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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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戦いの痕跡

 町などを赴くことなく真っ直ぐ目的地へ向かった結果、瘴気のない空気の綺麗な森へ辿り着いた。以前はそれこそ、魔法を使えない人が足を踏み入れることができないような場所だったが……、


「それなりに時間も経過しているし、元に戻っているみたいだな」

『魔王との戦いにおける後遺症はなし、ということだな』


 ボスがいた花畑にも訪れてみたが……特に異常はない。また魔物が発生していたら厄介だと思っていたけど、そういうことはなさそうだ。


「魔王との戦い……その痕跡は、消えつつあるってことなんだろうな」

『うむ、そこは間違いないだろう』


 ただ……と、俺は見るべきものは確認したので森を後にする。次に目指すのは、


「五大魔族レドラスの居城……だな」

『そういえば、居城そのものは残っているのか?』

「魔王城が存在していたように、建物は魔族達が建造したからな……ただ、その辺りの話は情報もないし調べてはいないけど」


 とりあえず、町で聞き込みをしてみるか……そう思いつつラトラスの森からほど近い町へ赴く。そこは森で遭遇したアルト達と共に辿り着いた場所だ。

 とりあえず酒場だろうか? 聞き込みもしたいし……そう思っていた時、俺は町中に見覚えのある人物を見つけた。


「おいおい……」

『どうした?』


 子ガルクが問い掛けてくるが、俺は無視してその人物の所へ走る。その人物は酒場に入ろうとしており、足音でこちらに気付いたため振り返る――


「……あれ、ルオンさん!?」


 それはアルトだった。向こうも向こうで驚いた様子であり、


「どうしたんだ? 何か用があって?」

「いや、これまでの旅を振り返ろうと思って色々と回ってみているんだけど……アルトはどうしてここへ?」

「ああ、それは……なんというか、魔王との戦いっていうのに深く関わったのはこの町の周辺だったからな」


 どうやら彼は、フィリと同じく始まりの場所を訪れた……酒場に入ると、ステラやイグノス、さらにキャルンもいた。そこで俺の登場にみんなが驚いた。


「まさかルオンさんが来るとはなあ……」

「俺としてはアルト達がいてビックリだけど……目的は済ませたのか?」

「いや、まだだ。今からレドラスの城へ行ってみようかと思って」

「俺と同じ目的だな……それじゃあ一緒に行こうか」


 アルト達は首肯する。ただ今日は時間的にも、ということで町で一泊することに。


「レドラスの居城については、何か情報が持っているか?」

「ああ、下調べはしてあるよ。城そのものは残ってるけど、さすがに誰も近づこうとしないらしい」


 まあ当然だな。城の外観からして、もぬけの殻であったとしてもまた魔物が飛び出してくるように思えてしまうし。


「ま、俺達も中に入ろうなんて気はないし、そんな大層なことをするつもりはないけどな」

「ちなみにフィリも似たようなことをしていたよ」

「そうなのか? なんというか、考えることは同じなんだな」


 アルト達は笑う……そこで俺は、


「……今更かもしれないが、確認させてくれ。星神との決戦……それに、参加するのか?」

「ああ、もちろんだ」


 アルトは力強い答えを行う。続いてステラが小さく頷いて同意を示す。

 残るはキャルンとイグノスだが……先に口を開いたのは、キャルンだった。


「正直、私が加わって役に立つのかなー、なんて思ったりもするけど」

「俺としては心強いよ」

「そう行ってもらえると嬉しいけど……ちゃんと役に立てるような訓練はしてきた。どこまでできるかわからないけど、頑張るよ」

「私も同じ気持ちです」


 続いてイグノスも口を開く。


「今まで以上の戦い……魔王を超える強大な存在とは、正直想像すらできないほどの敵です。しかし、それでも……知ってしまった以上、深く関わった以上、最後まで戦い続けるつもりです」

「……そっか」


 彼らの言葉に、強いられているような雰囲気はなかった。それこそ、命を失うかもしれない戦いだが、そうだとしても自分達の意思で決めたと、はっきり語れるような雰囲気だ。


「わかった。ならこの話題はここで終了……明日、一緒にレドラスの居城だった場所へ向かうとしよう」


 俺の言葉に一同は頷き……その日は町で一泊した。






 翌朝から俺達は旅を始め、特に何事もなく進んでいく。その道中で居城周辺の情報を漁ってみるが、結果から言うと瘴気なども発生せず、ただ城が鎮座しているだけらしい。

 人間の誰かが住み着くなんて可能性もあるわけだが、今のところはしていない……まあ、もし何十年経って異常がなかったら、その内観光名所にでもなるかもしれない。あれは魔族が侵略するために用意した居城だ、とかガイドさんとかが説明したりして。


 現在は魔王の脅威が去ったとはいえ、人々にはしかと胸の内に恐怖が刻まれているため、近寄らない……やがて、俺達は辿り着いた。目前に見えたのは瘴気や魔物の存在から恐怖の象徴でしかなかったが、今はただの抜け殻のようになった天へと伸びる城。


「おおー、何も変わっていないな」


 アルトが感想を述べる。確かに、数年経過したが外壁なども劣化していない様子。


「特殊な建材なのか? この辺りの気候は湿気も少ないから建物も傷みにくいけど……さすがにメンテナンスなしだったら、少しくらい壊れてもおかしくなさそうだが」

「少なくとも、外観に変化はないな」


 俺は目を凝らしレドラスの居城を眺め、コメントする。


「ちなみにアルト、入るのか?」

「いや、そのつもりはない……お宝でもあれば話は別だけど、国の人なんかが調べた後だろうし」

「そうだな……ふむ、瘴気もなくただそびえ立つだけだと、なんだか迫力はあるけど威圧感はないな」

「確かにね」


 キャルンは俺の言葉に応じつつ、真っ直ぐ城を見上げる。ここに初めて訪れた時のこと……それを思い出している様子だ。

 アルト達は、俺と出会って……その流れで五大魔族との戦いに挑んだ。結果的に魔族を倒して魔王を討つ力を得たのはソフィアではあったが……場合によっては彼が魔王を倒す存在になっていたかもしれない。今思えば、それは紙一重だっただろう。


 アルト達はそれぞれ、何かを考えるように城を見上げ続ける……俺はそれを黙って見守ることにする。風が流れ、森から葉擦れの音が聞こえ……ゆったりとした時間の後、やがてアルトが「行こうか」と呟き、城を後にしたのだった。

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