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知らせ

「ただいまです。留守中変わったことは無かったですか~?」


人目を気にし、誰にも会わないようにこっそりと部屋に戻ってきた。行儀が悪いと思いながらもお仕着せを脱ぎながら洗面所に向かう。キャップを取り、エプロンをはずし、袖のボタンもはずす。


「特に変わったことなど無かったが。」


「良かったぁ。殿下やコーリア様が訪ねてきて、いないのバレたらどうしようかと思ってたんですよ。」


「そうか。それは悪かったな。」


「いいえ~。あ、服脱ぐの手伝ってくださぁい。」


後ろにいくつもあるボタンを一人ではずすことが出来ず、洗面所からマルガリータさんを呼ぶ。


「お前、大胆だな。」


のそりと洗面所に入ってきて、鏡越しに目が合った人物を見る。あれ?マルガリータさん随分たくましく・・・・


「ギャアァァァァァァァッ!!!」


ひっく。うぇ。ひっく。


「ず、ずみばぜんっ。まさか、ひっく。で、殿下がおられるとは・・・。」


「いや、留守中に入って悪かった。」


殿下の突然の訪問に茶の用意で部屋を出ていたマルガリータさん。私の叫び声が廊下まで響いたらしく、血相を変えて帰ってきてくれた。


着替えはなんとかすんだのだが、落ち着くまでには至らなかった。マルガリータさんだと思って話しかけていたのは殿下で、恐れ多くも男性に、しかも殿下に着替えの手伝いをさせようとしていたのだ。そりゃショックで涙も出るもんだ。


「そっ、それに・・・部屋から抜けだしてごめんなざ・・い。」


「あぁ。コーリアの言いつけを破るなんてお前も奴に慣れたもんだな。」


私が部屋にいなかったことを特に気にしていないのか、応接用のソファに腰掛け、優雅な手つきで紅茶を飲んでいる。久しぶりに会った殿下はどこか疲れていてやつれている感じがする。公務が忙しいのか、はたまたお客様の相手が大変なのだろうか。どちらにせよ私にはわからない。


「最近お忙しいのですか?」


「あぁ。迷惑な客がまだ帰らない。」


早く帰れば良いのに、ぼそりと殿下がつぶやく。その表情は本当にうんざりとしているようだ。そんなにひどい客なのだろうか。確かにヒイラギさんはうっとうしいかもしれないけれど(あ、ちょっとだけ、ね。)、殿下にこんな顔をさせるほどだろうか。そう思ってたずねると、


「いや、もう一人の客のほうだ。西国の。」


「あぁ、貴族のご子息の。」


「いや、王子だ。」


「へ?」


「身分を伏せて通知していたらしい。俺を驚かせるためだけにな。」


それはまた、大変そうで。隣国の王子が来たとなると、それ相応の対応があるだろう。だからコーリア様は面倒を起こしそうな私を手っ取り早く軟禁状態にしたのか。それならば頷ける。納得はしていないけど。


「それに・・・。奴がお前に会うまで帰らないと言い出してな。」


「私にですか?それはどうして・・・」


「俺の婚約者がどんな人間なのか興味があるらしい。」



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