第152話 農民、改めてステータスを確認する
「コケッ!」
『報酬っすか? だったら、今、ケイゾウさんが言った通り、この畑で採れたものの一部を分けてもらえたら、それでいいっすよ?』
「あ? それでいいの?」
「――――コケッ!」
『そうっすね。僕たちもそれぞれ好みがあるんすけど、見た感じ、セージュさんたちが育ててるものって、何かしら食べられそうなものが混じってるっす』
だから大丈夫っすよ、とベニマルくん。
あー、それは助かるかな。
そもそも、今もアルガス芋とかがいっぱい採れたのって、ベニマルくんたちの協力があってのことだしな。
なので、今も収穫できた分の一部をそのまま報酬として、鳥モンさんたちへと譲ると、早速とばかりにそれらを食べ始めたし。
ちなみに、ここまでの仕事で収穫できたのはアルガス芋がたくさんと、オルタン菜の苗。まあ、苗というには大きすぎるぐらいには育ってるけどな。
ちっちゃな球状の葉っぱみたいなものも付き始めてるし。
ただ、ベニマルくんがラルフリーダさんから聞いた情報によると、オルタン菜って、最初に育てる時には、ある程度密集させておかないとダメらしいのだ。
それによって、お互いの芽が魔素などをやり取りして成長するのだとか。
逆に、苗が大きくなった後はそれぞれの苗を離すように植え替えていかないと、今度はお互いの成長を邪魔してしまうらしい。
だから、だからクエストがアルガス芋よりも一日長くなってるんだな?
この植え替えの分が手間なので、畑のクエストとしても難しいってことらしいし。
普通だったら、植え替えの時、特に苗を移す時に、その周辺に集まっている虫モンと戦う必要があるのだとか。
虫モンにも大人気なオルタン菜の苗、ってわけで。
ちなみに、こっちの植え替えの作業も俺を中心に、鳥モンさんたちにも手伝ってもらって済ませてある。
別の区画にも、昨日追加で買ってきたオルタン菜の種を植えてみたし。
これで、そろそろ冒険者ギルドで管理している種が大分減って来たので、今後は種の方も集められたら、そちらも納めてほしいって、ラートゲルタさんからも言われたしな。
種が収穫できるのは明日だから、ここからはわざわざ購入しなくても、サイクルできそうだけどな。
あ、そうそう。
ルーガとなっちゃんは収穫した作物を仕分けして、アイテム袋へとしまっていく作業をお願いした。
あんまり畑畑した作業だと、せっかく着てる服がまた泥だらけになっちゃうからなあ。
それだと、キャサリンさんに怒られるし。
「どこの区画でも、芋はしっかり育ったけど、多少は収穫量に差があったなあ」
植え方によって、収穫量への変化も見られたので、それもチェックしておく。
これを何度か繰り返して、情報を集めて行く感じだな。
何だかんだで、アルガス芋の場合、『丸ごと植え』した方がしっかりと育つみたいなので、今日の植え付けの分はメインをそれにして、一部の区画をチェック用に残して、引き続き色々と試していくって感じにした。
今後は肥料とかも作って、そっちも使って試験的に植え付けていく予定だし。
あ、そうだ。
結局、ルロンチッカ草との混植は、アルガス芋にとってはあんまり芳しくなかったんだよな。小ぶりな毒芋ができてしまったのだ。
ただ、それらの残念な結果だけじゃなくて、芋と一緒に育てたルロンチッカ草は、単体で植え付けてみたそれらよりもずっと大きく育ってくれたので、これはこれでメリットがあるってわかったけどな。
というか、なっちゃんがそれを見て大喜びだし。
たぶん、芋の栄養がルロンチッカ草に行ってしまって、一方の毒素の方が芋へと移ってしまっているんだろうな。
これ、ルロンチッカ草を大きく成長させるのにはいい栽培法だな。
その際にできた、ちょっと紫がかった毒芋はしっかりと分けておかないといけないので、その点は要注意だけど。
