第304話 農民、氷コッコを倒す?
名前:フロストコッコ(猛毒状態)
年齢:◆◆
種族:雪鶏種(モンスター)
職業:
レベル:55
スキル:『体当たり』『脚力ブースト』『登攀』『持久走』『嘴術』『蹴り技』『氷魔法』『氷の吐息』『雪玉ころがし』『鳥言語』
「えっ!? 猛毒状態!? あ、『狂化』が解除されてる」
「ああ。一度、瀕死にしたコッコについては、『狂化』状態が解除されるみたいだな」
そっちについては、他からも報告があがっている、とテツロウさん。
いや、他からというか、すぐ横の光景を指差してきたので、そちらを見ると炎を纏って飛んでいるベニマルくんの足元で、ペコペコと謝るレッドコッコの姿があった。
『少しは反省したっすか?』
「コケッ!」
『じゃあ、少し息を整えたら、あっちでケイゾウさんたちの踊りのサポートをするっすよ』
「コケッ♪」
なるほど。
あっちのコッコも正気に戻ったってことか。
一応、テツロウさんの補足によると、俺たちの攻撃に倒れて瀕死になったコッコたちも、それから少し経つと、身体の傷が回復されて、また起き上がってくるのだそうだ。
たぶん、ラルフリーダさんの例の能力だろうな。
その時には、既に『狂化』が収まっているので、今のベニマルくんみたいな感じで『鳥言語』に関しては通じるようになるらしく、こちらの味方になってくれるらしい。
「ああ、レッドコッコに関しては、ベニっちが強いな。リクオウさんのとこも一羽は倒せたみたいだけど、他のところにも助けに行ってもらおうと思う」
『ラングレーさん、すごいな! 何、あの大きくなる盾! あんなアイテムあるんだ!?』
『魔法部隊にカガチさんたちも加わってくれたわ! あの人魔法得意だったのね!』
『はい、こちら補給班のユミナです。今から食料を配布していきますね』
「助かる! そろそろ空腹値がやばい人が出始めてるからな。今日、朝から『お祭り』に参加している人、隙を見て、食事してくれ! 空腹値が限界に達すると、いきなり動けなくなるからな」
『大きさを変えられる武器は、エルフの人とかも持ってたよな』
『正気に戻ったコッコたちはどうする?』
「ああ。今、ちょうどキサラさんとかカオルさんたちにも来てもらったから、そっちから緑の鉢巻きを受け取って、それを付けてもらってくれ!」
『そうね。じゃないと、紛らわしいもんね』
俺が息を整えながら、地面に落ちていた鎌部分を回収している間にも、テツロウさんは延々と他のテスターさんたちとやり取りをしているな。
俺も、『フレンド通信』を開きっぱなしで、状況については聞いているけど、やっぱり、巨大な『ブリリアントコッコ』に関しては、苦戦気味らしい。
攻撃が通らない?
十兵衛さんたちが足とかを切り裂いたりもしたらしいけど、瞬く間に回復してしまうらしい。
ただ、そっちに冒険者ギルドのギルマスでもあるラングレーさんも加わってくれて、持っている盾を大きくして、『魔法部隊』を護ってくれたりしているのだとか。
あっ!
遠目で見てもわかるな。
何だよ、あの巨大な盾。
『ブリリアントコッコ』の半分ぐらいの大きさまで巨大化しちゃったぞ?
使い手はここからだとよく見えないけど、あの盾は一目でわかるな。
「セージュ、そっちも倒せた?」
「こっちのは大人しくなったわよ、マスター」
「ぽよっ♪」
そう言いながら、後方で戦っていたルーガたちもこちらへとやってきた。
どうやら、『コッコゴースト』を無力化できたようだ。
今も、ほとんど骨の状態でふにゃあってなっている『コッコゴースト』に、ウルルちゃんたちが辺りに落ちている骨を回収しては、それを渡してあげてるし。
自爆攻撃した後は、また骨を集めるまで、ほとんど身動きが取れなくなるらしいな。
「まあ、何とか倒せたけどさ」
「って、マスター、この鳥、泡吹いてるじゃないの」
「これ、大丈夫なの、セージュ? さっきのセージュみたいになってるよ?」
そうなんだよなあ。
ルーガやビーナスも心配そうにしてるけどさ。
俺も、正直何が起こったのかよくわからないんだよな。
テツロウさんが、ログに俺の攻撃が『畜毒解放』って出たらしいんだけどさ。
いや、そもそも、そんなスキルないし。
念のため、ステータスを見たけど、やっぱり追加はされてないぞ?
まあ、『畜毒』ってことから想像しても、たぶん、さっきの毒料理試食の時のが、俺の身体にまだ残ってたってことなんだろうけど。
それを『フロストコッコ』が受けている理由が謎だ。
爪に毒が蓄積していたってことか?
それを食べちゃったから、『猛毒』状態に陥ったとか何とか。
そもそも、何で爪を食べようとしたんだろうな、こいつ。
というか、正々堂々戦っていたところで、こんな結果になってしまって、申し訳ないというか、もの凄く後味が悪いんだが。
自分が予期しない搦め手で勝ってしまったというか。
たぶん、これじゃあ、このコッコさんとは仲良くなれない気がする。
あ、そうこうしていると『フロストコッコ』の顔色が良くなったぞ?
どうやら、ラルさんの治療が作用したらしいな。
「……コケぇ……」
「大丈夫か? 何か、ごめんな?」
「コケッ!」
「あ、許してくれるのか?」
「コケッ!」
何となく悪い気がしたので、俺が謝ると、まっすぐな目をしたまま、『気にするな』って感じで『フロストコッコ』が首を横に振った。
『自分が甘かっただけだ』って、そんな感じで。
うーん。
正気に戻った後も、ストイックな感じだなあ、このコッコさん。
何となく、あっちのケイゾウさんに近い雰囲気を感じる。
――――と。
例のぽーんという音が頭の中に響いて。
『こちらのフロストコッコと【絆】が結ばれました』
『個体名はすでに存在するため、名前を付けることはできません』
おおっ!
何でかは知らないけど、俺のことを嫌いにならなかったらしい。
というか、こいつ、もう名前があるのか。
その辺は、なっちゃんとかビーナスとは違う感じだよなあ。
名前:ネーベ
年齢:◆◆
種族:雪鶏種(フロストコッコ)
職業:セージュの好敵手
レベル:55
スキル:『体当たり』『脚力ブースト』『登攀』『持久走』『嘴術』『蹴り技』『氷魔法』『氷の吐息』『雪玉ころがし』『鳥言語』
「へえ、ネーベって言うのか。良い名前だな」
「コケコケッ♪」
「お!? ログの方の表記も変化したぞ。もしかして、他のコッコたちも名前とかがあるのかも知れないな。にしても、ネーベか。確か、万年雪って意味だよな」
横から、テツロウさんがそう教えてくれた。
氷系のコッコっぽいな、って。
「ただな、あんまりゆっくりもしてられないんだ。落ち着いたんだったら、他のところの手伝いに行くのに付き合ってもらってもいいか?」
「あ、はい!」
いけないいけない。
素直に『絆』を結べたのを喜んでたけど、全然それどころじゃなかったよな。
今も、俺と話をしながらも、テツロウさんはそれとは別に指示出ししたり、他からの相談を受けたり、状況をうかがったりしてるし。
うん。
こういう時は司令塔の言うことには素直に従うのが吉だよな。
何となく、ユウと一緒の時を思い出して。
新しくコッコの仲間を増やしつつ、テツロウさんの後をついていく俺たちなのだった。




