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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
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第304話 農民、氷コッコを倒す?

名前:フロストコッコ(猛毒状態)

年齢:◆◆

種族:雪鶏種(モンスター)

職業:

レベル:55

スキル:『体当たり』『脚力ブースト』『登攀』『持久走』『嘴術』『蹴り技』『氷魔法』『氷の吐息』『雪玉ころがし』『鳥言語』



「えっ!? 猛毒状態!? あ、『狂化』が解除されてる」

「ああ。一度、瀕死にしたコッコについては、『狂化』状態が解除されるみたいだな」


 そっちについては、他からも報告があがっている、とテツロウさん。

 いや、他からというか、すぐ横の光景を指差してきたので、そちらを見ると炎を纏って飛んでいるベニマルくんの足元で、ペコペコと謝るレッドコッコの姿があった。


『少しは反省したっすか?』

「コケッ!」

『じゃあ、少し息を整えたら、あっちでケイゾウさんたちの踊りのサポートをするっすよ』

「コケッ♪」


 なるほど。

 あっちのコッコも正気に戻ったってことか。

 一応、テツロウさんの補足によると、俺たちの攻撃に倒れて瀕死になったコッコたちも、それから少し経つと、身体の傷が回復されて、また起き上がってくるのだそうだ。

 たぶん、ラルフリーダさんの例の能力だろうな。

 その時には、既に『狂化』が収まっているので、今のベニマルくんみたいな感じで『鳥言語』に関しては通じるようになるらしく、こちらの味方になってくれるらしい。


「ああ、レッドコッコに関しては、ベニっちが強いな。リクオウさんのとこも一羽は倒せたみたいだけど、他のところにも助けに行ってもらおうと思う」

『ラングレーさん、すごいな! 何、あの大きくなる盾! あんなアイテムあるんだ!?』

『魔法部隊にカガチさんたちも加わってくれたわ! あの人魔法得意だったのね!』

『はい、こちら補給班のユミナです。今から食料を配布していきますね』

「助かる! そろそろ空腹値がやばい人が出始めてるからな。今日、朝から『お祭り』に参加している人、隙を見て、食事してくれ! 空腹値が限界に達すると、いきなり動けなくなるからな」

『大きさを変えられる武器は、エルフの人とかも持ってたよな』

『正気に戻ったコッコたちはどうする?』

「ああ。今、ちょうどキサラさんとかカオルさんたちにも来てもらったから、そっちから緑の鉢巻きを受け取って、それを付けてもらってくれ!」

『そうね。じゃないと、紛らわしいもんね』


 俺が息を整えながら、地面に落ちていた鎌部分を回収している間にも、テツロウさんは延々と他のテスターさんたちとやり取りをしているな。

 俺も、『フレンド通信』を開きっぱなしで、状況については聞いているけど、やっぱり、巨大な『ブリリアントコッコ』に関しては、苦戦気味らしい。

 攻撃が通らない?

 十兵衛さんたちが足とかを切り裂いたりもしたらしいけど、瞬く間に回復してしまうらしい。

 ただ、そっちに冒険者ギルドのギルマスでもあるラングレーさんも加わってくれて、持っている盾を大きくして、『魔法部隊』を護ってくれたりしているのだとか。


 あっ!


 遠目で見てもわかるな。

 何だよ、あの巨大な盾。

 『ブリリアントコッコ』の半分ぐらいの大きさまで巨大化しちゃったぞ?

