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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第4章 畑始めました編
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第137話 農民、畑の人員を確保する?

「セージュさんたちには、ご迷惑をかけてしまいましたね。一応、『森の護り』への適応基準の審査も含めておりましたので、お詫びというわけでもありませんが、何かお困りのことはありますか?」

「そうですね……」


 ラルフリーダさんから、簡単な謝罪を受けた後、今回の事件もイレギュラーなクエストとして扱ってくれることになったらしい。

 まあ、ぶっちゃけた話、俺たちがいなくても、特に問題なかったのは、さっきまでの展開を見ればよくわかるので、その辺はクエスト達成というよりも、妙なことに巻き込んでしまってすみません的なお詫びという形になるようだ。


 一応、それとは別に、さっきまでの戦闘対応で、俺とルーガ、ビーナスとなっちゃんのパーティーについては、『森』の許可の第二段階をクリアしたことにしてくれるそうだ。

 つまり、この四人だったら、『迷いの森』だったか?

 その区画までは踏み込んでも問題ないっていうお墨付きを頂いたことになるわけだ。

 もっとも、ノーヴェルさんから言わせると、中に住んでいるモンスターのうち、好戦的なモンスターから襲われることは普通にあるらしいので、許可と言っても、侵入した時に、その区画の管理者たちと揉めなくなるってだけみたいだけどな。

 普通の、モンスターとの遭遇などに関しては、自分たちで何とかしろ、って感じらしいし。


 その辺は、割とスパルタな環境らしい。

 ルーガとビーナスたちがいた『山』とおんなじ感じで、弱肉強食ってところか。

 だからこそ、その環境を潜り抜けた人たちは、ノーヴェルさんでもクリシュナさんでも、かなりの強さを誇っているみたいだけどな。


 それにしても、困りごとかあ……。

 今、近々で困っていることと言ったら、あれか。

 ラルフリーダさんとも無関係じゃない、『畑の管理』のクエストについてだな。


「困っていると言いますか、今、俺たち畑作業をやっていますけど、あれに関してですね。俺とルーガとなっちゃんだけですと、ちょっと区画が広めでしたので、もう少し人手を増やそうと思っていたんです」


 一応、畑作業というか、畑クエストに興味がありそうな迷い人(プレイヤー)の面々に相談する予定だったんだけどな。

 テツロウさんとかも、畑のことを報告した時、自分も言いだしっぺだからって、畑のクエストを手伝ってくれる、って言ってたし。

 知り合いの人たちが暇な時にでも頼もうと思っていたのだ。

 そう、ラルフリーダさんに伝える。


「ああ、そうでしたか。でしたら、ちょうど良かったですね――――チドリー、貴方たち『群』の一部を、この町の畑へと派遣することはできますね?」

「可能。但し、指令、内容、次第」

「いえ、貴方たちでしたら簡単なお仕事ですよ。畑の中で野菜を育てておりますので、そちらの障害になる存在を取り除いて頂くだけです。環境群としては、その子たちも悪い子ではありませんが、畑の場合は、野菜を収穫することが目的となりますので、野菜を食べて、その子たちがすくすくと育っては困るのです」


 そう言って、ラルフリーダさんが、畑クエストについて、チドリーさんたちへと説明する。

 駆除しても構わないし、別の住みかへと案内しても構わない、と。

 要するに、畑の中にいる虫モンとか、野菜目当てでやってくるかもしれないモンスターの駆除について、ここにいる『群』の鳥モンスターたちにお願いしようってことらしい。

 いや、ちょっと話の展開にびっくりだけど、ちょっと考えればありがたい話だ。

 今の畑のクエストって、畑を興したり、種を植えたり、水を撒いたりっていうお仕事以外は、ほとんどがモンスター対策みたいだしな。

 実際、この町の実情をちょっとだけラルフリーダさんに聞いた感じだと、この『領域』内の土地の状態は、ラルフリーダさんが夜の間に管理もしているらしくて、土の中の栄養状態とかが偏ったりすることがあんまりないそうだ。


 今朝、俺たちが夜明け前に目にした、『木のおうち』が光っている光景。

 それこそが、ラルフリーダさんが環境を整えている作業の証だったそうだ。

 なので、クリシュナさんも、その邪魔をしないように、俺たちの訪問を退けた、ってわけだな。

 改めて、ラルフリーダさんがすごい人だったことを実感するよ。


「了解。我々、作業、適した、分隊、派遣」

「ふふ、ありがとうございます。セージュさんもそれでよろしいですね?」

「あ、はい。助かります」


 ラルフリーダさんの問いに、素直に感謝する。

 どうやら、畑の作業とかが得意な鳥モンたちを派遣してもらえるようになったらしいな。

 得意、というか、ラルフリーダさんが補足してくれたところによると、町の中で目にしても問題なさそうな鳥モンスターたち、ってことらしいけど。

 うん?

 ちょっと会ってみないとわからないけど、あんまりモンスターモンスターしてない種ってことなのか?

