表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第2章 テスター交流スタート
48/494

第44話 農民、鉱石を掘る

 作業を始めてから、小一時間が経過した。

 今の状況は、と言えば、結論から言うと、それなりには俺たちの前には、それっぽい数種類の石が、種別ごとに積まれている状態にはなっていた。


 ジェイドさんの分身のゴーレムさんたちから、『ここ掘っていいよ』と教えてもらった場所を、俺と十兵衛さんが、工房でペルーラさんに借りてきた鉄製のつるはしやら、のみみたいな形状の器具とハンマーやらを組み合わせる感じで、なんちゃってではあるけれども、採掘まがいのことをやってみたのだ。

 もちろん、通訳は後ろの方で頬杖突きつつしゃがんで待っているリディアさんだ。

 ファン君とヨシノさんは、その反対側の区画で、ゴーレムさんのお手伝いをしてもらっている。


 まず、俺たちの採掘に関してだが、そもそもが掘れる場所と掘れない場所がはっきりと分かれる結果になった。

 借りてきた道具で、きちんと岩壁を砕けて、石が入手できるところと、まったく鉄製の道具では歯が立たない場所だ。

 どうやら、この坑道ダンジョンは、ひとつのダンジョンの中にも様々な石の層が混在しているらしく、良い意味では種類が豊富な、悪い意味では狙った鉱石をなかなか得られないという、両面の特徴を持っているようなのだ。

 ここにいるゴーレムさんも、まだまだ、そのパターンについてはつかみかねているらしく、もっと研究も必要なのだとか。

 まあ、そっちは専門家としての課題ってやつだろう。


『硬いとこのが、良い石っぽいんだがなぁ』


 そう、十兵衛さんが言っていたが、俺も同感だ。

 なので、道具を使いつつ、今ある自分たちのスキルとかでも色々試してはみたのだが。


 まず十兵衛さんがつるはしやハンマーを使って、武技を使ってみる方法だ。

 これは、ちょっと硬い層なら効果があって、結果として、小さくて細かいながらも青い綺麗な鉱石を得ることができた。

 ただ、その代償として、十兵衛さんが借りた分の道具が壊れてしまったんだが。

 やっぱり、武技などで武器に威力を上乗せすることができても、武器本来の耐久性か? そっちの消耗までは抑えられなかったようだ。

 いや、そもそも、つるはしとかでも剣術の武技を振るえるんだな?

 そっちにも驚いたんだが。

 もっとも、十兵衛さんに言わせると、それほど驚くようなことではないそうだ。


『セージュの坊主は、棒の手とか、棒踊りって聞いたことはねぇか? 刀を持たねえ武士以外の連中……まあ、農民とか職人だな。そっちに伝えられた武術の伝承だな』


 今では、形骸化して殺陣と踊りを合わせたようなものになってしまっているらしいが、剣術の一部流派では、今も隠し技として、本来の『棒踊り』を伝えているところもあるのだそうだ。

 有名どころだと、鹿児島に伝わる流派とからしい。

 たぶん、漫画とかでもよく出てくる、示現流とか、タイ捨流とかそっちの話なんだろう、とは思った。

 十兵衛さんがたまに見せてくれる、剣術と体術を合わせたような技は、甲冑剣術としてのタイ捨流の技らしいし。

 相手が鎧兜で固めている場合、そのまま斬り合うだけではなく、隙間を突くか、相手の鎧の重さを利用して、身体の一部を壊す技の方が効果的だとか何とか。


 いや、それ、ガチの実戦剣術じゃないか、とは思った。

 ただ、『PUO』みたいなVRMMOの場合、全身鎧とかで身を護っている相手にも、こっちが軽装でも効果がありそうなので、ちょっとやってみたいな、とも思ったけどな。

 時間がある時にでも、十兵衛さんに習ってみようかな。

 そもそも、その農民向けの技、ってことは、農具でも振るえるような技もあるかも知れないしな。


 さておき。


 俺と十兵衛さんの方は、ほとんどが鉄製道具で掘れた、赤みがかった黒い石と、少し輝きを伴っている石が少々。たぶん、これ、石英か何かだと思うんだが。ガラスとかの原料の。

