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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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同じ領域

 俺とソフィアはアランがどのように動いたとしても、対応できるような体勢に入っていた……が、ここで予想外のことが起きる。

 彼の体が地を蹴ると同時――アランは俺の目の前にいた。


 速い、と感じた直後剣を振り応戦した。俺と彼の剣が交錯し、魔力が弾ける。激突した剣の感触は、普通の武器とやり合っているようなもの。星神のまがい物、ということで魔力の塊かと思っていたが、きちんと物質として構築されている。

 すかさず反撃に転じ、俺は持てる限りの速度で一閃した。アランはそれを避けなかった。というより、速すぎて対応できなかったと考えるべきだ。


 剣がアランの腹部に入る。手応えはあった。魔物などを斬る時と同様に、手に感触が伝わってくる。

 だが、相手は無傷だった。攻撃が通用しなかったというより、斬ってダメージを与えたが見た目に反映されない、という感じだった。


「はっ!」


 そこへソフィアが追撃を仕掛けた。俺の剣によって体勢を崩したアランは彼女の剣を避けることができず……それもまた直撃。二つの剣戟をまともに食らい、アランは大きく後退した。

 とはいえ……見た目の変化はない。魔力が減っているのは事実だが、どうやら一発二発という攻撃で終わってはくれないようだ。


『……は』


 そしてアランは、


『――はははははは!』


 突然、笑い始めた。


『さすが、と言っておこうか! このまま普通に戦っても、俺は剣一つ当てられないな!』


 俺はアランの姿を注視しつつ、剣を構え直す。先ほどの動き……突如間近に来たことを踏まえれば、その身体能力は間違いなく人のレベルは超えている。

 よって、一時も油断はできない……ここでアランの笑いが止まった。無表情となり、情緒が不安定という雰囲気を出すが……アランはもう人間じゃない。どういう思考回路が働いているかもわからない以上、言動などに動きを左右されるのは、相手の思うつぼだろう。


 だからこちらは、淡々と切り結ぶだけ……そう思った矢先、再びアランが動いた。

 その攻防も、一瞬だった。アランが間近まで迫った時、俺は即座に剣を引き相手の斬撃を防いだ。そこへ横からソフィアが攻撃。横っ腹にまともに入ったのだが、それでもアランは動じない。


 とはいえ、確実に魔力は減っている。ただ魔力量が膨大であるため、こんな風に戦うだけでどれだけ削っているのか……そこについては不明だった。

 しかし、こちらは長期戦に持ち込めるだけの余裕はある……! 俺とソフィアはなおも剣を交える。基本俺が中心だが、時折鋭い剣戟によって反撃を受けることがある。


 そこで、ソフィアのカバーが入る……圧倒的な能力によるアランの剣。それは俺でさえ時折剣を差し込めるほどの能力だが、ソフィアがいるからこそ、対抗できる。

 本当なら、まがい物である以上は俺一人で対処したいところだが……考える間にさらに刃が迫る。それを俺は防ぎきって、相手に剣を叩き込んだ。


 確実に魔力は減っている。まだ総量も把握していないため、これがどれほど効力のあるものなのかわからないが……と、ここでソフィアが前に出た。するとアランは、


「邪魔だ!」


 声を発し、彼女へ剣を差し向ける――それは紛れもなく、常人の領域を遙かに超える、まさしく神域の剣。アラン自身の能力は例え転生者といってもそこまで高くはなかった。だからこそ、おそらく星神のまがい物となったことで、得られた力だとは思うのだが、


「ふっ!」


 だがソフィアは真正面から応じた。彼女の両腕に魔力が大いに宿り、アランの剣に追随する。直後、凄まじい金属音が周囲にこだました。

 それが幾重にも重なり、耳が痛くなるほどの――そして、火花さえ散るほどの攻防だった。


 瞬きする余裕すらない、高速の剣戟が、ソフィアとアランの間で飛び交った。そしてそれは、彼女の剣がまさしく神域――転生者と同じ領域に達したことを意味していた。

 彼女の剣がアランの剣を完璧に防ぎ、なおかつ反撃する糸口すら見つけて刃を入れる。それは先ほど俺が叩き込んだものと比べて効果は微々たるもの……だが、これがどういう意味を持っているのか、俺はしかと理解していた。


 そしてどうやらそれはアランにも伝わったらしい。剣を交わし、ソフィアを突破できない状況を見て、彼は叫ぶ。


『馬鹿な……転生者でもない分際で!』


 彼女と打ち合っている間に俺はアランの背後に回った。彼としては強引にソフィアを弾き飛ばして俺との一騎打ちに持ち込みたかったはずだ。けれど、目論見は外れ逆にソフィアに押されている……これは俺にとって絶好の好機だった。


 俺は持ちうる限りの魔力を込めて、必殺の剣を放った。鍛錬により淀みなく収束した俺の一撃は見事アランの背中へと入り、


『が、あっ……!』


 今度こそ、彼は声を上げる。同時、彼の剣が緩むと共に、ソフィアの剣は殺到する!


 それはシルヴィの『一刹那』さえ、大きく凌駕する剣舞だった。目に留まらない速さで叩き込まれた剣の一撃一撃が、上級クラスの単発技を超えた威力になっていることだろう。星神の力を持った存在でさえも、彼女は――考えている間にアランの体が吹き飛ばされた。体勢を崩して地面を滑り、土煙を上げて倒れ伏す。


 ソフィアは攻防を終えて呼吸を整える。息は上がっていないが、呼吸法などを変えて体を活性化させていたのだろう。


「大丈夫か?」

「はい」


 俺の言葉に対しても明瞭にソフィアは応じる。その間に、アランはゆっくりと起き上がった。

 ……少し距離を置いているが、確実に魔力が減っている。特に最後の俺とソフィアの攻撃が、相当な痛手になっているようだった。


『これが、俺達を討つための力か』

「まだまだ、足りないけどな」


 俺はそう告げると剣を構え直した。


「こっちには、策はまだあるし、余力もある……先に力尽きるのはそちらだ」

『舐められたものだな……ああ、確かにこのままでは無理だ。しかしだ、まさか俺がもう打つ手なし、などと思っているわけではあるまい?』


 もちろん、二の矢、三の矢と何かを持っている……そういう推測はしている。だから俺とソフィアはさらに魔力を高め、さらなる攻撃の準備に入った。


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