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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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異質な戦い

 俺は魔力が漏れない魔法を頭の中でピックアップ。現段階では下級魔法がほとんどだが、得意魔法である『デュランダル』なら一瞬だけだが魔力を放出せずに使用することができるようになっている。

 魔族を倒すのなら、それがベストか。とはいえ、無傷の状態で倒すのは難しいかな……?


『ルオン様、一つ提案があるのですが』


 ふいにレーフィンが声を発する。


「提案?」

『少し様子を見ませんか?』

「様子を……?」

『見つからないように動く前提だと、ルオン様も大変でしょう? それに、この魔物を生み出す術者……どれほどの強さなのか見ておきたいと思いまして』

『うむ、我も同意だ』


 なんか、精霊達の好奇心をくすぐるような事態となってしまったようだ……まあ俺自身興味がないわけでもないし、少し様子を見るか。


「リチャルが危なくなったら助け、事情を訊くことにするぞ」

『わかりました』


 レーフィンが応じた直後――魔族であるテレスが声を発した。


「質問には、答えてくれないようだね」

「……ああ、そうだな」


 リチャルが返事をすると、テレスは凶暴な笑みを見せた。


「ならば実力行使に出るけれど、構わないよね?」

「……どう応じたって、お前は俺を叩き潰すつもりなんだろ?」


 皮肉気に、なおかつ斜に構えてリチャルは語る。するとテレスは「まあね」と答え、


「そういうことだね。運が悪かった……いや、僕らの技術に手を出した時点で、君の極刑は決まっている、ということかな。正直に話してくれればせめて楽に死なせてあげられたけど――残念だ」


 テレスが動く。それと同時に悪魔も動き始め……次の瞬間、リチャルの周囲にいたオーガ達が悪魔の動きに呼応し、激突し始めた。


 魔物と悪魔の激突。数ある魔族との戦いの中でも異質と言ってもいいだろう……人間は疑似的に魔物を生み出し、使役して戦うことはできる。だがそれだって数に限界がある。テレスが率いる悪魔の軍団に対抗できるほどの魔物を単独で生み出すのは非常に難しく、だからこそ珍しい光景だ。


 オーガが棍棒を振るい、悪魔を吹き飛ばす。双方の能力は拮抗していると考えてよさそうだ。とはいえオーガの方が巨体かつリーチも長く攻撃力も高いだろう。よって数が似通っているなら、オーガの方が有利かもしれない。


 だがそれはきちんと制御し続けることができたらの話。もし暴走しオーガの動きが乱れたら戦況は一変するだろう――俺はリチャルを見る。額に汗を生じさせているが、まだまだ余裕の表情。


 どういう経緯でこれを手にしたのかはわからないが、魔物をしっかりと制御し力を我が物としているのがはっきりとわかる。

 ここまでに至るには、相当な努力を重ねてきただろう……見ている間に戦況に変化が。次第にオーガ達が悪魔を押し始める。


「……悪いが、俺の魔物の方が上だ」


 リチャルは宣言する。言葉通り戦況は明確になり始めた。オーガの攻撃が悪魔を一体、また一体と撃破していく。ここで俺は一つ推測した――もしや、本来のオーガと比べ強くなっている?


 あの塔にいたオーガと比べても、その能力は高いような気がする。もしやリチャルは技術を応用し、通常よりもより強い魔物を生み出すことに成功したのだろうか? そう考え観察し……違う。これは魔物達を鍛えた成果だ。


 オーガと悪魔の戦いを見ていると、単純な攻撃力だけでなく悪魔達の攻撃を受け流す個体もいる。これは能力というよりも戦闘技術的に能力が高まっている――つまりそれだけ訓練を施したということを意味している。


 指揮するリチャルは優勢な状況に笑みを浮かべてもいいのだが……言葉は自信ありげにしろ、表情は硬い。テレスの攻撃はこれで終わりなどではない――そういう確信を抱いている。


