表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/84

手紙

「私宛に?」


上質の紙に押された封蝋には、女性の横顔が刻まれてある。初めて見るそれは、今までの知り合いからの手紙ではないとわかる。それに私宛の手紙は一度メイド長の下に集められ、メイド長から渡されることになっている。マルガリータさんの手元に直に届くはずがない。封筒を裏返してみるが、送り主の名など書いておらず、どうやら開けて中を見るしかなさそうだ。


しかし得体の知れないものを見るのは不気味で、どうしようか考えあぐねいていると、横から手紙を覗き込んだ殿下がぼそりとつぶやいた。


「その紋章は、ランディ家・・・リヒトのものだな。」


「え・・・・。」


「この女の横顔は月の女神で、西のモンド王国の封蝋に代々使われている。」


それから・・・と紋章の説明を続ける殿下。けれど、その説明はそれ以上私の耳には入ってこない。ヴァンさんからの手紙。そう分かった瞬間、手紙を殿下の手に無理やりねじ込んだ。


「何をする。これはお前宛のものだろう。」


「いや、なんとなく怖いので。」


俺に人の手紙を読む趣味はない、そう冷たく手紙をつき返される。


「いやいや、殿下、はじめに目を通してみてくださいよ。」


「いやだと言っている。」


再び殿下に(今度はベルトに挟みこんでみた)渡してみるが、ことごとく手元に戻される。そのまま数分程度揉みあいを続けていると、手紙が別の場所から伸びてきた手により引き抜かれた。


「先ほどから何をしているのですか。王子を探しに戻ってみれば・・・・・・。」


呆れ顔をしたコーリア様がそこにはいた。図らずも私たちから取り上げた手紙を裏返し、封蝋を見て何かを悟ったのか、懐からペーパーナイフを取りだし(どうしてそんなものを持ち歩いているのかは謎だ)、中身にさっと目を通し、そのままマッチに火をつけ、


「燃やした!?」


黒い藻屑と化した手紙は風にさらわれ跡形もなくなってしまった。


殿下が手紙の内容をコーリア様に聞いていたけれど、「何も。」と微笑むだけだ。結局、差出人(まぁ、ヴァンさんからだろうけど)も内容も何もわからないまま、コーリア様は殿下を連れて行ってしまい、その場には私とマルガリータさんだけが残される。


「マルガリータさん、いいのかな、手紙燃やしちゃって・・・」


大丈夫かなとつぶやけば、マルガリータさんが、実は、と小箱を取り出した。


「こちらにはメモ書きがありまして・・・。手紙とは別に、お嬢様がお一人のときに渡すようにと。」


マルガリータさんに渡されるまま小箱を受け取る。私の手のひらより少し大きいくらいのサイズで、だけど箱の高さは低く、重さはほとんど感じられない。開けていいものか、爆発したりしないだろうかと疑いもしたが、中を見ないことにはどうにもならない。


おそるおそる小箱を開けると、中にはまた手紙と、招待状が入っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