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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第8章 家を建てよう編
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第250話 農民、オレストの町にたどり着く

「はい、構いませんよ。基本的にこの町の方針は、来るものは拒まず、ですからね」

「そう言って頂けると助かるわ」

「ですが、そうですね……他の方とお会いになりたい、ということに関しては、少しばかりお時間を頂くことになりますね。私たちの方でも現在調査中の部分がありますし、そちらはもう少し問題が解決してから、改めて、という形になりますよ?」

「そうね……元々、それに関しては、ついでのようなものだしね。もし帰るまでに機会があればで構わないわ」

「はい、わかりました」


 そう言って、笑顔で頷くのはラルフリーダさんだ。

 今、俺たちがいるのは、ラルフリーダさんの『木のおうち』の中だ。

 訪れるたびに通される、例の応接間だな。


 そして、ラルフリーダさんと話をしているのは、少しちっちゃめのフローラさんだ。

 ただ、髪の毛の色が近いせいか、それとも雰囲気のせいか、何となくではあるが、このふたりってどこか似ている気がするんだよな。

 種族的には、ラルフリーダさんは樹人種のドリアードで、フローラさんは精霊種だから、たまたまではあるのだろうけど。

 確か、フローラさんって、『木属性』の精霊さんなんだっけな?

 詳しくは教えてくれなかったし、『鑑定』も通用しないので、ウルルちゃんとかから聞いた会話から推測するしかないんだけど、そういう意味だと、属性的に近いというか、相性が良いふたりなのかも知れないな。


 結局、ルーガが目を覚ましたあの時から、小一時間で『オレストの町』に着くことができた。

 カールクン三号さんと四号さんのおかげで、ほとんどのモンスターは駆け抜けることで遭遇を避けられたからな。

 ひとつめの山を越える時に、一羽だけ大きめな鳥モンが襲ってきたけど、それはビーナスの例の炸裂弾を投げると、あっさりと麻痺状態にできたので、そのまま逃げてきたという感じだな。

 それ以外では平和そのものの道中だったし。


 むしろ、ちょっと困ったのが、『オレストの町』へ入る時だ。

 実は、鳥モンさんたちだけだったら、門を通らずにラルフリーダさんの家の区画まで移動するルートが存在するらしいんだけど、今は同行者が増えてしまっているので、その道が塞がられて、通れなくなってしまっていたのだ。

 それはビーナスから聞いた。

 行きの時は、その道を通って、町の外へ出たらしいしな。

 どうやら、ラルフリーダさんが印のようなものを与えてくれていて、それがあるかないかで、道が開いたり閉じたりする風になっているようだ。


 その辺は、『精霊の森』の結界と同じような感じらしい。


 なので、仕方なく……いや、俺にとっては、ごく当たり前に門の方から町中へと入ろうとしたんだけどさ。


『はい、セージュ君たち、ちょっと待ってねえ』


 この間、ルーガやビーナスたちを連れてきた時に引き続き、例によって、門のところで妖精のマーティンさんに止められて、詰所へと連れられてしまった。


 というかさ。

 別に前回の時とは違って、変な同行者とかはいないと思っていたんだが、そこはそこ。


 問題点その一。

 まだ町長さんからのお達しがないので、ビーナスを町の方の区画に連れて行くのはNG。

 それに関してはビーナスも怒ったんだけど、そこはそこ、門番としての任務に忠実なマーティンさんになだめられてしまった。

 ラルフリーダさんへの確認作業なしでは門を通せない、って。


 問題点その二。

 みかんのチェックが必要。

 そういえば、俺たちの中ではもうすっかり仲間なイメージだったから、うっかりしていたけど、確かにカールクン三号さんにつたでくくられた謎の巨大な果物がふわふわと浮いている光景は、知らない人にとってはかなり不気味だよなあ。

 そっちは、冒険者ギルドの方で、友好的なモンスターであることを確認しないとダメということらしい。


 問題点その三。

 同行者が子供多すぎ問題。

 一応、事情については、簡単に説明しようと思ったんだけど、当のフローラさんが町の偉い人と直接話がしたいって言い出して、それでこの問題についても、ラルフリーダさんに報告して、指示を仰いでからという風になったのだ。

 まあ、事情が事情だから、門番の人と言えども話せないこともあるってことではあるんだろうけどさ。

 うん。

 冷静に今の同行者を見てみると、だ。

 なっちゃんとみかん、それにカールクン三号さんと四号さんがモンスターで、あとはルーガとビーナス。うん、このふたりは少女っぽいけど、一応はマーティンさんも知ってはいるよな。

 問題は残りの方だ。

 見た目はふたり、小学生ぐらいのシモーヌちゃんに、それよりは大きいけど、ルーガとあんまり変わらないぐらいになってしまっているフローラさん。そして、初めて妖精を目にしたらしく、どこか興奮気味で、シモーヌちゃんの身体から出たり入ったりしているウルルちゃんとアルルちゃんのふたり。


