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農民さんがVRMMOを楽しむらしいですよ  作者: 笹桔梗
第4章 畑始めました編
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第125話 農民、教会で色々と話を聞く

「あ、それじゃあ、ロッテーシャさんからの提案だったんですか?」

「うむ、そういうことだ。当初は、彼女が俺の師のはずだったんだがな。どうも、それでは芳しくないらしくてな、結局、こちらのタウラス殿を紹介してくれたのだ」


 カミュたちの仕事を待っている間。

 何で、タウラスさんに襲い掛からないといけなくなったのかを、リクオウさんから詳しく聞くことができた。

 そもそも、リクオウさんが、このゲームを始めた時の監督官が、肉屋のロッテーシャさんだったんだけど、最初のうちは教える気満々だったロッテーシャさんが、リクオウさんの独特の戦い方を見るにつれて、これ、あたしの手に余るんじゃね? とか思い始めたとか何とか。


 で、とりあえず、町のこととか、冒険者のイロハを教えてくれて、後は、適当に『魔境』の地域的な難易度とかをリクオウさんに教えこんだところで、放流って形になったのだそうだ。

 一応、弟子入りイベントは維持ってことで、お肉屋の手伝いさえしてくれれば、家に泊まっても構わない、って状態にはなったらしいけど、『格闘家』としての修行みたいなことは、とりあえず棚上げで、リクオウさんはリクオウさんで、ひとりで町の外に出て行っては、教わった通りに、挑戦する『魔境』のレベルを少しずつあげていって、それで自己鍛錬をしていたのだとか。


「とはいえ、モンスター相手ではどのぐらい強くなっているのか、わかりにくいという問題があってな。それで、ロッテーシャ殿からタウラス殿を紹介されたのだ。まあ、紹介されたと言っても、元より面識はあったのだがな」

「はっはっは、リクオウは時々、町の外からケガ人を助けて来てくれたからな」


 教会としても、その点を高く評価しているぞ、とタウラスさんが笑う。

 へえ、そういうことをしてたのか?

 何でも、リクオウさん、なぜか、町の外で戦っていると、その手の瀕死の人と遭遇するらしくて、それで死にかけていた迷い人(プレイヤー)さんとか、この町の住人さんとかを拾っては、教会まで抱えてきたりとかもしていたそうだ。


「いや、俺としては、修行の途中で、変な気配に気付いただけなのだが。無論、人助けをするのは、人として当然のことだからな」


 そういう時は修行を中断して、町まで戻ってきた、とリクオウさんが真顔で頷く。

 ふうん、良い人だな。

 根っこが真面目な人、っていう感じがするし。


 というか、俺のトラブル遭遇体質とは別の意味で、リクオウさんも似たような感じの性質を持っているような気がするぞ?

 まあ、本人強そうだから、特に気に留めている感じもなさそうだけど。


「今朝もな、町の南の道の修復に行っていた作業員とその子供を助けてくれてな。それについてはかなりありがたかったぞ。まさか、昨日に引き続いて、今日も狂ったモンスターが現れるとは思わなかったからな」

「えっ!? 狂ったモンスター!?」

「ああ。セージュたちも話は聞いているか? 昨日、南の方に伸びている道で、やたらと強い、ぷちラビットの進化系のモンスターが暴れたという話を」

「あ、はい、そっちは知ってますよ」


 『狂った』モンスターってのは知らなかったけど、そのことに関しては『けいじばん』とかでも噂になってたものな。

 大きめのうさぎのモンスターが大暴れして、それを『自警団』の人たちとか、商業ギルドの有志とかで倒したとかなんとか。


 タウラスさんたちが詳しい話を教えてくれたところによると、そのモンスター自体は無事に倒せたんだけど、その代わりに、南に伸びていた道が落盤して、そのまま通行止めみたいな状態になってしまったのだそうだ。

 それで、今日は朝から、そっちの修復作業をやっていたらしいんだけど、その作業中に、また別の強いモンスターが現れてしまったらしいのだ。


「俺は、強いモンスターが出たことをロッテーシャ殿からも聞いていたからな。たまたま、そちらの方の様子をうかがいに行ったのだ」


 本当はそのまま、道の様子を見たら、北の森へと向かう予定が、作業中にまたモンスターが現れて、現場が騒然となっていたので、その場にいた人たちに協力して、そのモンスターと戦った、と。

 まあ、そんな感じらしい。

 ちょうどその時に、作業員の父親へとお弁当を届けようとしていた子供とも出会って、その子に同行していたので、結果として、それも人助けに繋がったそうだ。


「普段なら、そこまで危ない道ではないのだがな。だが、少しばかり、モンスターの様子がおかしくなっているのは事実だ。今朝の、その事件の結論として、町の住人は個別では町の外に出ることを禁止することに至ったというわけだな」

「えっ!? そうなんですか!?」


 あくまでも、状況が変わるまでの措置だがな、とタウラスさん。

 いや、それは初耳だぞ?

 あれ? ハヤベルさんが確か、素材の採取に向かってたよな?

 そっちも外ヘは出られなかったのか?


「ああ。門のところで出入りが制限されているはずだぞ。例外は『自警団』やそれなりに腕利きの冒険者に同行するなりして、複数で出かける場合か。後はリクオウのように、一定のお墨付きをもらった迷い人(プレイヤー)などについても、外出の許可は与えられるはずだ。詳しくは、改めて、冒険者ギルドなり、商業ギルドなり、各ギルドで確認をとるといいぞ」

「わかりました」


 ふうん?

 要するに、護衛になりそうな人が一緒とかなら問題ないってことか?

