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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第5章 鍛冶と畑とドワーフと精霊と、編
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第177話 農民、鳥モンたちにお願いする

「コケッ!」

『そういう話ならいいっすよ。僕らのうち、走り鳥部隊がお手伝いするっす』

「ほんと? そう言ってもらえると助かるよ」


 また畑の方へと戻って来て、今、カミュとしてきて話について、ケイゾウさんやベニマルくんにも尋ねてみた。


 精霊さんを探しに行くのを手伝ってくれないか、って。


 そうしたら、想像していた以上にすんなりといい返事をもらうことができた。


『そもそも、家の話関係っすからね。僕らも無関係じゃないっすから』

「コケッ!」

「ピヨコ!」

『ほら、ケイゾウさんも、いいぞって。ただ、ヒナコさんが気にされている通り、僕らって、今はラルさまの麾下に入ってるじゃないっすか。そっちの許可はセージュさんにもらってきて欲しいっすね』

「あ、それもそうだね。うん、わかった。そっちは今から頼んで来るよ」


 元々、ベニマルくんたち鳥モンさんって、『グリーンリーフ』の中でドリアードさんたちに仕えているって感じなのだそうだ。

 少なくとも、ベニマルくん世代の鳥は、この『森』で生まれて、ずっと『森』の側で暮らしてきたので、あんまりそこから外へと行ったことはないのだそうだ。

 なので、『森』から離れるとなると、この場合はラルフリーダさんだな。その許可が必要ってことらしい。

 うん。

 まあ、当然の話だよな。


「ベニマルくんって、『グリーンリーフ』から出たことはなかったの?」

『ないっすねえ。出なきゃいけない理由もないっすから』


 そもそも、自分たちの管轄から外に出ることもあんまりなかったっす、とベニマルくんが苦笑する。

 たまに、別区画から救援を求められたりとかして、そっちを手助けに行くことはあっても、住処だった区画から離れるってこと自体が少なかったのだとか。

 だから、今、この町までやってきていること自体が、真新しい体験ってことらしい。


「『森』から出ることが禁止されていたってわけじゃないの?」

『あー、それはないっすね。一応、僕らは違うっすけど、元々『霊峰七山』の方に生息していたって種の中には、ある時期になると、そっちと行き来する鳥もいたっす。だから、レーゼ様が許可すれば、特に問題なかったと思うっすよ?』


 僕は許可を求めたことがないんで、詳しくは知らないっすけど、とベニマルくん。

 なるほどな。

 鳥モンさんの中には、渡り鳥みたいな習性を持った種もいるってことか。

 ちなみに、ケイゾウさんとベニマルくんが教えてくれたことによると、それらの種によって、外部の情報とかが『グリーンリーフ』にもたらされていたりもするらしい。

 ふむふむ。

 だから、ラルフリーダさんも、一応は『霊峰』とかの情報も知っていたのか。

 それこそ、ドリアードさんの多くは『森』から動けないので、案外、その渡り鳥さんたちからの情報って重要だったのかもな。


 まあ、何にせよ、もう一度ラルフリーダさんの家に行く必要があるのはわかった。

 あと、畑の管理については、ケイゾウさんやベニマルくんたちが、俺たちの留守の間も引き受けてくれるってことで、落ち着いたし。


 すでに、畑でやるべきことは把握してくれたので、もう俺がいなくても、同じことはできるってことらしい。

 いや、ほんと、申し訳ない。

 すごく助かるよな。

 というか、鳥モンさんたちって優秀なんだな。

 これだけわずかな経験だけで、畑作業を覚えてしまったし。

 何より、すごいのは本能に任せて、作業中に種とか、収穫物を食べちゃったりしないことだ。

 その辺は、『一群』に所属するものとして当然のことなのだそうだ。

 いや、鳥頭ってのは、こっちの世界だと嘘だよな?

