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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第4章 畑始めました編
141/494

第131話 農民、鳥モンスター群と戦う

名前:ハミングバード(統制下状態)

年齢:5

種族:風鳥種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『◆◆◆』『◆◆』『◆◆』『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆◆◆◆』



名前:ガーネットクロウ(統制下状態)

年齢:6

種族:火鴉種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆』『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆◆』『◆◆◆◆◆◆』



名前:バルバル鳥(統制下状態)

年齢:4

種族:土鳥種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『土魔法』『◆◆』『◆◆』『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆◆◆』



名前:ウェットウッディー(統制下状態)

年齢:7

種族:啄水鳥種(モンスター)

職業:

レベル:◆◆

スキル:『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆』『◆◆◆』『◆◆』『◆◆◆◆』『◆◆◆◆◆』



「うわっ!? 何か、いっぱいいるな!?」

「落ち着いて、マスター! まだ、いっぺんには来ないみたいだから、近づいてくるのをどんどんやっつけるのよ!」

「わかった!」


 俺にとっては、初めての乱戦という感じだな、これ。

 とにかく、鳥モンスターの種類が多いのだ。

 とりあえず、俺の『鑑定眼』でチェックする限りだと、大きめのモンスターが今調べた、四種類の鳥モンスターで、それ以外の、小鳥とかに関しては、ルーガの矢で一撃で落とすことができたりしているようだ。

 だから、そっちは省く。

 いや、正確に言うと、数が多くて、『鑑定眼』が小さい鳥に関しては、作用しにくいのだ。

 飛んでいるスピードもけっこう速いので、能力をゆっくり使っている暇がないというか。


 少なくとも、小鳥たちに関しては、それほど脅威ではなさそうだ。

 どうやら、危険なやつとそうでないやつが混ざっているようで、近づいてきたところに、俺の振り回していた鎌がヒットして、そのまま、倒してしまったのもいるし。


 だから、警戒すべきは、少し離れたところで様子を見たり、たまに一撃のために近づいて、魔法を放って、離脱していくやつらだな。

 

 たぶん、ステータスから推測するに、ハミングバードが風属性、ガーネットクロウが火属性、バルバル鳥が土属性で、ウェットウッディーが水属性の鳥なのだろう。

 というか、まともな属性魔法を使って来るモンスターと遭遇するのって、これが初めてのような気がする。

 一応、ビーナスの場合、ほとんど『音魔法』ばっかりで、『土魔法』に関しては全然使ってこなかったしな。

 今も、上空から、遠距離で魔法が飛んでくるのを、ビーナスの指示に合わせて、俺となっちゃんで防いでいる状態だ。


 てか、危なかった。

 畑仕事で疲れていた分を、少しでも『大地の恵み亭』の新メニューで回復させていなかったら、あっさり枯渇してたぞ?

 一応、ビーナスの苔にも、多少は魔素回復効果があるらしいので、そっちを噛みながら、騙し騙しで戦っているようなもんだし。


「ビーナス! さっきの苔の実みたいなのはいつ使うんだ!?」

「まだね。おそらく、まだ様子見なんじゃない? 何だか嫌な予感がするもの」


 ビーナスの野生の勘はそれなりに頼りになるからな。

 俺としては、それを信じるまでだ。


 ただ、さっき鑑定をして気になったことがひとつ。

 ほとんどの鳥モンスターに、特殊効果のようなものが出ていたのだ。

 いや、バッドステータスか?

 そもそも、『統制下状態』ってのは何だよ?

 そんなステータス情報、他のゲームでも聞いたことがないぞ?


「ルーガ! ビーナス! 『統制下状態』って聞いたことあるか!?」

「ないわよ! あっ! マスター、そっちの左っ!」

「わたしもないよ!」


 ビーナスの返事を聞きながら、そのまま、左側から迫って来たバルバル鳥――――茶色い羽根をしたコンドルみたいなやつに、鎌のスイングで一撃する。


「GYUAっ――!?」

「うわっ!? 土壁っ!?」


 いや、一撃があたるタイミングで、バルバル鳥が『土魔法』を使ったらしい。

 一応、鎌でそのまま貫通させることはできたけど、軌道がずれた!

 傷こそ与えたものの、そのまま上空へと逃げられてしまった。


「てか、何なんだよ!? 随分と、敵のレベルがあがってないか!?」


 少なくとも、この町の周囲に出てくるモンスターの強さじゃないぞ!?

 そもそも、複数の鳥モンスターが連携を組んで攻撃してくるなんて、『けいじばん』でも聞いたことがないっての!