 使い手はここからだとよく見えないけど、あの盾は一目でわかるな。


「セージュ、そっちも倒せた?」

「こっちのは大人しくなったわよ、マスター」

「ぽよっ♪」


 そう言いながら、後方で戦っていたルーガたちもこちらへとやってきた。

 どうやら、『コッコゴースト』を無力化できたようだ。

 今も、ほとんど骨の状態でふにゃあってなっている『コッコゴースト』に、ウルルちゃんたちが辺りに落ちている骨を回収しては、それを渡してあげてるし。

 自爆攻撃した後は、また骨を集めるまで、ほとんど身動きが取れなくなるらしいな。


「まあ、何とか倒せたけどさ」

「って、マスター、この()、泡吹いてるじゃないの」

「これ、大丈夫なの、セージュ? さっきのセージュみたいになってるよ?」


 そうなんだよなあ。

 ルーガやビーナスも心配そうにしてるけどさ。

 俺も、正直何が起こったのかよくわからないんだよな。


 テツロウさんが、ログに俺の攻撃が『畜毒解放』って出たらしいんだけどさ。

 いや、そもそも、そんなスキルないし。

 念のため、ステータスを見たけど、やっぱり追加はされてないぞ?

 まあ、『畜毒』ってことから想像しても、たぶん、さっきの毒料理試食の時のが、俺の身体にまだ残ってたってことなんだろうけど。


 それを『フロストコッコ』が受けている理由が謎だ。

 爪に毒が蓄積していたってことか?

 それを食べちゃったから、『猛毒』状態に陥ったとか何とか。

 そもそも、何で爪を食べようとしたんだろうな、こいつ。

 というか、正々堂々戦っていたところで、こんな結果になってしまって、申し訳ないというか、もの凄く後味が悪いんだが。

 自分が予期しない搦め手で勝ってしまったというか。

 たぶん、これじゃあ、このコッコさんとは仲良くなれない気がする。


 あ、そうこうしていると『フロストコッコ』の顔色が良くなったぞ?

 どうやら、ラルさんの治療が作用したらしいな。


「……コケぇ……」

「大丈夫か? 何か、ごめんな?」

「コケッ!」

「あ、許してくれるのか?」

「コケッ!」


 何となく悪い気がしたので、俺が謝ると、まっすぐな目をしたまま、『気にするな』って感じで『フロストコッコ』が首を横に振った。

 『自分が甘かっただけだ』って、そんな感じで。

 うーん。

 正気に戻った後も、ストイックな感じだなあ、このコッコさん。

 何となく、あっちのケイゾウさんに近い雰囲気を感じる。


 ――――と。


 例のぽーんという音が頭の中に響いて。



『こちらのフロストコッコと【絆】が結ばれました』

『個体名はすでに存在するため、名前を付けることはできません』



 おおっ!

 何でかは知らないけど、俺のことを嫌いにならなかったらしい。

 というか、こいつ、もう名前があるのか。

 その辺は、なっちゃんとかビーナスとは違う感じだよなあ。



名前:ネーベ

年齢:◆◆

種族:雪鶏種(フロストコッコ)

職業:セージュの好敵手

レベル:55

スキル:『体当たり』『脚力ブースト』『登攀』『持久走』『嘴術』『蹴り技』『氷魔法』『氷の吐息』『雪玉ころがし』『鳥言語』



「へえ、ネーベって言うのか。良い名前だな」

「コケコケッ♪」

「お!? ログの方の表記も変化したぞ。もしかして、他のコッコたちも名前とかがあるのかも知れないな。にしても、ネーベか。確か、万年雪って意味だよな」


 横から、テツロウさんがそう教えてくれた。

 氷系のコッコっぽいな、って。


「ただな、あんまりゆっくりもしてられないんだ。落ち着いたんだったら、他のところの手伝いに行くのに付き合ってもらってもいいか?」

「あ、はい!」


 いけないいけない。

 素直に『絆』を結べたのを喜んでたけど、全然それどころじゃなかったよな。

 今も、俺と話をしながらも、テツロウさんはそれとは別に指示出ししたり、他からの相談を受けたり、状況をうかがったりしてるし。

 うん。

 こういう時は司令塔の言うことには素直に従うのが吉だよな。

 何となく、ユウと一緒の時を思い出して。


 新しくコッコの仲間を増やしつつ、テツロウさんの後をついていく俺たちなのだった。

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