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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
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第343話 農民、土魔法で足掻く

「言葉を発せずに、魔法が使えたらいいのにな! ――――『岩礫(ロックバレット)』っ!」


 俺にとってもほぼお初となる『岩礫(ロックバレット)』の魔法を放ちながら、思わず、本音が口に出てしまう。


 俺たちが魔法を使う際の欠点とも言えるのが、その発動条件だ。

 『けいじばん』の魔法スレッドでも、色々な迷い人(プレイヤー)さんたちによって検証がされたみたいだけど、そこであがった問題点のひとつがこれだ。


 ――――魔法を発動させるためには、『魔法名』を口にしないといけない。


 いや、他のRPGとか、そっち系の漫画でもよくある設定だから仕方ないのかも知れないけどさ。

 それに、呪文詠唱とかがないことを考えれば、そっちが必要であるよりは、ずっとましなのかも知れないけど。


 やっぱり、この『縛り』は、戦闘時に重くのしかかってくるんだよなあ。

 特に、相手が単なるはぐれモンスターじゃなくて、理性的な相手の場合は、だ。

 俺たちが『魔法名』を発することで、次にどういう系統の魔法が来るかが、簡単に予測できてしまうという。


 これって、俺たち迷い人(プレイヤー)限定の縛りなのかね?

 少なくとも、クリシュナさんは、その手の言葉を発していないにも関わらず、『反射』や『高速移動』を成し遂げているし、ちょっと前に見せてもらったカミュによる実践でも、一切の言葉なしで、能力が発動しているしな。


 もしかすると、スキルの補助に頼っているから、かもな。

 自分の力で魔法を制御できるようになっていれば、多少はその縛りからも解放されるのかもしれない。

 もっとも、リディアさんとかでも不可視の魔法を使う時には、何らかの言葉を発しているから、必ずしもそういうわけじゃないかも知れないけどさ。


 相手の不意をつくためには、この縛りって致命的なんだよなあ。


 俺が『岩礫(ロックバレット)』を発動しようとした時には、クリシュナさんが『あ、遠距離攻撃が来る』って感じで、すでに『反射』の準備をして待ち構えているという。

 相手に次の攻撃がもろバレになってしまうのだ。


 それでも、普通の敵相手なら、そこまで致命的な隙にならないんだろうけど、これ、クリシュナさんの場合、そうも言っていられないわけで。

 こちらが別の手段で牽制を繰り出しておかないと、あっという間に詰みだ。

 せめて、向こうがもうちょっと遊んでくれればいいのに。

 何で、クリシュナさんってば、こんなにノリノリなんだろうな?

 実力差ってものを考えてほしいものだ。

 そんなことを内心で愚痴っている間にも、俺の顔ぐらいはある大きさの岩が次々とクリシュナさん目掛けて飛んでいく。


 そして――――。


 飛んで行った端から、次々と『反射』されて戻ってくるのだ。

 まあ、さっきと同様に、俺も移動しているから、逆のベクトルには俺の身体はないんだけどな――――って!?


 何でっ!?


 今度は角度をつけた岩礫が、避けた方の俺に向かって飛んでくるのが見えて。

 慌てて回避する。

 この岩の周囲にも『小精霊』が作用している。

 これなら、前の『鎧』相手の時と同じなので、今の俺でも何とか回避可能だ。


 とはいえ、せっかくの『中級』レベルの魔法があっさり無効化されたのは残念に思う。

 無効化どころか、俺に向かってくるし。


「『反射』って、そういう返しかたもできるのか……」


 さっきは向きのベクトルがひっくり返ったから、そういうものかと思ったけど、よくよく考えたら、反射現象って、それだけじゃないもんな。

 角度をつけて返せば、今みたいな感じにもできるってことか。

 まったくもって、厄介な……。


 ――――っ!? 来るっ!?


 クリシュナさんが再び動くのを察して。


 これなら、どうだ!?


「『土壁(アースウォール)』三連っ! 『地針(アースニードル)』っ!」


 『反射』について。

 カミュからも気になることを聞いていた。


『そういえば、攻撃魔法じゃない場合は『反射』って、どうなるんだ?』

『ああ。魔法の影響を返すってもんだからな。『土魔法』の罠型や設置型の魔技の場合、それほど影響させられないはずだ』

『そうなのか?』

『ふふ、そういう意味ではセージュにとっては運がいいかもな。『土魔法』は攻撃系統の術式が少ない分、クリシュナにとってもやりにくい相手かもしれないぞ?』


 発動前ならいざ知らず、発動してしまった『土魔法』は『反射』できない、と。


 だったら、クリシュナさんの予測動線が見えたところで、それを遮るように使う――――。


「――――――っ!」

「ええっ!?」


 馬鹿なっ!?

 いや、カミュが言っていたことと違うぞ!?

 ちょっと待て! クリシュナさんの『反射』って、それだけじゃないのか!?


 俺が三連で作った土壁。

 それから黄色と茶色い光がクリシュナさんの方へと飛んで行ったかと思うと、一瞬にして壁そのものが崩れてしまった。

 あの光は『小精霊』だよな?

 それをクリシュナさんは食べてしまったし。


 ――――あ! そうか!


「『魔喰い』か!」


 前にノーヴェルさんに教えてもらった、クリシュナさんの能力。

 いや、あれって、『反射』とは別物なのかよ!?

 今のは明らかに『反射』じゃなくて、『吸収』って感じの能力だったぞ?

 魔法そのものの力を吸収して、力を奪われた『土壁』が大地へと還ってしまったというか。


 同様に、俺の周囲に展開しようとした『地針(アースニードル)』も無力化されてしまった。

 一か八かで、『鎌』を振り回していなかったら、そのまま攻撃されていただろう。


 ……だめだ。

 全然、『土魔法』が役に立たない。


『どうするの、セージュ?』


 アルルちゃんの心配そうな声が内側に響く。

 仕方ない。

 こうなったら……。


「『アースバインド』っ!」


 こうなったら、昨日のコッコさんを参考にさせてもらう!

 『サンディコッコ』の土中戦術だ。

 穴を掘って、中を移動するのと同時に後ろを塞いで。


 後は――――。


「『地層妨波(ジャミング)』!」


 現在位置を知られないようにしつつ、地中を動き回るぞ!

 さすがに、クリシュナさんと言えども、地面の中までは『高速移動』できないだろうし。


 少し想定より追い詰められるのが早まったけど。

 ここからは塹壕戦で挑むとしよう。

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