 そう思っている間にも、上空から火の玉が降って来たので、そっちは『土魔法』を使って、盾を作って防ぐ。

 いや、これ、なっちゃんが使っているのを真似たんだけど、なかなか使い勝手がいいぞ。

 何だかんだで、俺の『土魔法』のレベルもあがっているようで、『アースバインド』を応用させて使えるようになってきたのだ。

 その結果、いつの間にか追加で魔技を習得していた。

 『土盾(アースシールド)』と『土壁(アースウォール)』の二種類な。


「きゅい――――!」


 そういえば、なっちゃんのステータスからは、『土魔法』のレベルに関しては読み取れなかったんだけど、どうやら、俺よりも『土魔法』のレベルは高いようだ。

 いや、高いという確信はないけど、少なくとも、使い方に関しては、俺よりもずっと慣れているというか。

 そもそも、なっちゃんって、人間の手を土で生み出せるんだものな。

 それに比べれば、盾とか壁とかの方が簡単かもしれないし。


「ルーガ! 矢の方は残ってるか!?」

「まだ、あと二十本ぐらい! それで打ち止めになったら、石を飛ばすよ!」


 叫びながら、ルーガがつがえていた矢を射る。

 上空を飛んでいたガーネットクロウ――――紅い羽根をしたでっかいカラスのうち、一羽に直撃して、そのまま、モンスターが落ちていくのが見えた。

 正直、かなり助かる。

 さっきも、火の球を撃ってきたのが、そのガーネットクロウだしな。


 どうやら、大きな身体だけに、羽ばたくのを封じられると飛べなくなるらしいな。

 もっとも、ハミングバードやバルバル鳥に関しては、羽根にケガを負っても、なぜかふわふわと浮いたままになっている個体もあるので、必ずしもそういうわけじゃないようだ。

 もしかすると、スキルの一種か?

 妖精種には『浮遊』の種族スキルがあったみたいだし、それ以外にも飛行系のスキルが存在しているのかもしれない。


 さておき。

 俺が思っていた以上に、ルーガは戦力になっていた。

 スキルがなくても、ちゃんと弓矢ってのは使いこなせるんだな?

 上空で、けっこう離れた場所を飛んでいる鳥に、きっちりと当てることができるってのはすごい技術だし。

 確かにこれなら、冒険者ギルドでも、それなりに自信がある、みたいなことを言っていたのも頷ける。


 何せ、今の状態だと、遠距離で攻撃できるのはルーガだけだからな。

 俺となっちゃんは、どっちかと言えば、ビーナスとルーガを攻撃から護るのに必死だし、鳥が近くまで降りてこないことにはどうしようもないしな。

 ビーナスはビーナスで、スキルが全解放だったら、もうちょっと色々とやりようがあったけど、今の状態だと遠距離攻撃ができないので、やきもきしてるしな。

 移動もゆっくりでほとんど動けないし。


 ただ、だからこそ、全体を見ながら、こっちへの指示に集中できるってことでもある。

 不意の攻撃とか、背後から魔法などは、すべて、ビーナスからの警告で、何とか対処できている状態だ。

 ある程度、一対一のモンスター戦に慣れている俺にとっては、全方位からの攻撃への判断が遅れてしまうのだ。

 だから、かなりそれに救われているな。

 正直、戦争系ゲームの勘を取り戻していない、ってのもあるんだけどな。

 いや、そもそも、ここまで対空戦特化みたいなステージって、そんなになかったし。

 そんなもの、上から攻撃の方が絶対に有利に決まってるし。


 いや、今戦ってるモンスターもAIの一種なんだよな?

 何だよ、この状況は。

 『統制下状態』って言葉がよくわかるぞ。

 まるで、多数の鳥モンスターがひとつの意志を持ったかのように、きっちりと連携をとってくるのだ。

 見た目は鳥だけど、まるで指揮官に率いられた軍隊であるかのようだ。


「うわ、でも、どうしようかしら、マスター。全然、数が減らせないから、ちょっとこのままだとまずい気がするわ」

「まったくだな。数の暴力もいいところだ。町の中なのに敵が多すぎだぞ!?」

「…………まったく、愚痴が多い」

「――――えっ!?」


 背後から聞こえたのは、咎めるような声。

 そして、次の瞬間。


「GYUAっ――!?」

「GYAGYAっ――!?」


 少し離れた場所から様子をうかがっていた大型の鳥が、地面へと叩き落されて、あっさりと戦線を離脱する。

 そして、その横に立っていたのは――――。


「ノーヴェルさん!?」

「…………お嬢様の命で来た。こっちはいいから、反対側に集中」


 えっ!? 意外。

 助けに来てくれたのか?

 俺が驚いていると、もの凄くイライラした表情で。


「…………聞こえなかった? 呆けてる暇なんてない。お嬢様が来るまで凌いで。ヒッチコックリーダーの波状攻撃はこんなもんじゃないから」


 本番が来る、とノーヴェルさんが言ったかと思うと、そのまま、その姿が消える。


 ――――と、次の瞬間には、近くにあった木を駆け昇って、上空を飛んでいる鳥の集団へと飛びかかる姿が見えた。


 うわ、すごいな、ノーヴェルさん。

 そして、その言葉を反芻する。

 どうやら、ラルフリーダさんも助けに来てくれるようだ。


 よし。

 だったら、勝利条件が見えてきたな。

 その、ラルフリーダさんがやってくるまで、この鳥モンスターたちの攻撃を防ぎきる。

 そうと決まれば、だ。


「ルーガ、ビーナス、なっちゃん。このまま、粘るぞ! どうにか、生き残る道が見えてきたようだしな!」

「うん、頑張る!」

「そうね。どうやら、クリシュナさんも、あっちの方を襲ってる鳥たちを倒したみたいだし。こっちに向かってるわ」

「きゅい――♪」


 わずかに見えてきた希望に向かって。

 俺たちは必死に抵抗を続けるのだった。

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