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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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転生者と連携

 次で……戦況を優位に進めているのは事実だが、現状オルディア達がベルハを仕留めるような手段を構築できていないのも事実。しかし、言葉から考えると現在包囲している状況……それにより、倒そうと考えているらしい。

 では、どのように……こちらが考える間にオルディアがベルハへ迫る。予備動作はほとんどなく、瞬きするほどの時間で間合いを詰め、ベルハへ一閃した。


 しかし、相手は魔力を発している転生者……オルディアの剣戟に応じ、見事防いでみせる。ここまでは先ほどと同じような展開だが――オルディアは後退せず、そのまま押し通した。

 傍目からはかなり無謀な行動にも見えるが……ここで他の仲間が援護に向かう。先んじて剣を振ったのはベルハの右側にいたシルヴィ。その斬撃は恐るべき速度であり、彼女が動いたと思った瞬間には、刃がベルハへと叩き込まれていた。


「ちっ……!」


 舌打ちしながらベルハは選択に迫られる。攻めるオルディアをいなすか、先にシルヴィに対処するか――それは一瞬の躊躇。数秒にも満たない時間だが、第三の攻撃が届くだけの隙となった。


 続けざまにベルハの左にいたフィリの剣が入る。これでベルハの動きが完全に止まる。転生者かつ、魔力無効化においても魔力を噴出できる能力は驚嘆に値するが、それでも多数に一人では隙も生じる――もし俺が同じシチュエーションならば、それでもはね除けていただろう。つまり、ガルクの言う通り俺には及ばない。

 とはいえ、一瞬のミスが状況を逆転させるのは間違いなく、次の攻撃は……コーリだ。背後からの斬撃。それはしかと背中へ叩き込まれ……ベルハの体が大きく揺らいだ。どうやら背骨を狙ったらしく、その衝撃が体の動きを止めた。


 だが、これでも――と、そこへクウザの杖が、ベルハの額に触れた。


「悪いな、転生者」


 その脳天へ、雷撃が叩き込まれた。彼からすれば目の前で、光が弾け飛んだことだろう。魔力による強化を維持しているため、ダメージはそれほどないだろうけど……効いたのは間違いないらしく、完全に体が固まった。


「――ぐ」


 小さな呻き。とはいえまだベルハは倒れていない。剣をなおも握りしめ、反撃に転じようと動こうとして――彼の懐へ飛び込む存在が。ロミルダだ。


「いけっ!」


 クウザが小さく声を上げる。直後、ロミルダの右手に魔力が集まる。次いでそれを突き出し、ベルハの胸元に触れる。

 だが、まだ魔力強化による防御は維持したまま――そこに援護したのはカティだった。ロミルダが攻撃を行う寸前、握られた短剣がベルハの背中へと突き刺さる。それ自体にダメージはないはずだが……何か魔法を仕込んでいたのか、ベルハを包む魔力が大きく揺らぐ。


 それは間違いなく、最大の隙……ロミルダが魔法を行使した。光が生まれたのは一瞬。それがベルハの体に吸い込まれ。


「……か、は」


 短く声を発した後、彼は崩れ落ちるように倒れ伏した。


「……倒した、か」


 オルディアは呟き、ベルハの様子を窺う。相手はピクリとも動かず、気を失っていた。


「転生者との戦闘……とはいえ、この人数だ。どうにか勝てたというのが、本音だな」


 ――人数による押し込みでどうにか強引に倒しきったという感じなのは間違いない。ただ、使い魔を通して観察していた俺としては、別に思うことがあった。


「ソフィア、ギリギリの戦いであったのは間違いないようだけど」

「はい」

「連携については十分すぎる……しかも、仲間達は全員それぞれの役割を認識していた」

「そうですね。皆さんはそれぞれ、仲間の能力について把握した上で仕掛けました」


 オルディア達が動きを止め、クウザとカティでさらに追い打ち。そしてロミルダの魔法でトドメ……と、誰がどういう役目をするのか、最初からわかっていたような動きだった。


「戦いの中で、有効打になるのはロミルダの魔法だけと確信し、接近できるだけの隙を作るべく動いた……ということですね」

「剣と魔法……魔力無効化の状況下とはいえ、それを駆使して転生者を止めた。少しでも作戦が崩れればまずいことになっていたかもしれないけど……安定感はあったな」


 振り返れば、仲間の動きは理路整然としていた。迷いがなく、何をどうすればいいかわかっていた。おそらく戦場にいた仲間達は全員、魔力を噴出したベルハの能力を察し、どれほどの力であれば攻撃が通用するのかを、戦いの中で悟ったのだろ。

 得られた情報を基に、どうすればいいかを判断して実行に移した……口で言うのは簡単だが、個々の能力が高くなければ厳しいし、人数が多ければ多いほど作戦は複雑化する。ロミルダが魔法を行使するまでに仲間達が仕掛けていたわけだが、どれか一つでも手順を誤ればどうなっていたか……とはいえ、それをこなすだけの能力を身につけていた、ということだろうな。


 もしベルハが予想外の動きを見せたとしても、対応できるだけの余力はあっただろう……と、ここで俺は一つ疑問が。


「倒したのはいいが、捕まえるのは大変じゃないか?」

『そこについては策がある』


 答えたのはガルク。と、ここで複数の騎士が近寄ってきた。ベルハを確保する要員だろう。


『魔力噴出の度合いからして、現状の魔力無効化に加えて魔法を封じる処置を施せば、おそらく大丈夫だ』

「二重の封印ってことか……問題は、確保して捕らえる道中で敵と遭遇することだけど――」


 俺は使い魔で町全体を観察。他の場所に待機する仲間達は、順調に敵を倒している。アルト達は別所へ赴き操られた冒険者を撃破。リーゼやエイナについても問題ない。

 他の場所に待機している仲間達については、そもそも戦闘になっていないが……どこが狙われるかわからない以上、警戒は緩められない。現状の態勢のまま、ローデンを探すべきだろう。


「……転生者がいることはわかった。敵としても切り札だし、どうやら役目があるようだから表だって動きたくはない」


 俺はそう言いつつ、決断した。


「ソフィア、ここは任せていいか?」

「はい……ルオン様自らが、ということですね」

「ああ。ベルハが倒れたことで敵も次の手を打ってくる。もしそれが転生者を用いた何かであるなら……こちらも相応の対処をしよう」

『ここは任せておけ』


 ガルクが言う。俺は頷き――町へ向かうべく、部屋を出た。


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