
「勿論――ご主人様に勝利を捧げましょう」
ロジェが迫る。剣聖である彼の剣の冴えは、僕では到底目では追えない。
だがルーシアはその剣閃を軽々と回避。そのままロジェの剣に拳を叩き込み、強引に圧し折った。
ロジェが呆然と粉々になった剣を見つめる。隙だらけだ。ルーシアが見逃すはずもなく、ロジェの胴体に蹴りを叩き込み、その身体を吹き飛ばす。
更に影の刃を手繰り追撃を仕掛けるが、これはユミナが咄嗟に放った炎の魔術よって遮られた。
だが、吹き飛ばされたロジェに起き上がる様子はない。
気絶したようだ。これで一人。
「ぐッ……くそッ、どうして押し切れない――ッ!」
「あんた程度の攻撃で私とレインの絆の結晶が破れるわけないでしょうが」
アリアがアベルを嘲笑する。
《妖精障壁》は、アベルが何度殴っても一切壊れる様子はない。
当然の帰結だ。仮にもドラゴンの息吹をほぼ防げるほどの防壁を、《勇者》とはいえただの人間の拳や蹴りで破れるはずがない――まあ、ルーシアのように人外の膂力があれば別だが。
「こっちはレインの最初の使い魔である私が抑えててあげるから、さっさと終わらせなさいよー」
「ふふ――当然。私はご主人様の最強の使い魔なのだから」
ルーシアが狂気的な笑みを浮かべ、ユミナに向かって迫った。
前衛がいなくなった魔術師など大して怖くはない。
膨大な炎の壁を即座に展開するユミナだが、ルーシアは正面から炎壁を突き抜ける。ルーシアの全身が激しい火傷に襲われるも、その動きは一切鈍らない。血のように紅い眼差しがユミナを睨む。
ユミナは咄嗟に逃げようとするが、それよりも早くルーシアがその腕を掴み拘束する。
圧倒的な膂力によって強引に地面に引き倒し、《生命吸収》を発動。その生命力を吸収し、ユミナを気絶させた。
ルーシアは炎を浴びて全身に火傷を負っていたが、それらのダメージはみるみるうちに回復し、元通りの白い肌を取り戻す。
ユミナから吸収した生命力を消費することによる、超高速での自己再生。
また、耐熱性能があったのか、身に纏っているローブも燃えていない。
「さて、どうする? まだやるか?」
「クソがッ、正々堂々戦いやがれ!」
「何を言ってるんだか……これがテイマーにとっての戦い方だよ」
剣士の武器が剣であるように、魔術師の武器が杖であるように。
テイマーである僕の武器は――使い魔だ。
「さて……ルーシア。気絶させろ」
「了解」
ルーシアが高速で動き、アベルの頭を掴み、石畳の上に叩き伏せた。
爆音が響き、アベルの頭が激突した地点から同心円状に石畳に皹が入る。
僕は顔を引き攣らせた。大丈夫かこれ? 死んでない?
別にアベルが死ぬのはいいのだが、街中で殺人を、しかも無許可の使い魔が起こしたとなったら犯罪者になりかねない。
僕は恐る恐るアベルに近付いて確認したが、どうやら生きているようだ。
安心した。
――こいつには、こんな程度で死んでもらっては困るからな。
「さあて、どうするか……」
……しかし、流石にギルドの前でこんな騒ぎを起こしてしまったため、随分と目立ってしまっている。
争いの途中から、ギルド内で酒を飲んでいた他の冒険者が続々と野次馬として集まってきていた。
それだけならまだいいのだが、ギルド職員までも出張ってきているのが本当に不味い。
僕は内心で舌打ちした。
ルーシアの使い魔認定……下りるといいのだが。
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