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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
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第277話 農民、お祭りの活気に驚く

「あれっ!? 前よりも人が増えてない?」

「うん、小っちゃい子もいるね」

「きゅい――――!」

「ああ、そういえば、『ノースリーフ』に遠出していた一行が戻って来たんだったねえ。ふふ、これで町が本来の賑わいを取り戻したって感じだねえ」

「思った以上にお子さんが多いんですね?」

「ねえねえ、マスター。あっちで小っちゃい子と混じって遊んでるのって、ウルルたちじゃないの?」

「あ、ほんとだ。てか、こうして見ると、ウルルちゃんたちも子供と変わらないよなあ」

「え……? セージュさん、ウルルさんたちは子供じゃないんですか?」

「あ、いえ、子供って言っちゃあ子供ですね」


 危ない危ない。

 年のことをあんまり言うとばれそうだよな。

 まあ、この感じだと、ハヤベルさんはウルルちゃんたちが精霊種だってことには気付いていないようだ。

 見た目は普通の人間と変わらないしなあ。

 『人化』スキルってすごいよな。


 さておき。

 コッコさんたちが踊っている舞台側まで戻って来た俺たちだったから、目の前で広がっている光景には驚いてしまった。

 何せ、朝の盛り上がりに輪をかけて、参加する人が増えていたからだ。

 特に目立つのは、子供たちの活気だな。

 今まで、この『オレストの町』って、ほとんど子供の姿を見かけなかったんだが、実のところ、かなりの数の子供がいたらしい。

 普通の人間の子だけじゃなくて、獣人っぽい子とか、子供というには少し大柄な子とか、妖精さんっぽい小っちゃい子とか、どうやら色々な種族の子たちがいるようだ。

 モンスターっぽい子もいるか?

 そういう意味では、多種多様な感じだよな。


「もしかして、この子たち全員が遠征に行ってたのか?」

『みたいっすね。あっちは確か、パウルさんとかの管轄っすから、まあ、色々と面白いものが見れたはずっすよ』

「へえ。ねえ、ベニマルくん、そのパウルさんって、ラルフリーダさんみたいな種族の人なの?」

『あー、違うっすよ。ただ、そうっすね、一目会ったら、絶対に忘れられないようなインパクトのある顔をしてるっすよ』

「インパクトのある顔?」


 何だそりゃ?

 相当、濃ゆい顔をしてるのかね?

 少なくとも、ラルさんとは違うってことはドリアードさんではないってことか。

 それはちょっと意外だな。

 てっきり、どの区域もドリアードさんが仕切ってるとばかり思っていたんだけど。

 必ずしもそうではないってことか。


 ――――と。


 俺たちが周りを見ながら驚いていると、その姿に気付いたらしく、テツロウさんたち、他のテスターさんたちがやってきた。


「おーい、セージュ、はは、楽しんでるかー!?」

「テツロウさん……って、どうしたんです?」


 何だろう?

 いつものテツロウさんもテンションは高いけど、それ以上に微妙なおかしさも感じるぞ?

 ちょっと赤ら顔になってるし……って、ちょっと待てよ?

 顔が赤いって、まさか。


「いやあ! 鳥が踊ってるのって、面白いのな。だから俺も一緒に踊ってたんだけど、足元がー、はははっ! 楽しいなっ!」

「ふむ、セージュは無事のようだな」

「そうね。やっぱり、未成年には影響がないようね」

「あの、リクオウさん、不眠猫さん、それってどういうことですか?」

「なに、当然の話なのだがな。先程、テツロウが酒を奉納しただろう? あれを他の町の者もまねしてな。その結果がこれだ」

「酒気が還元された、ってことじゃないの? 私も少しそんな感じだし。リクオウさんもよね?」

「うむ。だが、テツロウは酔い過ぎだ。奉納者への影響が強いのか、あるいは単に酒に弱いのかは知らんがな」

「まあ、まだ大学生じゃ、あんまり飲む機会も少ないでしょうしねえ」


 やっぱりか。

 リクオウさんたちの話を聞いて、ようやく状況が理解できた。

 奉納物に対して、その効能が還元されるのは、さっきの時点でもわかっていたけど、問題はどういうものを奉納すると、どういった効果が表れるかが不明だったことだ。

 一応、リクオウさんたちによると、だ。


 食べ物の場合は、空腹値の軽減が起こる。空腹値がゼロになると、次第におなかがいっぱいになってくるらしい。


 武器とか防具などの装備品の場合、身体強化系の能力向上が起こる、と。

 おそらく、バフの効果があるようだな。

 と言っても、戦闘があるわけでもないので、踊りのキレが良くなるとか、そっちの効果ぐらいしか見込めないようだけど。


 薬の場合は効能がそのまま。

 ただし、副作用などに関しては、今のところ起きていないそうだ。

 たぶん、その辺はラルさんが調整してくれているのだろう。

 いや、だったら、お酒も何とかしてくれよな?