そして、カミュからもらってきたヴォークス草の方も、ゆっくりではあるけどしっかりと育ってくれているようだ。
ただ、昨日植えたのが少し遅かったのか、もうちょっと育てた方がいいかも、というベニマルくんからの助言もあった。
どうやら、このヴォークス草にも食べごろのタイミングがあるらしい。
それを聞いて、へえ、とは思った。
さすがに牧草の味とかまでは、俺もわからないしなあ。
まあ、そんな感じで畑の方は順調に進展しているな。
良かった良かった。
そこまで考えて、ちょっと余裕ができてきたので、ふと思い出したように、ステータスの方を見てみると。
「あっ!? いつの間にか『土魔法』の『初級』が増えてるな!?」
色々と忙しくて、細かい自分のステータスを確認していなかったんだよな。
もし畑で失敗すると、ラルフリーダさんの反応が怖かったので、そのために色々と真剣だったし。
昨日は途中で倒れてしまったし、向こうからだとステータス画面って確認できないんだよな。
だから、忘れてたってのはある。
で、改めて一覧をチェックしてみたところ、スキルの項目に大きな変化があった。
名前:セージュ・ブルーフォレスト
年齢:16
種族:地の民(土竜種)
職業:農民
レベル:22
スキル:『土の基礎魔法Lv.24』『土の初級魔法Lv.2』『農具Lv.6』『爪技Lv.14』『解体Lv.9』『身体強化Lv.13』『土中呼吸(加護)』『鑑定眼(植物)Lv.9』『鑑定眼(モンスター)Lv.10』『緑の手(微)Lv.4』『暗視Lv.4』『土属性成長補正』『自動翻訳』
『土の基礎魔法Lv.24』――魔技『アースバインド』
『土の初級魔法Lv.2』 魔技『岩砕き』
魔技『土壁』
魔技『土盾』
魔技『土耕』
これが今の俺のステータスだな。
やっぱり、目立つのは『土の初級魔法』が追加されているのと、昨日から今日にかけて、魔技が三つ増えたことだな。
鳥モンの襲撃では、そこまで倒していなかったにも関わらず、身体のレベルについても、けっこうな上がり幅があったのには驚いた。
もしかすると、相手を戦闘不能に追い込むだけでも経験値って多少は入るのかね?
でも、それだったら、ビーナスと戦った時にももう少しレベルがあがってるか?
うーん。
ちょっとはっきりしたことはわからないな。
案外、今回の鳥モンを倒した分だけでも、それなりの経験になったのかも知れないな。
ちなみに、ルーガは身体のレベルが26に、なっちゃんもレベル20まで上がったようだ。
やっぱり、それなりに昨日の戦いは大変だったってことだろうな。
下手をすれば、『狂化』モンスターと戦った時よりもレベルアップしてるぞ?
そういえば、ビーナスの今のレベルってどうなってるんだろ?
ちょっとそっちも気になるよな。
ただ、さっき土魔法の微調整ができるようになったのも、案外、そこで初級を覚えたからかもしれないな。
もちろん、それとはまったく関係ないのかもしれないけど、今のところは、初級を覚えたからと言っても、それによって新しい魔法の幅が広がったって感じは……あ! 待てよ?
これ、ステータスの表記だとわかりにくいけど、もしかして、今日覚えた『土耕』が初級の魔技ってことか?
実はそうなのかも知れないよな。
こういう時に限って、例のぽーんがないから、ほんと、スキルとかレベルに関する成長については気付きにくいんだけどさ。
ともあれ。
ゲームのステータスとはいえ、自分が成長している実感があるのは嬉しい。
もっと頑張ろうって気になるものな。
細かい数値とかはわからなくても、これはこれでやりがいがあるのだ。
そんなこんなで。
ちょっとやる気が出たところで、俺は残りの畑仕事の続きへと取りかかるのだった。