 うん。

 どう考えても怪しさ大爆発だっての。

 セージュ君、どこからその子たち連れてきたの、ってな。


 そもそも、そうならないためにフローラさんが保護者として同行しているんだけど、結局のところ、その保護者も少女っぽい外見なわけで、こうなってしまうとどうしようもないよなあ。

 せめて、グリードさんが一緒なら良かったんだろうけど。


 グリードさんはグリードさんで、『精霊の森』に残ってやることがたくさんあるみたいだったし、その辺は仕方ないんだろうけどさ。


 まあ、そんなこんなで詰所で待たされて。

 例のごとく、グリゴレさんがやってきて対応してくれた頃には、すっかりと日が暮れてしまったしな。

 本当は、明るいうちに戻って、畑の方に顔を出すつもりがちょっと予定が狂ってしまった感じだ。


 いや、ルーガをいち早く休ませてあげたい、ってのも本音だけど。


 ようやく、ラルフリーダさんからの許可が得られたので、今度はそのまま、詰所を出て、町の外側へと行って、改めて、そっちにある裏ルートから直接、ラルフリーダさんの家までやって来たというわけだ。


 その後、歓迎してくれたラルフリーダさんやら、相変わらず、横で寝そべっているクリシュナさんやら、なぜか服装もボロボロで全身に擦り傷やらをこさえているノーヴェルさんやらに挨拶して。

 ……まあ、ノーヴェルさんの惨状については、ちょっと雰囲気的に突っ込めなかったので、どうしようかな、と思っていたら、そこでみかんがいきなり『ぽよっ!』って言いながら、抱き付いたりして。


 で、何だかんだで、なぜか今、全身でみかんのことを抱きしめては撫でているノーヴェルさんの図が出来上がってしまった。


 うん。

 下手なことを言うと揉めそうだから、とりあえず、そっちの横の方の光景は置いておくとして。

 それでようやく、冒頭の話になるわけだな。


 フローラさんの口から、この町にやって来た目的と、今後の予定についての話があって、それに対して、ラルフリーダさんが対応して。

 一部はひそひそ話のような感じで、一緒にいた俺たちにも秘密のまま、話は進んだものの、とりあえず、問題なしという判断で、ウルルちゃんたちを含めた、『精霊の森』からやってきたメンバーについては、町の区画に入っても良くなったのだ。


「みかんさんは、ちょっと待って頂けますか? ビーナスさん同様に、もう少し状況が進むまでは、私の家の周りで過ごしてください」

「ぽよっ♪」

「…………うん、良かった、みかんもそれでいいって」


 ラルフリーダさんの言葉に、機嫌よく返事をするみかんと、なぜかそれを喜んで通訳しているノーヴェルさん。

 そんな光景を見ていた、横のビーナスが俺にこっそり耳打ちする。


「ねえ、マスター。ノーヴェルさんってば、随分とみかんのこと気に入ったみたいよね?」

「ああ。俺もちょっとびっくりだよ」


 ちょっと今までのイメージと違う気がしたけどさ。

 よくよく考えると、ノーヴェルさんって、小さい子とかには優しいんだものな。

 みかんって、ステータスを信じるなら、まだ生まれてそれほど経っていないわけで、ノーヴェルさんの中では、まだまだ子供って感じなのかもな。

 それにしては、スキンシップが過ぎる気もするけど。


「…………何?」

「いえ、別に。仲がいいなあ、って思っただけですよ」


 少し顔を赤くしたノーヴェルさんに睨まれた。

 とは言え、そこまで本気でもないらしく、すぐにみかんの方へと視線は戻ってしまったけど。


「では、セージュさんとご一緒ということでよろしいですね?」

『うんうんー、ウルルたちはそんな感じだよー』

『やっぱり、『外』だと知ってる人と一緒の方がいいわ』

「ふふ、わかりました。ちなみに、セージュさんはこの後どうされますか?」


 ウルルちゃんたちの言葉に微笑みつつ、ラルフリーダさんからの問いがこちらに飛ぶ。

 うーん。

 そうだなあ。

 とりあえずは、ルーガの休息が優先かなあ。


「そうですね。ひとまず、サティ婆さんの家に帰ります。今日のところはあまり無理をしない方向で考えてます」

「ええ、その方がいいでしょうね」


 ラルフリーダさんも頷く。

 それに、だ。

 おそらく、フローラさんの目的のひとつが、サティ婆さんに会うことだろうしな。

 横にいるフローラさんが俺の方針に反対しないのも、それが理由だろうし。


 とりあえずは、帰還の報告もそこそこに。

 改めてラルフリーダさんたちにお礼を言って。

 俺たちはサティ婆さんの家へと向かうのだった。

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