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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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終わった後

 思えば全てがゲーム通りのようでいて、大きく違っていたことばかりだった。俺がやったのは知識に基づいて魔王を倒すために動いていただけ。その実、この世界を救ったのはソフィアを始めとしたこの世界の人間だ。

 俺は確かに、力を手にした。結果的に世界を救うだけの力を得た。けれど、たぶんだが……もし俺がこんな力を手にしなくとも、ソフィア達の助けに入るだけでも、魔王との戦いには勝利できていたと思う。


 俺がやったのは、その過程を少しでも楽に……そして、犠牲になる人を救うために……と、ソフィアやサラと話していて思った。


「ねえ、ルオンとしては真実を知ってどう思った?」


 ふいにサラが問い掛けてくる。


「この世界の出来事は賢者が見た未来……その知識によるものだったと知って」

「そこについては、真実に触れたことでそうだったのか、と種明かしをされた気分だったよ。俺が選ばれたことについては何で、という部分はあったけど……前世は事故に遭遇して死んだんだ。色々と割り切ったし、ルオン=マディンとして全力で強くなろうと思った……星神へ戦いを挑まなければ、俺はこの世界のことをいつまでもゲームの中だと思っていたし、むしろ経緯を知って腑に落ちた感じもある」

「ふうん、そっか」

「何か言いたいことがあるのか?」

「いや、別に……ただ、不服だとか不満だと思っていたら、フォローの一つでもしようかなって思っただけ」

「気遣いありがたいけど、俺は平気だよ」


 例えばの話、何の前触れもなく召喚されたとかなら、多少なりとも未練はあったかもしれないけど……元の世界のことが気にならないと言えば嘘になるけど、戻ろうという意思はない。俺はこの世界でルオン=マディンとして生まれ、戦ったのだから。

「……戦いが終わったら」


 ふいに、サラが口を開く。


「この組織も解散、ってことでいいの?」

「そのつもり、なんだけど……」


 ソフィアとサラは訝しんだ。俺が引っかかる物言いをしたからだ。

 俺は話そうか少し迷ったのだが……やがて口を開いた。


「星神を倒した後のことについては、確認しなければいけないけれど……とある可能性がよぎっている」

「それは――」

「ルオン様の言いたいことはわかります」


 サラが口を開こうとした矢先、ソフィアが言った。


「星神を倒して、果たして本当に終わるのか、ということですね」


 彼女も察していたらしい……というより、星神という存在を知ったことで、疑問は浮かんでいたようだ。


「そうだ。星神という存在は、誰かが作為的に生み出しているわけじゃない。この世界、大地の上で暮らす生物達の魔力などが基になって、その集積によって生み出される。古代で世界を終わらせたように、脅威となる存在であり、また同時にこの世界が魔力という概念によって繁栄している証左でもある」


 星神の特性を考えれば、この世界に魔力がある限り、例え星神を打倒しても、それに類する存在が魔力の集積によって生み出されるだろう。

 あるいは、星神に関する文献が存在する以上、今度は誰かが星神に近しい存在を生み出すなんて可能性もゼロではない。


「星神というのはわかりやすい敵であり、俺達はそれを倒すために動いているけれど、それで終わりというわけでは、おそらくない」

「未来のことを考えると、同じような存在が出ないとも限らないですし、そもそも賢者様が見た未来は、その時の光景……なんて可能性もゼロではありませんね」


 ソフィアの指摘に俺は頷く……のだが、問題はどう解決すればいいのかということ。

 星神が生まれるきっけかは魔力だ。そしてこの世界には魔力がありふれたものであり、また同時になくてはならない存在ではある。とすれば、星神に類する存在が生まれるのは、確実と言えるかもしれない。


 では、どうするのか……答えのない難題であるのは間違いない。でも、


「……単純に星神を打倒すればいいという話でもない。よって、俺が一生をかけても届かない問題かもしれない」


 この世界の魔力そのものを相手にする戦い……俺の強さは魔力が源である以上、切っても切れない関係であるのは事実。しかし、


「でも、それを果たすのが俺の役目……なのかもしれない。まあ、このことについては後の世代に託すというのもありかもしれないけどさ」

「ま、そうだね」


 と、サラはどこか楽観的に呟いた。


「それって同じような存在が生まれるのって、何百年も後の話でしょ?」

「たぶん、な」

「だったらルオンが気にする必要はないというか、そこまでする必要ある? って感じだけど」

「そうやって言われるのも承知の上だけどな……まあ、すぐに対処しなければいけない問題というわけでもない。星神との戦いが終わったら……ゆっくり取り組んでいけばいいさ」


 そうは言うものの、終わらない戦いになるのは間違いない……英雄と呼ばれ、様々な肩書きを背負ってしまった俺が、星神を打倒しさらに次へ進めるのか……ソフィアと共に歩むのであれば、相応の人生が待っているだろうし、やらなければならないことは多数あるだろう。

 その中で、俺は……何気なくソフィアを見ると、彼女は小さく頷いていた。付き従うってことなんだろう。


 ただ、これ以上ソフィアを付き合わせるのは……なんて言ったら、怒るんだろうな。


「……ま、これ以上考えるのは、戦いが終わってからでいい」


 そう俺は話をまとめた。


「星神を倒した後、検証すべきことはこれ一つじゃないからな……さて、他に聞きたいことはあるか? 今のうちに疑問があるのなら――」

「では、私から」


 その言葉を遮るように、ソフィアが口を開く……そうして和やかな談笑が進んでいくこととなった。






 ――そうして、俺はバールクス王国の王城内で、ゆっくりと過ごした。その日以降、ソフィアは国王の下へ赴き、サラは仕事に戻った。

 ロミルダはどうやらソフィアと共にいるみたいだし、リチャルやオルディアは各々やりたいこと、すべきことを静かに続けている。


 そうした中で俺は、結局外に出ると決めた。色々な場所を見て回るのは、今のタイミングが良いだろうという判断だった。

 よって数日後――俺は子ガルクと共に城を出る……まずは、と目的地を定め、魔法を使い王都を離れたのだった。


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