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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第2章 テスター交流スタート
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第30話 農民、フレンド登録をする

「俺たちは、宿を探して、そのままログアウトする予定だけど、セージュ君はどうするんだい?」

「そうですね。まだほとんど町中を見ていませんので、それが終わってから宿屋を探そうと思います」


 クラウドさんたちは、もう鍛冶屋さんとか、仕立て屋さんとかのお店なども巡った後なのだそうだ。

 だからこそ、町はずれの畑の道の辺りで遭遇したらしい。

 でも、俺としては、せっかく報酬をもらったから、武器なり防具なりの店売り価格ってのは確認しておきたいのだ。

 それに、今日はクエストを行なうにはもう遅いかもしれないけど、サティトさんのところにも顔を出しておきたいしな。

 サティトさんのおかげで、冒険者ギルドのクエストイベントができたわけだから、そのお礼も言っておきたいし。


 そう、三人に伝えると。


「わかった。そういうことなら、ここでお別れだね」

「あ、そうだ、セージュ。せっかくだから、ここにいる全員でフレンドコードを交換しておこうぜ」


 テツロウさんがそう提案してきた。

 フレンドコードというのは、プレイヤー同士の交流を深めるためのシステムだそうだ。

 交換することで、相手のログイン状態がわかったり、同じエリアというか、同じ町の中にいたりすれば、そのフレンド同士で『遠話』機能を使うことも可能だとか。

 へえ、それも知らなかったな。

 そんな便利な機能もあったのか。


「はは、このコードは知らないやつも多いと思うぜ? 俺も、『噂ネットワーク』の項目を色々と調べていたら、ついさっき、偶然見つけただけだし。『けいじばん』とかと違って、かなり見つけにくいところにコードが埋め込まれているあたり、運営もすぐに知らせるつもりはなかったんじゃねえか?」


 何でも、テツロウさんによると、『噂ネットワーク』の項目を下へとスクロールさせていくと、一番下の方に項目があったのだそうだ。

 それを聞いて、俺も自分のステータス画面でチェックしてみる。


 あ、あったあった。

 いや、これ、わかりにくいだろ。

 しかも、『フレンドコード(じっけんちゅう)』となっている辺り、もしかすると、運営側も完全に実装させてないのかも知れないな。


「俺もさっき、テツロウ君に言われて、初めて見つけたんだ。もしかすると、ゲームがスタートした直後では項目がなかった可能性もあるな」

「ほんと、マスクデータが多いゲームよね。数値化しない方はいいことがあるって聞いたから、私も数値化していないけど、テスターの行動とかを見ながら、随時システムを更新している可能性もあるわね」


 なるほど。

 たくさんいるナビさんが迷い人(プレイヤー)のデータ収集係も務めているかもしれないってことか。

 けっこうな数のAIが使われているみたいだしな。


 まあ、そんなこんなで、三人とフレンドコードを交換する。

 これで、ゲームの中で連絡が取り合える人ができたってことだ。

 うん、何だか嬉しいな。


「ちなみに、これって、NPCもフレンドコードを持ってるのかな?」


 ちょっと、その点は気になった。

 だって『けいじばん』にはNPCも吹き込んだりできるんだろ?

 だったら、フレンド登録もできるかも知れないってことだよな。


「そうだな。確証はないが、さっきのカミュちゃんとかは持ってるんじゃないか? 何せ、あの人、色々知ってそうだし」

「そうですね、今度会ったら聞いてみましょうか」


 確かに、カミュなら、GM(エヌさん)とも繋がりがあるから、案外、普通にフレンドコードとか持ってそうだよな。


「それじゃ、セージュ君、またね」

「今度は一緒にひと狩り行こうぜ!」

「面白そうなスポットとかあったら、お互い情報を交換しましょうね」

「はい。では、また」


 宿屋さがしへと向かう三人と言葉をかわして。

 俺も町の中を散策するべく、その場を後にした。





「うーん……この時間帯でも閉まっちゃう店もあるのか」


 今の時刻はゲーム内時間で夕方に差し掛かった辺りだ。

 というか、俺の場合、実時間も一緒なので、あんまりゆっくりしているとぼちぼち日が暮れる時間なんだが。

 あの後、町の中をあちこち巡ってみたのだが、一部の店はもう閉まっていた。

 武器屋というか、鍛冶職人が出しているお店はたどり着くなり、早々に店じまいになってしまった。

 武器を売っているお店の店主は、オーギュストさんと言って、人間種の鍛冶職人さんだった。

 とりあえず、そのオーギュストさんとは挨拶をかわすことができたので、それはそれで良かったんだけど、店の閉店時間ということもあって、あんまりゆっくりと品物を見ることはできなかった。

 とりあえず、金属製の武器も防具もどれも高い、ということだけはよくわかった。


「何せ、十兵衛さんが持ってたロングソードで60,000Nだものな……」


 やっぱり、総じて良さそうな装備品は高い!

