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令嬢

「きれいなお嬢様方」の次に思ったのが、「ほんと、いい性格してる」ということだった。


茶会の前にコーリア様に散々脅され、それでも「面倒事を起こさないように」と凄まれてから送り出された。王宮の高級官吏のご令嬢たちとの茶会が、今しめやかに・・・水面下で火花を散らしながら行われている。まぁ、私が一方的に嫉妬の炎に焼かれているのだけれど。


殿下と側近のコーリア様、私、侍女のマルガリータさんの4人で城一番の優雅さと豪華さを誇る庭園に足を運ぶ。そこでは本日、宰相様や王宮に勤める上位貴族の方々のご令嬢たちとの茶会の席が設けられているのだ。

城一番というのも頷けるほど、庭には色とりどりの花が咲き乱れ、けれど互いがそれぞれの魅力を邪魔することなく見事に調和している。庭園の開けたところには丸テーブルが設置されてあり、既に茶会の準備が整えられていた。そしてそこには5人の美女が微笑みを浮かべて私たちの到着を待っていた。


そもそもこの茶会は宰相様のご息女様が、どうしてもと言って行われることになったらしい。宰相様には楯突けないのか、はたまた断るのが面倒だったのかはわからないが、“ダリア嬢”がまだ正式な花嫁ではないのに『レンギョウ王子殿下の花嫁』として招かれているというのだ。


一通り(猫なで声で延々と話す令嬢たちの長い)挨拶を終え席に着けば、隣に座るだろうと思っていた殿下が未だ立っていた。どうしたのかと見上げればコーリア様が「公務のため退席します」と説明をしだした。


うそうそうそ、こんな所に1人にしないで!


そう願いをこめて殿下を見上げたのに、一瞬目があった殿下にはふいと顔を反らされた。どことなくその横顔は気まずげだ。その後ろに控えているコーリア様に目線を移せばにやりと冷笑された。この腹黒が!と憤りを感じるものの、もちろん私に文句を言える権利など無い。ご令嬢たちがなんとか殿下を引きとめようとしなを作ってみるが効果もなく。


「いってらっしゃいませ」


はりつけた笑みで見送ればそそくさと男二人は去っていった。

テーブルに残されたご令嬢5名と私は一旦静まり返るが、その気まずい雰囲気の中茶を持ってきたメイドさんたちによってはりつめていた空気が少し和らいだ。


今回の茶会のホストである宰相様のご令嬢エリカ様がどうぞと声をかける。見事なブロンドに透き通るような碧眼。ぱっちりした目元は、睫がしっかりと上を向いており、ほんのり桃色の頬も、ぷるぷるの唇も目を惹きつける。大胆に開いた胸元には私の1.5倍…いや本当は2倍くらいのふくらみがあり、きゅっと引き締まったくびれも実に扇情的だ。堅物だが、顔だけは良い殿下と並ぶと、実にお似合いだろう。


冷めてしまっては勿体無いので、エリカ様に言われるがまま紅茶を一口含む。

・・・・・・・・・はっきり言ってまずい。

私のカップだけ違うポットから紅茶が注がれるなと不思議に思っていたが、まさか、こんな激渋の紅茶が出されるとは。

エリカ様は女の私でもうっとりするような微笑を浮かべ紅茶の感想を求めてくる。


「花嫁様は北方の出身なのでしょう?地域によって飲まれる茶が違うと聞きましたから、花嫁様には特別こちらで美味しいとされるお茶を召し上がっていただきたくて・・・。」


うふふと口元を隠して笑う姿は可憐以外のなにものでもない。ほだされてしまいそうになるが騙されてはいけない。この笑みの下ではどう思っていることやら。他のご令嬢たちは私が飲む茶がどういうものなのか理解しているらしく、くすくすと声を出して笑っている。


どうやら“ダリア嬢”は歓迎されていないらしい。殿下の退席を残念がってはいたが、茶の席に付くつもりがないのをわかっていたのだろうか。用意周到に、茶菓子までまずいものが用意されている。こちらは塩加減がすごい。


今まで平穏にひっそりと生きてきたからこんなにも人の「悪意」に触れることなどなかった。急に殿下の花嫁として現れた私(というかダリア嬢)が気にくわないのだろうか、エリカ様の慈愛に満ちたような目の奥には確かな嫉妬の炎を感じることができた。


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