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不機嫌

「ねぇ、なんであのコ機嫌悪いの。」


「なんでも昨夜レンギョウ王子が夜這いをかけたとか。」


「えっ!?マジ!?じゃ、今晩は俺が行っちゃおうかな。」


「誤解だ。」


私から遠からず離れたところから3人の男たちがこちらを伺っている。小声で話をしているつもりかもしれないが丸聞こえだ。もしかしたら隠すつもりなどないのかもしれない。ちらちらとこちらを見てはぼそぼそと話している。


怒濤のマナーレッスンで酷使した身体のまま西国入りし、豪華絢爛なパーティーに出席させられ、王族や知らない人に囲まれ緊張しっぱなしだった身体に強い酒を入れて酔いが回り、酔った勢いでコーリア様に粗相をして落ち込んでいるところに、真夜中の謎の来訪者(正体は第2王子殿下だったけど)が現れ不安に駆られ、殿下が駆けつけてくれたと思えば、からかわれ・・・


たった一晩で私はいっぱいいっぱいです。疲れた。帰りたい。自分のおうちに。


「自分の身内の手綱くらいきちんと取っておいてください。女性でなくとも夜更けにアレが訪ねてきたらぞっとしますよ。」


容赦の無いコーリア様の叱責にもヴァンさんは笑顔で「ムリムリ。近寄りたくねぇもん。」とおなかをかかえて笑っている。笑い事なんかじゃない。ほんっとに怖かったんだから。


だから、だから殿下が助けに入ってきたときは、ちょっぴりどきっとした。階下の高さをものともせず、隣のテラスから飛び移ってきた殿下。胸元が肌蹴てくつろいでいる風で、いつもきっちり詰襟の服を着ている殿下だから、余計に目に焼きついた。蜂蜜色の髪は月明かりに照らされてもやっぱり綺麗で、エメラルドの瞳は吸い込まれそうだった。だから、だからさ、そんな美形の男の人に優しくされたら普通、ときめいちゃうじゃない!どきっとしちゃうじゃない!なのに殿下ったらそんな純情な私の心を弄ぶかのように馬鹿にして!!からかって笑うなんて酷い。まぁ、珍しいものが見れてラッキーだったけど。


「何を百面相しているんです。不細工ですよ。」


いつの間にか背後に立っていたコーリア様に一気に高まった熱を下げられる。間近で、濃紺の瞳で冷ややかに見下ろすコーリア様はいつもと変わらぬ涼しい顏に、かっちりとした制服に身を包んでいる。


そういえばコーリア様のだらけた格好なんて見たことがないかも。昨夜初めて殿下のラフな格好を見たし、そのほかに執務用の詰襟とか、パーティーの礼服とか色々な格好を見たことがある。しかし、コーリア様はいつも側近用というのか、事務官用の制服しか見たことがない。白シャツに深い朱色のタイ、黒ベストの上に丈の長い黒い上着を着て、金の懐中時計を胸ポケットに入れている。艶やかな髪も黒だからほぼ全身黒尽くめだ。装飾もほとんどない事務官用の服は、しかしコーリア様の整った顏を引き立たせているようにも見える。


「聞いています?」


思考を飛ばしている間にコーリア様が話をしていたらしい。ぽかんとした顏で聞いていなかったことがバレてため息をつかれ、もう一度説明をしてもらうと、今から殿下とヴァンさんと3人で視察に出かけるらしい。


視察先はランディ城から馬車で1、2時間ほど離れたところにある未開発の鉱山だそうだ。仕事であるし、危ないし、ということで私はここに置いてけぼりになるという。昨日のこともあるから一人になるのは気が引けたが、仕事ならば仕方がないし、あくまで仮初めの立場である私に我侭を言えるわけがない。


「お気をつけて。」と笑顔で見送るしかなかった。



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