 元々、重くて装備するのが大変そうではあったが、全身鎧なんて、もっともっと額面が上がるしな。

 というか、あんなの防御面は良くても、敏捷性が下がるような気がするぞ?

 さすがに、爪技とかを使う俺とか向きの装備じゃないよなあ。


 一応、オーギュストさんに農具についても聞いてみたけど、さすがに武器屋では農具は取り扱っていないそうだ。


『たぶん、もう閉まってると思うが、ペルーラとジェイドの工房だったら、その手の注文にも対応してくれると思うぞ? うちの店にも武器や防具を卸してくれるやつらでな。職人としては、俺よりもずっと腕利きさ』


 そんなことをオーギュストさんは言っていた。

 オーギュストさんも鍛冶職人ではあるけど、どちらかと言えば、商人寄りの職人さんらしくて、武器や防具のメンテナンスはするけど、鍛冶作業するのは、より専門的な人たちに任せるのがいいそうだ。

 半分職人、半分商人ってところらしい。


 ちなみに、そのペルーラさんたちは、種族がドワーフなのだとか。

 たぶん、カミュが前に言っていたドワーフの職人さんってのがそのふたりなんだろうな、とは思った。

 まだ、こっちの世界のドワーフって会ったことがないんだが、女性限定種族で、ドワーフってことは、ひげもじゃのちっちゃい女の人が工房をやってるのかね?

 さすがに会ってみないとわからないけどさ。


 まあ、せっかくスキルがある以上は、農具を武器にしたいし、明日とかは、もうちょっと早い時間に、その工房を訪れてみよう。

 注文ってことは、店売りのものよりも高いよな?

 今の手持ちでどうこうできるかは、ちょっと心配だけどさ。


「あと、魔法屋は相変わらず、休みっと」


 そっちは、領主依頼のクエストもあったから、予想がついたけど、やっぱり、お店は閉まったままだった。

 近所に住んでいる人たちからも話を聞いたが、一か月に数日開いていればいいそうだ。

 普段は、『開かずの店』ってことで町中でも有名らしい。

 誰に聞いても、『腕はいいんだけど……』って苦笑いされる辺り、そのアリエッタさんの性格が想像できてしまうよな。

 カミュは研究馬鹿って言ってたっけな。

 魔法系のマッドな研究者ってところだろう。


 後は、道具屋の方も店じまいをしてしまっていた。

 こっちは残念ながら、キャサリンさんという人とも会えずじまいだったな。

 クエストに関係しているから、話ぐらいはしたかったんだが。

 もしかすると、他のプレイヤーがクエストをやっているから、そうなっているのかも知れないけどな。


 結局のところ、冒険者ギルドのクエストイベントが並行に処理されていたのって、どういう理屈なのかさっぱりだしな。

 少なくとも、同時に同じNPCが監督に就いたわけではなさそうだ。

 完全にかぶっている時間帯とかでも、様々なナビさんが対応していたって話は『けいじばん』でも少し触れられていたし。

 

 ということは、イベント自体は、一部並行で動いていても、同じNPCが重複することはないってことなのかもしれない。

 まあ、仮にそんなことが起これば、一緒の空間に戻った時におかしなことになるしな。

 てか、そもそもナビさんってどのくらいの数がいるんだか。

 ジェムニーさんが『二番』って言ってたから、それなりの人数はいるかも知れない。


「それにしても、仕立て屋さんも閉まってたし。職人さんの店って、夕方はもうやってないところがほとんどなのか?」


 食事処は、この時間でも普通に開いているし、冒険者ギルドや商業ギルドなどの施設もまだ受け付けているようだ。

 やっぱり、日の出日の入りに合わせて、生活スタイルが決まっているのか?

 確かに、街灯みたいなものもなさそうだし、暗くなったら、町の中とはいえ、真っ暗な感じになりそうだ。

 もしかすると、魔道具とかの灯りとかがあるのか?

 今日のところは、様子見なので、身体を慣らす意味で夕方までだが、夜とかのイベントとかもあるのだろうか?

 町の外のモンスターも夜は強くなったりするのか?


 まあ、その辺は今後の楽しみだよな。


「というか、そろそろ、宿を探さないとまずいか……」


 あ、そうだ。

 まだ、サティトさんの家に行ってないや。

 そっちにあいさつに行ってから、宿探しをするとしよう。


 そう考えて、俺はサティ婆さんの家へと向かった。

日暮れと共に町は眠りにつきます。

国によっては夜もにぎやかなところもありますが。


コトノハなどは夜行性の妖怪種が多いので、夜の方が栄えているかもしれません。

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