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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
322/494

第301話 農民、外のコッコと戦う

『クエスト『土木系クエスト:コッコダンシング』が変更されました』

『新しいクエストが発生します』

『クエスト『騒乱系クエスト:コッコダンシング』が発生しました』

『こちらは、混乱を解決するクエストになります』

『注意:乱戦、護衛、不殺推奨などの複数の要素を含みます』

『区画の周辺に結界が張られました。中から外へと移動する際に制限が発生します。今、中にいる方はクエストが収束するまで、外に出ることができません』

『それぞれ、思うがままの行動を取ってください』


 例のぽーんという音が頭に響いたかと思うと、このクエストに関する注意点などが次々と流れてきた。

 色々と言ってるけど、要はこれって、単なる踊りのイベントから、戦闘込みのイベントへと変化したってことだろ?


 おかしくなってるコッコさんたちを正気に戻して。

 この場の騒乱を終わらせろ、って。


 戦うのは俺たち迷い人(プレイヤー)中心の集団と、『飛んできた』色とりどりのコッコさん軍団ということだろう。

 一応、ケイゾウさんたちは『儀式』続行中という扱いらしいので、他の鳥モンさんたちと協力して、そっちを護りつつ、やってきたコッコたちを蹴散らせばいい、と。


 そして、この『催し』を開いていた荒地の全域が『結界』で包まれたらしい。

 たぶん、それをやってるのって、ラルさんだろうな。

 これで町の方へは被害が広がらないようになるので、好きに暴れていい、って。


 そこまで考えて、周囲へと目を遣る。


「KOKEEっ!」



名前:レッドコッコ(狂化状態)

年齢:◆◆

種族:火鶏種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『体当たり』『火の玉』『登攀』『耐炎』『泳ぎ』『嘴術』『蹴り技』『火魔法』『◆◆◆◆◆◆◆』『鳥言語』



『GURUUUUっ!』



名前:コッコゴースト(狂化状態)

年齢:◆◆

種族:霊鶏種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『浮遊』『念動力』『耐物理』『叫び』『闇魔法』『◆◆◆◆◆◆◆』『鳥言語』



 俺たちのパーティの周りだけでも三羽のコッコがいるな、

 『氷』に『火』に『幽霊』。

 うん、何というか、コッコさん盛りだくさんだな。

 離れたところにも、ちょっと色違いで様々な種類がいるみたいだし。

 ただ、やっぱり、そのほとんどが『狂化』状態になっているらしく、見た目はコッコさんだけど目が可愛くない。

 ビーナスと最初に遭遇した時みたいだよ。


 というか。


「やっぱり、現れた数が多いな。こっちは三羽だけだけど、見た感じ百羽以上いるっぽいな」

「うわっ!? あちちっ!? いきなり燃えるなよなっ!?」

「マスター! こっちは『音魔法』をすり抜けちゃうわ!?」

「ぽよっ!」

『うわわっ!? 毒の息を吐いて来たわよっ!?』

『……地面に潜っちゃった』

『何で、逆さまに浮いてるのよ、こっちの真黒なコッコ!?』

『ははっ! あの、でけぇのが強そうだな!』

『これは……数もそうですが、随分と種類が多いですね……私も今まで目にしたことがない種が混じっています』

『コケッ!』


 うん。

 大混乱だな。

 辺りから聞こえてくるのは戸惑いと悲鳴のような声ばかりだ。

 うちのパーティにしたところで、同時に三羽のコッコが現れたせいで、対応が分断されてしまってるし、テツロウさんやビーナスなんかは即座に動いたみたいだけど、敵のコッコも中々の曲者だったようだ。


 テツロウさんのロングソードによる斬撃を受けながらも、突然、燃え上がる『レッドコッコ』。

 どうやら、羽根自体からも炎を発することができるようだ。

 そのまま少し距離を取ったかと思うと、燃える羽根を飛ばしてきて、辛うじて、それをテツロウさんが盾で防いでいるし。

 あれ、クレハさんが連れていたモミジに似てるか?

 何にせよ、燃えているモンスターってのは厄介だよ。


 ビーナスやルーガの前にいるのは死霊系のコッコのようだな。

 何となく、例の『鎧』と雰囲気が似てるというか、薄く透けて見えるのはコッコの骨か?

 ビーナスの『音魔法』をすり抜けたってことは、もしかして、あれ骨に憑依している霊の方が本体なのかもしれないな。


 そして、俺の目の前には目の前で、全身が蒼と白の毛を生やしたクールビューティーな感じのが興奮気味で立ちはだかっているんだが。

 『フロストコッコ』……氷のコッコか。

 大きさは一メートルぐらいで、ケイゾウさんとか、この辺の『オレストコッコ』よりも大分大きめだな。

 テツロウさんが相手をしている『レッドコッコ』やビーナスたちと戦っている『コッコゴースト』はそれよりも一回り小さいから、この氷のコッコは、コッコ種の中でも割と大きめの種なのだろう。


 ……遠くで地響きを立ててるやつは置いておくとして。

 だって、あれ、ラースボアとどっこいどっこいだし。

 あの『ブリリアントコッコ』ってのがボスか?