 少なくとも、好戦的ではない、どちらかと言えば、穏やかな感じの子たちを派遣してくれるってことのようだ。


「今回、戦闘、不在。あまり、攻撃、得意、ない、連中」

「あ、そうなんですね」

「ええ。リーダーの指揮下にある子たちの中には、そういう子も多いですから。その子たちでしたら、町の中で働いていても安心ですしね」


 町長としても許可できます、とラルフリーダさんが微笑む。

 どうやら、人懐っこい鳥モンもいるようだ。

 人、というか、ラルフリーダさんたちみたいな植物懐っこい感じらしいけど。

 まあ、何にせよ、人手が増えるのはありがたいな。

 さすがに、毎日毎日、他のテスターさんを当てにするわけにもいかないしなあ。


「後、そうですね。チドリー、それとは別に、私の方からも追加でお願いを聞いてもらっても良いですか? 現状、オレストの町に対して、住人の出入り制限がかけられていますが、そちらを解除する方向で動きたいのですよ」


 あ、そう言えば、そういう話だったよな。

 教会で話を聞いた後、俺たちもまだ冒険者ギルドに寄っていなかったから、詳しい内容とかは聞いていなかったんだけど、さすがはラルフリーダさんというか、もうすでにその手のことも把握していたらしい。

 というか、許可したのも町長であるラルフリーダさんだろうけど。


 ただ、そっちに関しては、あくまでも短期的な対処の予定だったらしいな。

 可能な限り、その制限については早めに解除したいというのがラルフリーダさんの考えらしい。


「我々、何、すれば、いい?」

「オレストの町の周辺警戒です。正確には『サウスリーフ』の範囲内を、ですね。貴方たちの眼で上空から状況を監視してもらい、それによる『狂化』モンスターの発見、そしてそれを即座に報告、そのまま、有志による対処。そういう流れを構築しておきたいのです――――できますね?」

「問題、ない。但し、対処、より、報告、優先?」

「ええ、そうですね。貴方たちが直接対処するのは不要です。あくまでも担って頂きたいのは町の『眼』としての機能ですから。対処につきましては『自警団』と冒険者ギルドの方へ任せます。今は、町……正確には『森』ですが、そちらがこの状況ですので、早々に冒険者ギルドのマスターにも、帰還のお願いをする予定です」

「…………お嬢様の意見に賛成。今は悠長に子供連れてる場合じゃない」


 あー、そっか。

 今って、この町の冒険者ギルドのマスターが不在なんだものな。

 確か、この町の子供たちを連れて隣町まで行ってるんだっけ?

 まあ、ノーヴェルさんが言う通り、今の状況でのんきにやるようなことじゃないよな。


「…………どちらかと言えば、戦力的な問題。ラングレーより、『自警団』の人員がそっちに割かれてることが問題。おかげでわたしもクリシュナも動きがとれない」


 なるほどな。

 交代要員がいないので、ずっとラルフリーダさんの元を離れられないってのも問題なんだな。

 というか、ノーヴェルさんたちもずっと護衛だけしているわけじゃないんだな?

 そもそも、ラルフリーダさんの能力を目の当たりにした感じだと、この人、護衛とかいるのか? って思わなくもないし。


「ふふ、セージュさん。それは買い被りですよ? 私もできることとできないことがあります。自分の力の弱点も身に染みて理解していますから、少しでも、その穴を埋めるのは当然のことですよ?」

「そうなんですか?」


 さっきの圧倒的な力を見る限り、そうは思えないんだが。

 ただ、『穴』か。

 そう言えば、カミュからも忠告されたっけな。

 どんなに完璧に見える能力でも、必ず付け入る隙はあるって。

 そういう意味では、ラルフリーダさんも慎重ではあるってことか。


「ええ。私たちの強みは領域(テリトリー)を持っている、ということですが、同時にそれは弱みにもなるのですよ。ふふ……余計なお話でしたね。それよりも、チドリー、私の命に疑問点はありますか? 特になければ、直ちに動いてください」

「拝命。但し、一点、確認。我々、住処、移る?」

「そうですね……貴方の直轄の一群は、私の家の側のこの森で、それ以外の部隊については、適当な場所を用意するとしましょう……あ、そうですね。セージュさん、そちらに関して、ひとつお願いしてもよろしいでしょうか?」

「はい、何ですか?」

「畑のお仕事に従事する子たちのために、今、お貸ししている土地の北側に、住まいを作って頂いてもよろしいですか? チドリー、畑に派遣するのは、どの辺りの子たちですか?」

「オレスト、コッコ、中心、一群。彼等、複数、区画、跨っている、ので、統制、効きにくい」

「なるほど、コッコ種ですか。でしたら、普通の人間種の家でも問題ありませんね?」

「…………問題ない、お嬢様。ヨーツンたちとも一緒に住んでいたはず」

「わかりました。そういうわけですので、セージュさん。派遣される子たちのために、家を一軒用意してあげてください。町の中にある、他の家のようなもので構いませんので」

「えっ!? 家……ですか?」


 鳥モンのために、家を用意するのか?

 何だか、予想外な話になってきているんだが。

 そう、俺が思っていると、例のごとく、頭の中にぽーんという音が響いた。



『クエスト【土木系クエスト:鳥モンスターの家作り】が発生しました』



 おーい、ちょっと待て。

 さすがに家作りなんてやったことないぞ?

 俺がちょっと困っていると、ラルフリーダさんも少し困った表情で。


「ですが、コッコ種が相手となりますと、私が家を用意するよりも、セージュさんが家を用意した方が、後々困りませんよ? どうしてもということでしたら、私がそちらの方も手配しますが」

「…………(けだもの)、これはお嬢様からの配慮。コッコは懐いたものにしか、心を許さない。そのためには家を建てるのは重要」

「そうなんですか?」


 要するに、このクエストって、その鳥モンと仲良くなるためには必須、ってことか?

 だったらやるしかないよな。

 さすがにこれは『けいじばん』での相談案件だろうけどなあ。


 一応、ラルフリーダさんにクエストに関する情報制限については確認して。

 何とか『けいじばん』で相談する分には問題ないということで、少しだけホッとする俺なのだった。

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