第7章☆祐二の能力・京子の能力
「京子姉さん」
「?」
祐二が私の手を握った。
二年前。
新婚旅行に行っていなかった両親を小型機の後部座席に乗せて、兄貴が操縦席に座った。副操縦席には飛鳥が乗るはずだったけれど、体調不良で飛鳥は他の人と交替した。その小型機が、山岳地帯で墜落して、乗員は全員死亡だった。
大学進学が決まっていた私は、自宅に火をつけて自殺未遂をした。偶然通りかかった山元博士に火は消しとめられ、私は山元博士の元で働くようになった。
「だから、家に入れてくれないのか?」
祐二が聞いた。
「私の記憶を読んだの?」
「この時間軸の過去をたどった」
「もういいでしょ!」
私は祐二の手を振りほどこうとした、が、彼は決して離さなかった。
「京子姉さん、二年前に戻ろうか?」
「そんなこと、できるの?」
気がつくと、セーラー服姿で、私は自宅にいた。
「京子」
両親と兄貴が食卓で食事をとっている。
「なあに、数日間旅行して、すぐ帰ってくるよ。それまで一人で留守番できるかい?」
「待って!行くの、やめて。中止!」
三人はびっくりした顔で私に注目した。
「副操縦席に飛鳥が乗る予定だけど、体調不良でべつの人に替わって、その飛行機が墜落するのよ!だから、やめて」
「なにいってんだ?」
兄貴が鼻で笑い飛ばした。
駄目だ。なんらかの力で「あの時」に戻っているけれど、過去は変えられない。
「あんまり心配しないで」
そう言って三人は航空サービスへ出かけてしまった。
「祐二。祐二!どうしたらいいの?」
でも、祐二はここにはいない。
「祐二。せっかくあなたがしてくれたこと、私にはどうしようもない」
柱にもたれて涙を流す。この柱は火事で真っ黒にすすけているはずなのに、今はきれいだ。
また同じことを繰り返すの?
「いいえ。私は生きる。また祐二に巡りあって、あの子のそばで生きていきたい」
Realize。覚醒。私は目覚める。新しい力。
「京子!」
「えっ!」
三人が帰ってきた。
「京子が言ってたように、飛鳥がスタンバイと替わったから、縁起担いで旅行は中止にしたよ」
「本当?」
なんて嬉しいことだろう?
みんな生きるんだ。
祐二、祐二。あなたに会いたい。
私は心からそう思った。