 いよいよ、レイドバトルの様相を呈してきたし。


 まあ、それよりもまずは目の前の敵だな。

 確かに『フロストコッコ』は大きめのコッコではあるが。

 大きいってことは的にしやすいってことでもある。

 なので、相手が吐息(ブレス)を使って息切れしているところを狙って。


「――――『石礫(ストーンバレット)』!」

「KOKEっ! っ!? KOKEEEEっ!」

「ええっ!?」


 ――――と。


 俺が放った『石礫(ストーンバレット)』の魔法に対して、まったく怯むことなく『フロストコッコ』が突っ込んできて。

 そのまま、くちばしによる連打で、(つぶて)を撃ち落してしまった。


 いや、ちょっと待て。

 魔法ってそういう対処ができるのかよ!?

 多少はノックバックのような動きもあったので、数発分は威力を殺せずに喰らっているみたいだけど、あんまりダメージがなさそうだ。

 見た目はちょっとカラフルなコッコさんなのに、想像以上に強いぞ。


「効いてない――――!?」

「いや、セージュ。あれは痛みを堪えてるだけだ。クリティカルで一発入った。たぶん、打ち砕く時の当たり判定が厳しいんだな」

「え? クリティカル? 当たり判定?」


 一瞬、横から飛んできたテツロウさんの言葉に戸惑う。

 いや、クリティカルって。

 俺の目には、普通の攻撃と比べても特に違いがわからなかったんだが。

 不思議そうにしていた俺に対して、テツロウさんが笑って。


「ログだ」

「え? ログ?」

「そうだ。設定をいじれば、常時ステータス画面を展開したままでプレイすることができる。さっきのは『フロストコッコの嘴術!』『魔法相殺に失敗!』『一発クリティカル!』『フロストコッコは30のダメージを受けた』、ってメッセージから逆算しただけだ」

「えっ!? ダメージ!?」


 あ! もしかして、数値化か!

 設定を数値化にした場合は、その手のダメージ表記も出せるってことか?


「ああ。もちろん、『チュートリアル』とかでも説明された通り、この世界の場合、数値はあくまでも目安に過ぎないらしいけどな。だが、ダメージの値はさておき、ログに表示される周辺情報は十分に有用だってことさ――――甘いっ!」

「KOKEっ!?」


 笑いながら、レッドコッコの『体当たり』を盾でいなすテツロウさん。

 そのまま、俺に対する説明を続けてくれて。


「例えば、敵モンスターの名前な。俺は『鑑定眼』は後で取るつもりで、攻撃系のスキルや魔法とかを優先したんだが、これがちょっと予想外でさ」


 何でもテツロウさんによると、『鑑定眼(モンスター)』を持っていないと、初見のモンスターの名前すら読み取ることができないそうだ。

 いや、それ、初めて知ったぞ?

 俺は最初から『鑑定眼』を持っていたから、基本、モンスターと遭遇した時は必ず使っていたので、あんまり気にしていなかったんだよな。


「だが、そのモンスターを倒せば、名前などがログに表示されるようになる。最初のうちは『◆◆』みたいな感じで伏字でログが流れるから、けっこう大変なんだよ――――『盾連打(シールドラッシュ)』!」

「KOKEEEEEっ!?」


 いなしたレッドコッコの後ろに回ったかと思うと、盾を使ってボコボコにするテツロウさん。

 そうすると、炎を受けている際の持続ダメージを盾が半減してくれるのだとか。

 不意の『火魔法』対策でもあるらしい。


「で、それはそれで便利なんだが、もっとありがたいのが、パーティを組んだりしたメンバーが『鑑定』をしてくれた場合、その情報もログに表示されるってわけさ」


 敵モンスターのスキル名もな、とテツロウさん。

 俺が『鑑定眼』でコッコたちのステータスを読む。

 それで、テツロウさんにも情報が共有されて、ログの目隠し部分が減って、情報が一気に増えて。

 結果、把握できるようになった情報を元に、テツロウさんからの俺への助言につながる、と。

 なるほどな。

 だったら、俺もログを活用しようかな、と思ったのだが。


「『ギフト』を選ぶと、能力値はあがるがログが使えなくなる。だから、このやり方を狙うなら、分担しないとな」


 残念。

 そう上手い話はないってことか。

 まあ、今はテツロウさんの助言を信じて。


「きゅい――――!」

「KOKEEEEっ!」

「そういうことなら――――『石礫(ストーンバレット)』!」


 なっちゃんの『土壁(アースウォール)』の影から、隙を見て『石礫(ストーンバレット)』を発動させる。

 それも、フロストコッコの『嘴術』で撃ち落されるけど、確かに少しずつではあるけど、くちばしに傷ができてきたな。


「さっきも、くちばしの痛みで『氷の吐息』が撃てなかった時があったぞ。こいつら、攻撃手段は多彩だけど、そこまで強くはないようだな」


 だから、とテツロウさんが笑う。


「早めに小さめのコッコたちは倒して、あのでっかいボスにとりかからないとな」

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