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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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破壊と再生

 俺はふと目を開ける。夢から覚めた時は夜を迎えていた。

 どこからか談笑する声が聞こえてくる。夕食時か、と思いながら俺は先ほど見た光景を思い返し……立ち上がる。


 食堂へ向かうと、仲間達が全員集合していた。俺の登場に湧き立ち、良かったと誰もが口を開く。

 宴会に近い雰囲気であったため、俺は夢に見たことについては伏せて、輪の中へ入った。その日は穏やかに……いやまあ、色々と騒いだので全然穏やかではなかったけど、とにかく何事もなく過ごすこととなった。


 そうして翌日――俺とソフィアは一同を代表して王城へ赴く。エメナ王女と会議室で顔を合わせ、今後のことを協議する。


「町の方は、ひとまず大丈夫です。懸念していたローデンの仕込みや罠についても、現時点では作動していませんし、調査もある程度できました。おそらくは問題ないかと」

「ローデンは目を覚ましたか?」


 俺の問い掛けにエメナは頷き、


「場合によっては情報も提供すると」

「ずいぶんと物わかりがいいな」

「何か思うところがあったのでしょうか……」


 エメナ王女はまだ何かある、と考えている様子。実際、捕まることも想定の内、などと疑ってもおかしくはない。

 ただ、俺は違うと思う。戦力を全て吐くまで……しかも切り札まで使おうとしていたわけだから――


「……エメナ王女、頼みがある」

「どうしましたか?」

「一度、ローデンと会わせて欲しい。尋問というわけじゃないが……」


 無理を承知で頼んでみると、エメナ王女は頷いた。


「わかりました。準備します」

「いいのか?」

「ルオン様としても、情報は得たいでしょうし」

「ありがとう……そちらが欲する情報についても教えてくれ。ついでに聞いてくるさ」


 そうして俺はエメナ王女から色々聞き……ローデンと面会するため、動くこととなった。






 俺がローデンと話し合いをすることになった部屋は、城内の地下に存在する一室。牢屋に近しい場所なのだが……まずその牢屋自体に魔力無効化などを付与しており、魔法の行使を防いでいる。


 彼以外の転生者も牢屋に入っているわけだが、魔法が使えないよう、町中で発動したものと比べて遙かに強力な無効化の術式が構築されている。いずれ、彼らはしかるべき場所へ送られることになるのだろうけど……それまでは魔法を封じ、捕らえておくというわけだ。


 で、一室には俺とローデンだけ……さすがに星神云々について聞かれたくない話が多いし、エメナ王女の配慮である。もっとも、当のローデンは魔力無効化による手錠まではめているため、彼としては動くのも大変そうだ。

 当の彼はずいぶんとおとなしい。部屋の中央にあるテーブル……そこにある椅子に座らされている彼は、俺を見て小さく息をついた。


「敗残者に何の用だ?」

「情報を提供するって聞いたんだが、本当か?」

「別に構わない。そもそも、事情を知らない人間が聞けば荒唐無稽な話だが」


 まあ、確かにと対面の椅子に座りながら思う。この世界はいずれ崩壊する、などと言われてはいそうですかと頷く人間はいない。


「それに、負けた人間である以上、そちらに託すのが役目だろう」

「……星神を討つために、か」

「そちらがどういうやり方で実行するのかは知らないが、勝てるかどうか楽しみに待っている」


 無表情でそう語る……言外に無理だろうが、と言っているようにも思えた。


「……なら、質問だ。お前が作成した星神の縮小版……あれについて教えてくれ」

「破壊するだけなら、単純な攻撃でなんとかなるぞ」

「理論的な分野だよ。あれをどうやって作成したか」


 ……ローデンは少し沈黙した後、語り始めた。俺はそれを聞いてメモをとっていく。

 正直、専門的な内容についてはこちらとしてはわからないのだが……ガルク達にメモを渡せば、解明はしてくれるだろう。


 一通り彼は話し、俺は記録を終えると、今度は別の質問を行う。


「星神に遭遇したことはあるか?」

「何度か。とはいえ、あくまで干渉したのは向こうの興味本位だ」

「俺と同じ……か」

「そちらも遭遇したことが?」

「あるよ。もっとも、俺の目的を知りながら事情をペラペラ喋るくらいだが……あんたの目的についても語っていたぞ」

「……星神のやりそうなことだ」


 ローデンが呟く。ここで俺は息をつき、

「あんたは多数の仲間を率いて王都を襲撃した。俺達がいなければ作戦は成功していただろう。その中で問うが……もしこの国の騒動がシナリオ通りだとしたら、密かに介入して星神を復活させていた、ということだな?」

「そうだ」

「なら星神降臨から、世界を壊して力を得る……その後、力を得た者達同士で争いが始まるんじゃないか? 全員が全員、あんたのような目的を携えていたわけじゃないだろ?」

「そこについては、全てが終わった後で改めて考えるつもりだった。世界の創生を成す過程で敵となるなら、倒す。もし協調できるなら、例えばそれぞれが思い思いの世界を作ればいい」

「……なるほど、な。正直、目的を達成したとしても良い未来を迎えられるとは思えないな」

「身内同士で殺し合う、というわけか?」

「力を得た人間が、どういう道筋を辿るのか……誰もが世界のために尽くそうなんて考えていないのは確かだからな」

「それでも、やらなければならなかった。世界が生き残るには、これしかなかった」


 ローデンは言う。あえて壊し、再生させる。当然それで世界が元通りになるわけではない。けれど、少なくとも人類が生き残る手段の一つではある。


「……本当に、勝てると思っているのか?」


 ローデンが問い掛けてくる。こちらの目を真っ直ぐ見て、疑うように質問した。


「正直なところ、わからないとしか答えようがない」


 それに対し俺は、肩をすくめながら答えた。


「ただ、そうだな……こういう言い方は首を傾げるかもしれないが、俺は……いや、俺達は星神と戦う資格を得た。そう自負している」


 その言葉に対し、ローデンは沈黙した。ただこちらが本気なのだと……それだけの力を得ているのだという認識はしたらしく、彼は小さく頷いた。


「……勝利するために、こちらの質問にさらに答えてもらえないか?」


 その言葉に、ローデンはまたも頷く……そうして、俺はひたすら質問を重ねていった。


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