第48話 農民、戦いの後始末をする
「しっかし、すげえな、これはよ」
十兵衛さんが、ゴーレムの残骸を見ながら、苦笑した。
そうなのだ。
今の金色のゴーレムは、その身体部分もれっきとした鉱石などであったらしく、倒したことで後に残ったのは、輝きを伴った石だったからだ。
ひとまず、ここまでで入手することができた鉱石類を整理しておこう。
【素材アイテム:素材】魔晶石(小)
オレストの町、北西の採掘所で突然変異を起こした◆◆◆◆ゴーレムの核。魔素が凝縮されてできた魔石の一種で、大きさの割に品質はまずまず。魔道具などを動かす動力となったりもする。
【素材アイテム:素材】鉱石(大)
オレストの町、北西の採掘所で突然変異を起こした◆◆◆◆ゴーレムから採れた石。大きさはかなり立派。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(中)
オレストの町、北西の採掘所で突然変異を起こした◆◆◆◆ゴーレムから採れた石。大きさはまずまず。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(小)
オレストの町、北西の採掘所で突然変異を起こした◆◆◆◆ゴーレムから採れた石。大きさは小さめ。詳細は未鑑定。
ここまでが、さっきの金色ゴーレムから採れた石だな。
魔晶石ってのは、『魔晶系アイテム』と呼ばれるものの一種で、魔石などの仲間なのだそうだ。
へえ、これが魔石かあ。
改めて見ると、黒くて光沢がある綺麗な石だな。
前に、カミュが言ってたもんな。モンスターの中には、魔石を持っているものもいるとか何とか。
鉱物種のはぐれモンスターは、割と立派な核を持っている場合が多いらしくて、この魔晶石も品質はなかなか良いものらしい。
少なくとも、普通の魔石よりはランクが上になる、と。
そして、他の身体の一部の石も、詳細などは未鑑定だけど、傷とかもほとんどなさそうだし、何より、俺たちが掘っていた鉱石よりもずっと、ちゃんとした石っぽいのだ。
何となく、純度が高そうというか。
「これって、さっきいくら頑張っても掘れなかった石ですよね?」
「だよな。偶然とは言え、こういう形で手に入ったのは良かったよな」
十兵衛さんと苦しんだ岩壁の石。
それが、ゴーレムの破壊法のおかげで、入手できたのは儲けものだ。
実際、他の残りの石も見てみると。
【素材アイテム:素材】鉱石(中)
オレストの町、北西の採掘所で採れた石。見た目は赤黒い。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(中)
オレストの町、北西の採掘所で採れた石。見た目は赤黒い。鉱物種の手で採掘されたもの。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(小)
オレストの町、北西の採掘所で採れた石。見た目は赤黒い。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(小)
オレストの町、北西の採掘所で採れた石。見た目は白く輝いている。詳細は未鑑定。
【素材アイテム:素材】鉱石(小)
オレストの町、北西の採掘所で採れた石。見た目は青く輝いている。詳細は未鑑定。
こちらもすべて未鑑定だが、どこで採れたかとか、見た目に関しての情報はわかるようになっているようだ。
ゴーレムさんたちの手で掘られた物も区別できるし。
何となく、そっちの方が品質が良さそうな気がするな。
というか、魔晶石だけは鑑定できてるのな?
「こっちは、ヨシノさんの『鑑定眼(アイテム)』で可能だったってことですかね?」
「おそらく、そうだと思いますよ。そちらの魔晶石はアイテムという扱いになるのでしょうね」
一度誰かが『鑑定』してくれたものについては、その結果を目にした場合、それ以外の人でも、どういうアイテムなのかわかるようになっているらしい。
たぶん、『鑑定眼』を持っている人と一緒にいるのが条件だと思うけど。
いや、それにしても、けっこうな数だよな。
価値のありそうな金色ゴーレムから採れた石が一番多いっていうのは、何というか、すごいよな。
大きい鉱石が12個、中ぐらいのが20個、小さいのが45個、アイテムとして表示されない、粒や粉状のものは数えきれないぐらいだし。
普通に採掘した方は、赤黒い石がほとんで、中と小を合わせると25個。
後は白く輝いているのが小で4個、青い石が小で3個だな。
とりあえず、分け前とかは後に回すとして、全部の石をリディアさんに預かってもらうことにした。
実際、リディアさんの持っているアイテム袋って、容量が大きいのもさることながら、魔法の力で、アイテムを吸い込んでくれる機能もあるらしく、その場にあった鉱石を全部、一瞬で回収してしまったのだ。
粉とか小さい破片とかも多かったから、これはありがたいよな。
何となく、西遊記とかで出てくる、返事をすると吸い込まれる瓢箪みたいだよな。
アイテム袋も、物によっては、こういう便利機能もあるのだとか。
「それで、ケガをしたゴーレムさんたちは大丈夫なのでしょうか?」
「…………………………」
「あ、なるほど。『同じ鉱石を食べれば、再生できる』と。そういうことらしいですね」
心配そうにしていたファン君が、それを聞いてほっと安堵の表情を浮かべた。
鉱物種の場合、魔核が無事なら、多少身体が破損しても、同じ鉱石を吸収することで、欠けた部位を再生することができるのだそうだ。
食べる、という表現も、身体のどこかに触れてさえいれば、自由に吸収することができるので、それを意味しているのだとか。
言っている側から、ジェイド21さんが鉱石を吸収して、お腹の傷を治してしまった。
うわ、ほんとに一瞬だな。
『PUO』の世界って、回復魔法らしい回復魔法が存在しないんだよな?