 いや、ゲームの世界の話だから、まったく別の特徴を持っているかも知れないけど、見た目的にはそんな感じというか。

 逆に言うと、赤黒い石が何なのかも鑑定できないから謎だしな。

 できれば、これが鉄鉱石だとありがたいよな。

 それで、クエストの条件クリアだから。


 で、十兵衛さんが道具を犠牲にして掘った青い石。

 一応、俺も弁償覚悟で、硬い層のところを掘ってみたんだけど、武技なしではまったく歯が立たなかった。

 念のため、『爪技』のスキルとかも『身体強化』と組み合わせて使ってみたんだが、当然、まったく歯ならぬ、爪が立たなかったぞ。

 てか、普通に痛い。

 実際の爪というよりも、魔法っぽい感じの爪だから大丈夫かと思ったんだけど、攻撃対象の方が硬いと俺にもダメージが返ってくるらしい。

 まあ、曲がりなりにも、鉄で鍛えて打たれた道具の方が強いってことだよな。


 その他にも、見た目綺麗だけど、この辺で一番硬いという岩壁もあった。

 わずかに金色の輝きを含む層。

 青い石が出てきたところよりも硬い層っぽいので、俺の分の道具を使って、十兵衛さんに武技を使ってもらったんだが、結局、ダメだった。

 借りていた道具も破損してしまったので、こっちは弁償だな。

 はぁ、覚悟していたつもりだったけど、得るものがないのは残念だよ。


 そして、もう一方。

 ゴーレムさんたちのお手伝いで、発掘した石とかの選別やら、運び出しやら、後の坑道の掃除なりを手伝っていたファン君とヨシノさんの分は、しっかりと労働報酬として、並べられていた。

 俺たちが掘ったのと同じ、赤黒い石。

 いや、こっちの方が、綺麗な輝きをしているから、同じ種類の鉱石としても、品質ではこっちの方が上なんだろう。


 ていうか、ゴーレムさんたちずるいのだ。


 工房では、ジェイドさんの言葉がわからなかったので、ただただ無口で力持ちな種族なのかと思っていたんだが、ドワーフに負けず劣らず、種族スキルに優れている種族だったらしいのだ、この鉱物種ってのは。

 もうすでに触れてはいたけど、まず、分体を生成する能力だ。これがあれば、ひとりのゴーレムから、何人もの労働力を生み出すことができる。

 このダンジョンにいるゴーレムさんが、全員、ジェイドさんひとりによって生み出されたと知れば、そのすごさもわかるだろう。


 そして、その『採掘』作業についても、だ。

 どうやら、ゴーレムさんは、その身体と同じ素材の岩なら、同化して、中から、そのまま岩を砕いて、採掘することができるらしいのだ。

 いや、何を言ってるかよくわからないだろ?

 俺も見ていて、訳が分からなかったし。

 黒い石でできたゴーレムさんが、岩の中に潜り込んで消えたかと思ったら、次の瞬間には、岩が壊れて、後に残ったのは、壊れて粉々になった鉱石と、同じ姿のままで中から現れたゴーレムさんの姿という、何というか、これについてはずるいとしか言いようがない方法だったぞ?

 もっとも、これにも制約があるらしく、身体と同じ素材を含んだ層以外では同様のことができないらしく、それ以外のところは他の石でできたゴーレムさんを地道に手伝ったり、俺たちと同じような手順で採掘をしているみたいだけど。

 鉱物種の『特殊採掘』ってやつなのかね?


 というか。

 これ知られたら、普通にドワーフさんたちより、ゴーレムさんのが狙われる気がするんだが? その辺はどうなってるか聞くと、俺たちは『ドワーフの弟子見習い』という扱いだから、見せてくれたのだそうだ。

 一応は、あんまり広められたくはない話ではある、と。


 とは言え、知っている人は知っている話らしいし、もしゴーレムさんの能力を悪用しようと企む人が現れたとしても、分体、本体ともに、そのまま、ただの鉱石へと戻ることもできるのだそうだ。

 なので、そういう時は、その手の対処を行なう、と。

 そのうえで、その件に関わった人物や国などについては、今後一切、ドワーフや鉱物種から協力を受けられないように手を打つ、とのこと。

 もし、そういう事態になれば、教会なども動いてくれるそうで、そうなったらただでは済まないので、一応、抑止力のようなものはあるらしい。


 もちろん、そもそもが秘密の話なので、言いふらすなってことで間違いないが。

 うん。

 また『けいじばん』で話せない情報が増えちゃったよな。


 まあ、それはそれとして。

 俺たちの前には、四人分としてはそれなりな量の鉱石が集まったわけだ。


「って、あれ? まだ、ファン君たちはお手伝いをしてるのかな?」

「採掘した後の掃除が残ってるんだとよ。まあ、あれだな。後始末もしっかりと、ってな。俺らもこの辺の片づけをやらないとな」

「あ、はい、そうですよね」


 掘ったら掘りっ放しってわけにはいかないもんな。

 でも、普通のゲームだったら、こういうのも省略できるような気もするがなあ。

 うん? もしかして、『解体』スキル同様、『採掘』スキルを使えば、その手のゲーム的な処理ができるのかも知れないぞ?

 あー、そう考えると、ちょっと便利かもな、『採掘』スキル。


 そのまま、俺と十兵衛さんが片づけを始めようとした、その時。

 坑道そのものを震わせるような衝撃と、何か硬い物同士が激しく衝突したような、物凄い轟音が坑道内に響き渡った。


「――――何だ!?」

「異常事態か!?」


 轟音で硬直したのはほんの一瞬。

 十兵衛さんが音がした方へと向かうのに気付いて。

 俺も、急いでその後を追った。

実は鉱物種もなかなかのチートだったというお話。

だから、ドワーフと組みになると、すごいことも色々できるわけです。

アルミナが周辺国から攻められないのも、鉱物種たちのおかげです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