 後は、俺たち迷い人(プレイヤー)の場合も、普通の町の人と比べれば、多少は敷居が低くなっているようだな。

 まあ、たぶん、その理由って。


「タウラスさん、それって、俺たちが『死に戻り』できるから、ってことですか?」

「まあな。もっとも、わしは神父として、あまり頷ける話ではないが仕方あるまい。少なくとも、全面的に町を閉ざすわけにもいかんからな。南の道の補修も放置しておくわけにもいかんし。もちろん、褒められた話ではないのは十分承知だ」


 なるほど。

 背に腹は代えられない、って話か。

 この町の『自警団』も、どちらかと言えば、外敵からの護り、って意味合いが強いので、そちらが外へ行って、あまり町自体が手薄になるのもよろしくないので、そういう意味で、俺たち冒険者の助力が必要な状態とのこと。

 まあ、タウラスさん的には、『死に戻っ』て復活した際の説教なども担当しているので、あんまり良い顔はできないみたいだけどな。


 それにしても、だ。


 タウラスさんは、俺たち迷い人(プレイヤー)の『死に戻り』を知っているよな?

 でも、それって常識なのか?

 カミュが把握しているのは間違いないし、教会の人間なら知ってるのか?

 少なくとも、ルーガはそのことは知らないようだけど。

 まあ、直接、『死に戻り』って何? って聞かれたことはないけど、この手の話が出る際に、いぶかしげな表情を浮かべているようではあるので、たぶん、知らないのだろう。


 その辺にやはり違和感はあるな。

 もっとも、ゲームのシステム上の仕様である可能性は否めないけど。

 さっきのジェムニーさんの話にもあったけど、どこまで(・・・・)それが意図されたことなのか、がわかりにくいのだ。

 その辺は、まだテストプレイが不十分なための穴なのかも知れないけどさ。


 さておき。


「リクオウさんが、タウラスさんにかかっていく理由はよくわかりましたよ」


 タウラスさんのその強さは何なのか、っていう謎は残ったけどな。

 そう思いながら、改めてタウラスさんの方を見ると。


「はっはっは、セージュ。わしなど、教会の中では、まだまだ弱い方だぞ? 少なくとも、シスターカミュの方が数段上だ」

「あ、そうなんですか?」

「おい。人がいないところで適当なことを吹き込んでんじゃないぞ」


 あ、カミュが奥から戻ってきた。

 シスター姿になったアスカさんも連れて、だ。

 というか、今のタウラスさんの言葉を聞いて、ものすごく仏頂面してるし。


「照れ臭いからって、あたしを巻き込むなよ。そういう(・・・・)注目のされかたはごめんだ、って言ってるだろうが」

「はっはっは、すまんすまん」

「ったく……このクソ神父が。まあ、そんなことはどうでもいい。それよりも、セージュ、待たせたな。アスカのシスター就任の手続きが終わったから、そっちの話にも取りかかれるぞ」

「はい。カミュさん、お手数をおかけしました」


 横に立っていたアスカさんが、にっこり微笑んでカミュにお礼を言う。

 どうやら、本当に、アスカさんってば、教会のシスターになったらしいな。


「アスカさん、シスターさんになったんですね? 今さっき知ったからびっくりしましたよ」

「ふふ、報告が遅れてごめんなさい。ただ、私のお仕事的にはそれが最善だったみたいなので、カミュさんにお願いして、シスターにして頂いたのよ」

「まあな。観光、か? あたしはあんまりそういうのは詳しくなかったんだが、まあ、アスカの話を聞いている限りだと面白そうだしな。それで許可した。少なくとも、この世界をあっちこっち旅するっていうなら、教会に属するのが一番無難だからな」


 そう言って、カミュも頷く。


「シスターになると、旅行がしやすくなるのか?」

「というか、巡礼路が使えるようになるな。あと、普通は、種族的な問題とか、そっちとの兼ね合いで入るのが難しい国とかにも入りやすくなる。もっとも、その反面、万が一トラブルとか起こした場合は、その分、罰則とかも厳しくはなるがな」


 だから、メリットとデメリットがある、とカミュが苦笑する。

 教会に所属した以上は、何か事を起こした場合、それが教会の責任にもなるから、って。


「まあ、最初のうちは、あたしがお目付け役として付き合ってやることにした。他の町とかで、クエストなんかをこなすなら別だが、美しい風景なり、絶景ポイントを探したいっていうんなら、そんなに住人とのトラブルには発展しないだろうしな」

「へえ、カミュがついていくのか?」

「面白そうだしな。あたしも、何で、こっちに来てまで仕事してんのか、ちょっと疑問に感じてきたから、ちょっとした息抜きみたいなもんだ」


 ふうん?

 要は、カミュとアスカさんの女二人旅って感じなのか。

 それで、あっちこっちの旅の見所とかを探していく、って。

 それはそれで面白そうだなあ。


「シスターカミュ、仕事の方もしっかりやるようにな? お前さんも一応は教会の所属であることを忘れてはいかんぞ?」

「やってるっつーの。てか、いいだろ、別に。あたしがそう決めた」


 おー、唯我独尊だな、カミュってば。

 それを聞いて、タウラスさんも、やれやれ、って感じで苦笑してるし。

 てか、巡礼シスターって、神父さんよりも偉いのか?

 少なくとも、カミュが敬語を使ってるのって聞いたことがないし。

 そういえば、ラルフリーダさん相手でも、このしゃべり方のままだったよな?

 けっこう、カミュはカミュで謎な存在だよな。


 そんなことを俺は考えつつ。

 教会でのお話はもう少し続く。

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