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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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崩壊の火種

 俺はアナスタシアの屋敷を離れて翌日、帝都へと辿り着いた。その復興具合は、皇帝となったアベルの手腕が良かったのか、それとも人々の力か……とにかく、栄えていることだけはわかった。


「うん、大丈夫そうだな」


 俺は城へと向かう。そこでエクゾンからの書状を示し、あっさりと中へと通される。

 急な来訪だからどういう形で会うのか疑問だったんだけど……謁見の間へと通された。


「お久しぶりです」


 礼を示す俺に対し、アベルは小さく笑う。

 その姿は、皇帝としての威厳を確かに持っている……法衣姿で、皇帝として国を背負っているためか、風格が以前と比べても上がっていた。


「突然の来訪、申し訳ありません」

「私達にとって、あなたは英雄だ。そんな風に謙遜する必要はない」


 皇帝として、基本的には上からモノを言う感じになっているけど、話す雰囲気から以前、剣を握り戦っていた姿が思い起こされる。


「話には聞いている。強大な存在との戦い……私達が本格的に助けることができないのは心苦しいが」

「既にアナスタシア侯爵から援助を受けていますので」

「そうか……彼女を通して私達も参戦する形だが、何かあれば要望を聞こう」


 要望か。といっても決戦準備も最終段階に入っているわけだし、正直必要はないかな。

 俺は現状で十分という返答をした後、いくらか話をして城を出た。とりあえずアベルが元気そうで何よりだ。


『皇帝として、しっかり国を治めているようだな』


 ガルクが評価する。うん、俺もそう思う。


「ひとまずナーザレイド大陸については問題なさそうだな」

『うむ』

「なら、この大陸で見ておくべきことは終了だな……なら次はマータッド大陸か」


 デヴァルスなんかも天界に戻っているし、一度顔を見せておこう……入れ違いになる可能性はあるけど。


「あの場所で天使の宴……堕天使との戦いに遭遇したけど、天使達と深く関わったため、あの大陸の国々とはそれほど交流とかしてないんだよな」

『戦いの軸が堕天使だったからな』


 ガルクも同意。ふむ、道中で会うべき人はいるけど、基本的には天界を訪れて終わりって感じかな? そもそもナーザレイド大陸みたいに、大陸全土が無茶苦茶になったという感じでもなかったし。


「そういえば、セルガ達はどうしているんだ?」


 デヴァルスにも確認していなかったな……まあこの大陸内で色々と動き回っているというのは想像できるのだが。


「ふむ、天界を訪れたら確認しておくか」


 ということで、俺は魔法を発動させて――ナーザレイド大陸を後にした。






 そうして旅を続け、俺はマータッド大陸の地へ足を踏み入れる。まずはアナスタシアの友人で、この大陸を最初に訪れた時、顔を合わせたエーネと会う。さすがに彼女は何もかも知っているわけではなかったが、アナスタシアから大きな戦いに参加し、それは俺が主導で動いていることは把握しているらしい。


「大変なことが起こっているようですが」

「俺達が、なんとかするので安心してください」


 それだけ伝えると、彼女は笑みを浮かべ話は終了。その後、天使の宴で関わったレドなんかと顔を合わせつつ、天界へ赴くべくどうしようか考える。

 問題はその手法……と思っていたのだが、向こう側からアプローチが来た。というのも、俺がこの大陸に来たことを察したらしい。ネルが俺の前に現れた。


「そろそろ天界へ行きたいと思うところ、だと思って」

「まさしくその通りだよ……というわけで、頼む」


 彼女の案内であっさりと天界へ。以前、滞在した場所とは別所にある屋敷で、俺はデヴァルスと顔を合わせた。


「準備の方はどうだ?」

「順調だ。十日後くらいには全ての準備が終わり、シェルジア大陸へ向かう」

「……道中で気になったんだが、セルガ達はどうした?」


 俺の問い掛けに彼は肩をすくめる。


「セルガ、ディーチェ、そしてクオトの三名については、マータッド大陸内で色々と動いてもらっていた。天界とも自由に行き来してもらい、配下の天使と共にレベルアップしていたわけだ」

「それは……天使の宴が終わった以降?」

「そうだな。当初は彼らの好きなようにさせて、こちらは補助するといった形にしていたのだが、敵の詳細がわかり始めた段階で色々と口を出すようになった」

「天使の口添えか……なんだかすごそうだな」

「といっても、そう大したことはしていないんだが……元々実力もあったし、三人はあっさりと飲み込んでくれたよ」


 きっと、詳細には語られない大変さがあったはずだけど、三人はそれを受け入れて頑張ったというわけか。


「実を言うと、宴が終わった後にこの大陸でも一騒動あった」

「え、初耳なんだが……」

「話していなかったからな。それも星神に関連すること……どうやら堕天使の出現に興味を持った一派がいて、そこに加え星神に関する資料などを調べ、大規模な魔法を開発した」

「なんだか、相当話が大きくなっているけど……解決したんだよな?」

「戦力的にはそれほど……星神が生み出した使徒などと比べれば、大したことはないさ」


 あっさりと答えるデヴァルス。まあ、他ならぬ天界の長が言うのだから、俺としては頷くしかないけど。


「結果的に、その一派はセルガ達の攻撃で潰えた。研究成果などを回収することにも成功したが、今回の戦いに役に立つわけではないな」

「そうか……堕天使の騒動に加えて星神のこと……やはり、この世界には火種がたくさんあるな」

「仮に星神を倒しても、そういった勢力が残り続けることになるな。そもそも、彼らにとっては強大な技術、くらいの認識しかない。星神の情報が地中深くに埋まっているとしたら、そこかしこに火種が存在しているんだろう」


 と、そこまで言うとデヴァルスは笑う。


「といっても、星神本体を叩けば少なくとも星神関連の技術において、降臨することは防げる……世界が終わるなんて話には繋がらなくなる」

「世界全体に影響がないのは良いけど、その辺りの対策だって講じる必要性が出てくるかな?」

「ふむ、どうだろうな」


 俺の言葉に対し、デヴァルスは口元に手を当て何事か考え始めた。

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