 ほんと、『一群』ってあり方がちょっとした軍隊っぽいというか、きちんと上下関係がしっかりしているのを感じるよ。

 この『一群』でも、他のみんなからのケイゾウさんへの敬意みたいなものはしっかりと感じるしな。

 ベニマルくんの口調は少し軽めだけど、そっちも元々は『千年樹(レーゼ)』さんからの指示なのだそうだ。

 その辺は、何となく、王族に仕える道化っぽいイメージがないでもないな。


 ただ、俺がいない間は新しい作物を植えたりするのはやめておく、って。

 今作っている、アルガス芋、オルタン菜、ルロンチッカ草、ヴォークス草を引き続き、栽培していくってことで決まった。


『あ、そういえば、さっき白い女の人が芋を買いに来たっすよ。なので、言われた通り、そっちの販売もしておいたっす』


 そう言って、ベニマルくんが受け取った代金を渡してくれた。

 あ、リディアさん、もう来てたのか。

 たぶん、俺が町の外に行っている間だよな。

 ということは、ヨシノさんたちも無事、鍛冶修行については、一区切りを付けられたのかもな。

 いやいや、あの人の場合、隙を見て、抜け出しても驚かないけど。


 あ、そうだ。


「ベニマルくんたちって、報酬が普通のお金とかでも貰ったら嬉しいのかな?」

『あ、もちろんっすよ。そのお金、森の中でも流通してるんすよ? もちろん、物々交換でもいいっすから、必要ない時は使わないっすけどね』

「へえ、そうなんだ?」


 えっ?

 森の中でも、共通貨幣が流通してるのか?

 いや、それについては少し驚きなんだが。

 うーん、その辺がナビさんたちが言っている、『ちょっといじっている』ってことなのかな?

 というか、このお金、ドワーフさんたちとの交流がないと流通することなんてありえないと思うんだけど、その辺はどうなってるんだろうな?


 いや、野生のモンスターを倒しても、懐から貨幣の入った袋が出てきたりしたらどうしよう。

 いわゆる、魔素とかをお金代わりに使うとかならまだわかるんだけどな。

 他のゲームとかでも、魔族の貨幣とかで悪魔が喜んだりしている場合とかもあるし。


『あ、そっちもあるっすよ。魔石とか魔晶のたぐいも、きちんとお金として使えるんすよ。森の中でもたまに魔石とか手に入るので、そっちは僕も持ってたりするっす』


 ガーネットクロウとかは、住処にそっちを溜めこんでるっす、とベニマルくんが笑う。

 なるほどなあ。

 ちなみに、魔石の場合、特殊な方法で柔らかくしたりすると、そのまま食べたりもできるようになるのだそうだ。

 いや、それはちょっと驚きだけど。


「魔石が食べられるの?」

『そうっす。けっこう、美味いっすよ? 食べた直後は力が湧き出てくる感じっす』

「コケッ!」

『あっ! そうっすね、すんません、ケイゾウさん。はは、魔石ってあんまり食べ過ぎると身体にも負担になるんすよ。だから、美味いとか言っちゃうとまずいんすよね』


 へえ、ドーピングアイテムみたいなもんか?

 たぶん、そうやって魔石を食べると能力値が上昇したりするんだろうな。

 もっとも、ベニマルくんによれば、普通の魔石をそのまま食べても、消化できないので苦しむだけだからやめた方がいいみたいだけど。


 どうやら、魔石を食べるためにも技術が必要になるようだ。

 というか、だ。


「魔石の加工とかも『森』ではできるの?」

『もちろんっすよ。ノースリーフの方には、そっちが得意な種もいるっす。僕らは南の区画に住んでるんで、あんまり行く機会はないっすけどね』


 聞けば聞くほど、普通の『森』のイメージとは違って来るよな、この『グリーンリーフ』って。

 てっきり、野生のモンスターとかがいっぱい住んでいるような、自然あふれる場所だと思っていたんだが、実情は大分違うのか?

 そもそも、俺、『迷いの森』から奥へは行ったことがないから、詳しくはわからないんだよなあ。


 まあ、鳥モンが魔法とか使って、畑作業を手伝ってくれるぐらいだしなあ。

 そう考えると、器用なモンスターってのも少なくないんだろう。

 いや、モンスターさんと仲良くなると、こういうことも色々と知ることができて、けっこう楽しいよな。


 そんなことを考えながら。

 ケイゾウさんやベニマルくんたちにお礼を言って。

 俺たちは、またラルフリーダさんの家へと向かうのだった。

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