「――お前を、倒す」


 そしてリチャルは宣言する。対する魔族の方はほくそ笑んだ。


「なるほど、どうやら一筋縄ではいかないようだ。けどね――」


 瞬間、魔族から発せられる魔力が一気に濃くなった。


 どうやらこいつは変化するタイプか――魔族にも種類があって、普段は人間のような姿をして戦闘になると本性を表すタイプと、人間に近い姿が本体である種がいる。どちらが強いというわけではないのだが、幹部クラスは大抵後者で、五大魔族もその枠組みに入っている。


 この魔族は……魔力の多寡から判断するに、幹部クラスまでは到達していない。しかし悪魔を従える以上、能力はそれなりに高い。幹部候補といったところか。


 テレスの姿が激変していく。見た目、漆黒の狼――放つ魔力は禍々しく、人々を恐怖させるには十分すぎる力。


 大きさは、横幅が大人二人が手を伸ばしたくらいはある。胴体はそれに準じた大きさで、その体格で突進をくらえばリチャルなど即死だろう。


『さあて、退治させてもらおうかな』


 魔族が語る……対するリチャルは、硬い表情のままではあったが戦意は衰えていない様子だった。


「……お前みたいな魔族をどうやって倒すか、俺は必死に考えた」


 リチャルが語る。なおかつ彼の正面にオーガが立ち塞がり、テレスからの攻撃に備える。


「塔を放棄したのは、あの場ではお前に絶対勝てないからだ。だからここに来た……この砦の存在は過去知っていたから、お前を迎え撃つために準備をした」

『へえ、面白いね』


 漆黒の狼に変じたテレスが応じる。


『僕のような存在が来ることを見越していたわけか……なら、どうするつもりだい?』


 語る間にも周囲の戦いが終わりを迎える。オーガ達はその数を減らしつつも悪魔達の迎撃に成功。残るはテレスだけ。


「――こうするんだよ」


 リチャルが声を発した瞬間、オーガ達が狼へと向かう。だが、


『無駄だよ』


 声と共にテレスが動く。両前足の鋭い爪――それを利用しオーガを一気に切り裂く。

 耐久力があるためか、オーガも一撃ではやられない。攻撃を当てる者もいたが、テレスにあまりダメージは無い様子。


 悪魔と異なり、こいつは別格らしい……リチャルはさらにオーガをけしかける。だが能力差攻撃はほとんど成功していない。むしろ数を減らすだけだ。何を考えている?


 何か別に策を仕込んでいるのか……そう思った時、変化が起きた。


 砦内にある建物の屋根とやぐら――伏せていたのかそうした場所から魔族を取り囲むように、突如コボルトが出現。しかも、その全てが弓を持っている。


『……ほう?』


 興味深そうにテレスが呟く。


『なるほど、伏せておいた兵力を出したか。けど、こんなもので――』


 おそらく、テレスは動こうとしたのだろう。だが、それは成功しなかった。なぜなら――


「オーガと戦っている間に、お前の足は封じさせてもらった」


 その言葉通り、魔族は動けない様子だった。これは意表を突かれたか、テレスも僅かに呻いた。


 おそらく『影の支配者』という魔物だ。これは魔族が出現する前から大陸に存在していた魔物で、名前とは裏腹にそれほど強くはない。しかしこいつはキャラの足元に到達すると『影縛り』という技を使い動けなくする能力を持っている。


 オーガに気を取られている間に、これを仕込んだのだろう……そして周囲にはコボルト。どうなるかは容易に想像がついた。


 次の瞬間、矢の雨が魔族へと降り注ぐ。その威力は如何ほどのものなのか。コボルトの持っている弓は見た目普通のもの。とはいえ、何かしら仕掛けをしている可能性は――そう考えた直後、矢が当たった。刹那、矢から突如炎が生じる。


 魔法の矢……しかし炎だけではない。当たった直後雷撃が弾けるものや、旋風が生じるものまである。様々な属性の矢が魔族へ直撃し……さすがの魔族もこれは痛手だったか、声を上げた。


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