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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
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第259話 農民、売り上げ金を受け取る

『あ、そうっす。セージュさん、こっちが今日までの売り上げ金とその概要っす』


 そう言って、ベニマルくんが示してくれたのは畑の農作物の売り上げ金と、その詳細が書かれている木簡のようなものだった。

 いや、その売り上げ金の入った袋、けっこうな枚数の金貨が見えるのは気のせいか?

 嬉しいけど、何か怖いぞ?


 ともあれ。

 留守中も十二分に『畑の管理』をしてくれたベニマルくんたちにお礼を言う。

 アルガス芋もそうだけど、オルタン菜も収穫できたみたいだし、ルロンチッカ草やヴォークス草についても、順調にサイクルできているようだしな。


「ありがとう、ベニマルくん。そして、手伝ってくださった皆さんすべてに感謝を」

『もう、収穫分の三分の一の取り決めに関しては、報酬として分配してるっすから大丈夫っすよ。僕らにとっては、それで充分っす』

「コケッ♪」

「ピヨコ♪」


 そう言ってもらえるとありがたいよな。

 というか、売り上げ金とは別に、畑の保管場所にあるアルガス芋の量が前よりも大分増えているんだけど……これでもうすでに、分配済みなのか?

 すごいな、ラルさんの支配地での農業って。

 見た感じも触った感じも、土の状態もほとんど悪くなってないし。

 成長促進と連作障害なしのダブルコンボって恐ろしいよな。


 向こうのうちの実家だったら、その時点で価格破壊を抑えるために、容赦なく生産調整が入ってくるレベルだぞ、これ。

 豊作とかそういう次元のレベルじゃないよなあ。


 ともあれ。

 約束通り、売り上げ金に関しても、必要に応じて分配するべく、内容の方を確認していく。


「あ、これって、冒険者ギルドと商業ギルドと『大地の恵み亭』に三等分で卸したんだね?」

『ええ、そうっす。セージュさんからも細かい取り決めに関しては、決まってなかったじゃないっすか。なので、一番無難な形にしてみたっす』


 とりあえず、その三つについては、卸すことが決まってたっすから、とベニマルくん。

 うん。

 確かにそう言ったけどさ。

 それでも、それを踏まえて、判断できるってのはすごいと思うよ。

 ほんと、ベニマルくんたちの賢さには頭が下がるよな。


『あと、畑仕事を手伝ってくれた冒険者の人たちにも報酬を渡しているので、そっちの分はすでに引かれているっす。一応、販売分の方から出したっすけど、それで問題なかったっすか?』

「うん、それで大丈夫だよ。ありがとう」


 どうやら、ヴェルフェンさんの他にも何人か手伝いに来てくれた人がいたらしい。

 一応、冒険者ギルドの方でも畑系のクエストは残ったままになっていて、そっちの分担の一部が俺の管理している畑にもやってきたようだ。


 木簡に書かれた詳細によると、どうやら、卸し値に関しても、品質によって分類がなされるらしくて、最良品、良品……という感じで分かれるらしい。

 薬とかでもある品質十段階評価な。

 俺も植物の『鑑定眼』を鍛えると、農作物の品質が読み取れるようになるのかね?

 一応、職業が農民である以上は、そこは譲れない気がするので、もうちょっと頑張らないといけないな。


 それはそれとして、今回の売り上げ金もすごいな。

 一応、取り決めでは半分半分ってことになってたけど、今回、俺とかほとんど作業に関与してないからなあ。

 何だかんだで、ベニマルくんやケイゾウさんたちとの相談の上、結局、取り分を俺たちと鳥モンさんたちで、一対二で落ち着いた。

 俺がもうちょっと渡そうとすると、ベニマルくんたちが『ラル様からの命令でもあるっすから』と言って断固としてそれ以上は受け取ってくれなかったのだ。

 正直、三分の一でも貰いすぎなんだが、仕方ない。

 今後、鳥モンさんたちでも使える魔道具とかの購入予算に移しておこう。


「じゃあ、分配した売り上げ金を渡すね」

『あ、ちょっといいっすか、セージュさん』

「うん? 何?」

『仲間の一部から要望があったんすけど、お金そのものじゃなくて、これで買ったアイテムでもらうことはできないっすか?』

「別にいいけど……?」


 一瞬、どういう意味かよくわからなかったんだけど、ベニマルくんから詳しく話を聞いてみると、実は、ベニマルくんたちって、この『オレストの町』のお店で直接商品を買うことに関しては、ラルフリーダさんから許可が下りていないのだそうだ。

 そして、今は『森』の情勢が不安定で、本来の交換場所が機能しているかどうかも不明瞭、と。

 そういうわけで、お金で直接貰うのはあんまり嬉しくないらしいのだ。

 せめて、魔石とかなら別みたいだけど。


 うーん。

 そういうことならどうしようか?


「つまり、俺が代わりにアイテム買って来て、それを渡せばいいってこと?」

『そうっすね。特に、要望があがっているのは、前にセージュさんが少し飲ませてくれた水っすね』

「水……? あ! もしかして、『お腹が膨れる水』のこと?」

『そうっす! あれ、美味しいっすよね!』


 僕らの間でも飲むと元気が出るって評判っすよ、とベニマルくん。

 周りを飛んでいた他の鳥モンたちも頷いているな。

 前に、俺がちょっと疲れている鳥モンに飲ませたりしたり、あと、今日とかもやってきた冒険者さんから飲ませてもらったりしたらしい。

 それで、じわりじわりと鳥モンさんの間で、『すごい水』という評価になったのだとか。


『ラル様に聞いたら、あの水って、この町でしか手に入らないみたいなんすよ』

「まあ、ねえ」


 そりゃそうだろう。

 あれって、『大地の恵み亭』のジェムニーさんがこっそり作っているいかさまアイテムだしなあ。

 どうやって作ってるのか知らないけど。


 うん?

 待てよ?


「もしかして、ベニマルくん、『大地の恵み亭』に他のふたつのギルドとおんなじ量だけ農作物を卸したのって……」

『いえ、別に期待してるわけじゃないっすよ? でも、まあ、そういうのって、大事じゃないっすか』


 やっぱりか。

 てか、ベニマルくんもその辺は確信犯だよな?

 お店とウィンウィンの関係になっておけば、『水』の卸しも優先してくれるって算段があったってことのようだ。


『実は、あの水って、普通の町の人にはあんまり売ってくれないみたいなんすよ。セージュさんたちみたいな迷い人(プレイヤー)さんには制限がないみたいなんすけど』

「あ、そうだったんだ?」


 それは知らなかったな。

 やっぱり、その辺は運営側の事情もあるってことか。


『なので、報酬はあの『水』を中心にお願いするっす』

「うん、わかったよ。明日タイミングを見て、ジェムニーさんに頼んでみるね」


 ベニマルくんたちのお願いを快く引き受けて。

 実際、畑の管理に関しては、鳥モンさんたちの協力がなくてはならないものになってるからな。

 そういう意味では、あのいかさまアイテムが報酬として機能するなら、しっかりと量を確保しておくのは基本だよな。

 サティ婆さんとかの話だと、これからもきちんと売ってくれるみたいだしな。


 『薬油(ポーション)』の材料といい、鳥モンさんたちの報酬といい、ほんと、便利なアイテムだよなあ。


「きゅい――――♪」

「あ、そういえば、なっちゃんも好物なんだっけ」

「きゅい!」


 つくづくすごいな、あの『水』。

 そんなことを思いながら。

 畑に関する色々なことを整理していく俺たちなのだった。

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