そういう意味では、素材さえあれば、いつでも回復できるってのは便利だよな。
いいなあ、鉱物種って。
テスターの中に、鉱物種になれた人っていないのかね?
後で、『けいじばん』で聞いてみるか。
「…………………………」
「あ、『君たちのおかげで、助かった。感謝している』だそうです」
「いえ、こちらも助かりましたよ、ジェイド21さん。ゴーレムの破壊方法を教わらなかったら、けっこう危なかったですしね」
「ん、もうちょっとで、空腹限界。助かった」
頭を下げてくるジェイド21さんに、こちらからもお礼を言っておく。
リディアさんも、満腹の時は、このくらい敵じゃないらしいけど、ここ数日は色々あって、あまりごはんが食べられていなかったらしい。
でも、それでも完全に足止めをやってくれたしな。
やっぱり、この人すごいよな。
というか、そんなことを言いながら、袋から取り出した木の実みたいなものを、もうすでに食べてるし。
よっぽどお腹が空いていたんだろう。
「はは、こっちも良さめな石が沢山手に入ったしな。これなら、あの嬢ちゃんも文句は言わねぇだろ」
「……………………」
「『普通なら、鉄製工具では入手不可能だったろう』だ、そうですよ? 良かったです! これなら、ペルーラさんも満足してくれますよね!?」
「まあ、ファン君はどのみち弟子入りさせてもらえないと思うわよ?」
「いや、ヨシノ姉さん! せっかく、喜んでいるんですから、そういうこと言わないでくださいよ!」
「ふふ、ごめんごめん。でも、ファン君は私が責任をもって護るから、心配しないで」
「ん、護衛は続ける」
ふて腐れているファン君を、ヨシノさんとリディアさんがあやしているな。
ていうか、これだけ見てるとファン君モテモテだな、って感じなんだが。
見た目は、ファン君も女の子だから、どっちかと言えば、百合っぽい気もするけど。
まあ、何にせよ、これで石は手に入ったよな。
後は、ペルーラさんの工房まで戻れば、次のステップに進めるはずだ。
「それじゃあ、後はこの辺の後片付けを手伝ったら、町へと戻りましょうか」
「そうだな。セージュの坊主も身体が重そうだしな。はは、さっきの魔法ってのはそれなりにきつかったんだろ?」
「ええ、まあ、それなりには」
十兵衛さんの言葉に、正直に答える。
空腹とはちょっと違うので、たぶん、これが『枯渇酔い』に近い状態なんだろう。
まあ、我慢できないほどじゃないので、町まで魔法を使わなければ問題なさそうだけどな。
「はい! そういうことでしたら、ぼくも頑張りますよ! すぐ、後片付けを終わらせましょう!」
「うん、手分けして、さっさと終わらせちゃおう」
ファン君の元気に引っ張られる形で、俺も動き出して。
そうして、坑道の掃除を終えた後で、そこにいるゴーレムさんたちにお礼を言って、俺たちは町へと戻るのだった。
核は砕けてしまっているので、魔晶石(小)が数個になってしまっています。
ゴーレムの理想的な倒し方は、核の部分をくり抜くようにして、そのまま貫くやり方です。
そうすれば、綺麗な魔晶石が手に入ります。
もっとも、それ相応の技量を要求される方法ではありますね。




