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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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因縁めいたもの

 その後、色々な場所を訪れてから俺はクロワのいる魔王の居城へ向かった。魔界を見て回る前に言っていた、道具の検証について終わった頃だろうと思ったのだが、


「ああ、すまない。少し危急の用事があるため、少し城内に滞在していてもらいたい」


 クロワが言う。どうしたのかと尋ねると、


「厄介な魔物が出現したらしい」

「魔物?」

「同胞でも手に負えないような、強力な力を持つ個体だ」


 ……魔族でさえも対抗できないというのは、かなりヤバそうだな。


「現在その居場所を捕捉して討伐隊を編成しているのだが」

「魔物って……魔界は魔力も多いし、自然発生する魔物だって強いかもしれないけど、魔族で倒すのが厳しいというのは……」

「妙な力を持っているとのことだ。その検証がまだ済んでいないのだが……」


 俺はそこで、眉をひそめる。


「魔界に出現する魔物に対して、こういうケースはよくあるのか?」

「能力が高い魔物は珍しくはない。ただ――」


 そこで新たな報告が舞い込んだ。魔族が魔王へクロワへ向け、


「ラトーの隊と、テルメンの隊が攻撃を仕掛けましたが、対処が難しく……」

「両者でも、か? だとすると、相当強力だな……」


 何やらきな臭いけど……報告者が立ち去った後、俺はクロワへ向け疑問を投げた。


「星神関連である可能性は?」

「ゼロとは言わないが……さすがに無関係のような気はする」

「もし魔界以外の所でも何かしら影響が出ていたら、星神が先手を打ったことになるけど」


 準備の最中に……だとするとまずいことになるのだが――


『ルオン殿』


 その時、ガルクの声が頭の中に響いた。


『先ほど魔界の外側と連絡を取ったのだが』

「……そもそも、とれるのか?」

『魔界と手を組むという時点で、色々とやっていたからな』


 マジか……ここで子ガルクが右肩に出現し、


『外と連絡を行ったが、星神やそれに類する存在が出現した兆候はない。魔族でも苦戦するような魔物が出現すれば、さすがに我らも観測できるはずだが、そういうこともない』

「ということは、魔界特有の現象? あるいは、星神が魔界へ向け攻撃したのか……」

『可能性は低いと思うぞ』


 そうガルクは述べると……今度はクロワが口を開いた。


「道具があるとルオンさんには言ったが、もしかするとその関連かもしれない」

「道具が?」

「というより、先代魔王は何かしら道具を含め研究資料などを封印していた。しかしそれにほころびが生じて、実験などをしていた魔物などが外に出てしまった……などという可能性がある」


 ……シェルジア大陸に攻撃を仕掛けた魔王は、入念な準備を経ていた。それを踏まえれば、魔界にいた時点で様々な実験などを繰り返しやって、検証したことは間違いない。

 であれば、そうした実験などで残った魔物などが暴れ出して……というのなら筋書き的に一応納得はできる。


「俺が対応しようか?」


 ここで一つ提案をする。それにクロワは驚いた様子を見せた。


「ルオンさんが?」

「騒動があるんなら、俺が受け持っても構わないけど」

「しかし……」

「今後、魔界とも付き合っていくことになるって考えたら、無視して犠牲が出たら寝覚めも悪いし。それに、そんな騒動があるんだったら、決戦に対し邪魔になるだけだろ」


 その言葉により、クロワはどこか無念そうに一度目を伏せる。


「……まさか僕達に対処できないものを、人間に託すとは。でもまあ、魔王を決める戦いにおいてもあっていたことだし、今更という話ではあるか」

「いいのか?」

「ああ、わかった。ならば正式な依頼という形にしよう……報酬については――」

「別にいらないよ。人間他、多種族との関係性を深めてくれるよう、尽力してくれ」

「ああ、当然だ」


 クロワは頷き……俺は彼から情報をもらい、現地へ向かうことにした。






 魔物が出現した地点は、魔王の直轄領内に存在する山岳地帯。山に足を踏み入れた時点で、なんだか魔力がおかしかった。


「ガルク、感じるか」

『うむ、不思議な魔力が漂っているな……魔族由来のものであることは間違いないが、クロワ殿を始め他の魔族と比べれば大違いだ』

「とはいえ、これは……」

『そうだな、魔王……先代魔王の魔力がわずかに存在している』


 どうやらクロワの推測は正しかった。俺が訪れたタイミングで、というのは偶然だろうけど、なんだか因縁めいたものを感じる。


「俺よりはソフィアとかの方が因縁深いけどな」

『相手からすれば、ルオン殿が動き回ったことで目標を果たせなかったのだ。十分な因縁があると我は思うが』

「……まあ、邪魔立てした一番の人間なのは間違いないし、魔王としては俺がやったことを知れば怒り狂うかもしれないな」


 山の中へと進んでいく。目的となる魔物についてはしらみつぶしに探さなければいけないけれど……わずかだが、気配が漂ってくる。魔物が強力であるため、魔力を隠すことができないのだろうか。


「ガルク、俺は感じ取れるけど、詳細までわかるか?」

『ある程度は』


 なら――と言いかけたところで、遠吠えのような音が聞こえてきた。


「……敵も気付いたか?」

『そのようだな』


 ふむ、警戒はしないといけないかな……俺はレスベイルを呼び出した。背を守る形で配置して、周囲に敵がいないか索敵をさせる。


「ガルク、何かあったら言ってくれ」

『御意』


 返事と共に、さらなる咆哮。方角は一緒だが……、


「クロワが受けた報告によると魔物は一体だけらしいけど、複数体いる可能性はゼロじゃないよな?」

『むしろ実験などによって強化された個体だとしたら、複数いてもおかしくはないな』

「全部倒すまで帰れないかな……あるいは、魔物の発生源を突き止めないとまずいか?」

『この山を根城としているのであれば、山の周辺にいるかもしれん。今のルオン殿ならば、探し出すことも十分可能だろう』

「なら魔物を倒したら、調べてみようか」


 俺はそう告げ、声のする方角へ足を向ける。レスベイルの索敵が終わり、俺やガルクが感じ取った方角に一体いるだけだ。

 とはいえ、油断はできない……俺は剣を抜き臨戦態勢をとる。思わぬ仕事だが、決戦前の肩慣らしにはなるかもしれない……そう思いつつ、ゆっくりとした足取りで歩き続けた。


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