 日用品に関しては、効果がよくわからないらしい。

 てか、誰だよ? 日用品を捧げたのは。

 とりあえず、色々試してみようの精神はけっこうだけどさ。


 そして、問題のお酒だな。

 俺たちがやってきた時、随分と盛り上がっているように感じたのは、子供たちの活気が増えただけじゃなくて、どうやら、このお酒の効果が原因だったようだ。

 催しの範囲内にいる、お酒が飲める年齢以上のテスター及びNPCが全員、飲酒した時のようなテンションになった、と。


「ステータスでも『酔い』のバッドステータスが確認できた。『ほろ酔い』『酔い』『泥酔』、程度は異なるがけっこうな被害が出ているな」

「あ、『酔い』のバッドステータスもあるんですね?」


 それは初めて知ったな。

 いや、酒場とかに行っていれば、気付けたか?

 でも、今のリクオウさんの話だと、未成年は無事ってことなのか?


「その可能性が高いな。と言っても、ここに未成年のテスターはほとんどいないのでな。少なくとも、ダークネル、ファン、ヨシノ、その三人は影響の外であることを確認した」

「セージュ君も高校生でしょ? だから、ステータスを調べてもらおうと思って」

「わかりました。あ、ハヤベルさんはどうですか? 大学生でしたよね?」

「私は二十歳になってますからね」


 どうでしょう? と小首を傾げるハヤベルさんに対して、リクオウさんが頷いて。


「いや、念のため、効能が生じた時にこの場から離れていた場合はどうなるかの確認にもなるはずだ。ふたりとも、奉納を自らの手で行なっているのだからな」


 あ、なるほど。

 奉納者チェック、ってことか。

 納得もしたので、改めて、ステータスをチェックしてみる。



名前:セージュ・ブルーフォレスト

年齢:16

種族:土の民(土竜種)

職業:農民/鍛冶師見習い/薬師見習い

レベル:41

スキル:『土の基礎魔法Lv.32』『土の初級魔法Lv.14』『農具Lv.20』『農具技Lv.3』『爪技Lv.17』『解体Lv.9』『身体強化Lv.18』『土中呼吸(加護)』『鑑定眼(植物)Lv.13』『鑑定眼(モンスター)Lv.16』『緑の手(微)Lv.6』『暗視Lv.8』『鍛冶Lv.1』『騎乗Lv.2』『調合Lv.2』『土属性成長補正』『自動翻訳』


『土の基礎魔法Lv.32』――魔技『アースバインド』

『土の初級魔法Lv.14』  魔技『岩砕き(ストーンブレイク)

             魔技『土壁(アースウォール)

             魔技『土盾(アースシールド)

             魔技『土耕(アースティル)

             魔技『石礫(ストーンバレット)



 おー。

 大分あがってきたなあ。

 まだユウたちには全然届かないけど、それでもちょっとずつ成長が見られるのは嬉しいよな。

 てか、『農具』のレベルが一気に20まで行ってるんだが。

 どんだけ、経験値が高かったんだよ、あの『鎧』。

 もしかして、あれか?

 『農具技』のスキルを覚えたのって、『農具』のレベルが20に到達したからか?

 『土魔法』もそんな感じだったし、案外スキルレベル20ってのは重要なのかもしれないよな。


 ……って、あれ?

 いつの間にか『騎乗』のスキルが生えてるぞ?

 いや、これ、本気でいつだ?

 たぶん、カールクン三号さんに乗っていた時だろうけど、全然覚えがないんだが。

 まあ、スキルとかは目安程度って言われてたせいか、そんなにいちいちチェックしてなかったんだよな。

 いや、昨日から今日にかけて、いそがしかったってのもあるけど。

 これに関しては反省だ。

 大分、スキルが増えてきて見づらくなってきている分、細かい部分も確認しておかないとだめだろうし。


 まあ、それはそれとして。

 今、大事なのはバッドステータス関係だ。

 そっちについては何もないから、どうやら、『酔い』の影響はなさそうだ。


「俺はありませんね」

「私もそうですね」

「身体強化系のものもないか?」

「はい」

「ありませんね」


 俺たちの言葉を聞いて、リクオウさんが納得したように頷く。


「ふむ、どうやら、範囲から外れると効果が及ばなくなるようだな」

「だとすると、ちょっともったいないわよねえ。この場にいたら、バフかかり放題だったのに」

「いや、別にいいですよ。マイナス効果もあるみたいですし」


 不眠猫さんの言葉に苦笑する俺。

 てか、普通にバッドステータスもあるってことは、今、持ってきた薬を大量に捧げるのに不安があるんだが。


 『薬油(ポーション)』が入った水樽を見ながら、戸惑う俺たちなのだった。

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