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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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想定した敵

 ベルハは剣を防がれたことで、ひとまず後退を選択した。オルディアの思わぬ反撃……自分の剣が完璧防がれるとは、と一時驚きもしたが、すぐさま表情を戻している。


『剣の技量面については、劣っているようだ』


 そしてガルクは断定した。


『力の多寡も、観察していて理解できるようになった。魔力無効化を打破できるだけの力は所持しているが、根本の力はルオン殿と比較しても下だな』

「そこまでわかるのか……ひとまず技術でいなせるのであれば、対応は可能か」

『うむ……他の転生者がいるとして、同様の能力であれば各個撃破すれば十分対処は可能か』

「とはいえ、今の相手はこちらは多人数で向こうは一人だ……複数人で来られたらまずいぞ」

『そうだな。あちらは魔力を噴出するほどだ。さすがに単独で迎え撃つのは難しいだろう』


 ガルクが話す間に今度はオルディアが前に出た。突撃したとしても、さすがに相手の膂力には適わない。どうするつもりか。

 三度目の激突。一時せめぎ合っていたが、やはりベルハが力で押し込む……が、今度は少し違った。


 受け流した勢いを利用し、オルディアがベルハの体へ斬撃を叩き込んだ。すると相手は……最初、何をされたのか理解できないような顔をしたが、痛みが生まれたか顔を歪ませ、オルディアから距離を置く。

 とはいえ、背後にはフィリがいる……ここで彼もまた動いた。俊敏な動作で、完璧な一撃を見舞う――それはベルハの背中へと叩き込まれ、さらに相手の顔が苦痛に歪む。


「くっ……!」


 ダメージがゼロとはいかない……出血どころか衣服が破れているわけではないため、おそらく衝撃が抜けきらず体の内側に溜まっている。ただこれでは勝負を決めることは難しい。幾度となく剣を叩き込むか、それとも相手の防御を上回る何かがなければいけない。


「……ソフィア」

「はい」


 俺は先ほど語ろうとしていたことを思い出し、彼女へ声を掛けた。


「さっき、俺に言っていないことがあると……」

「そうですね。端的に言えば、リーゼ姉さんを含め、今回戦列に加わる皆様は、鍛錬……それこそ、転生者相手であっても戦えるようにと、想定していました」

「転生者相手にも……でもそれは――」

「もちろん、魔力無効化という前提がない状態の話になりますが、鍛錬により今回の戦いでも応用ができるといったところかと」

「……俺もそうだけど、仲間もずいぶん無茶な修行をしているな」

『今更だな』


 と、ガルクは笑いながら話す。


『そうでなければ、世界を救うだけの力には足らなかった……というわけだ』

「よくみんな、ついてこれたな……」

「それはひとえに、ルオン様という存在がいたからこそです」

「俺が?」


 聞き返すと、ソフィアは深々と頷いた。


「誰も口にしていませんが、思うことは一緒です……すなわち、ルオン様と対等に戦えるようになりたいと。認めてもらいたいとか、そういう話ではありません。ただ単純に、強さを極めたルオン様という明確な指標があったために、そこへ到達してみたいという願望が生まれたわけです」

『ルオン殿の戦いぶりは、それこそ他者を寄せ付けない圧倒されるものばかりだ』


 と、ガルクは俺へと話す。


『無論、ルオン殿だけでは対処しきれない事態も多数あった。魔王との戦いについては典型だな。賢者の血筋でなければどうにもならなかったが、その対策としてルオン殿が自らの力で血筋を導くという選択をした』

「あの時は、それしか思い浮かばなかったからな……それと、俺は強くなりたいというよりは、死なないため、世界が無茶苦茶にならないよう強さを得たって感じだからなあ」

『だからこそ、という面もある』


 ガルクの言葉にソフィアもまた頷く。どういうことかと首を傾げると、ガルクはさらに続ける。


『絶対的な強さを持っていながら、それはあくまで世界のため……あるいは他者のために使っている。今も、星神という脅威を倒すために……前を向き進み続けているルオン殿に対し、自分もまたその領域へ……と、仲間達が思ったというわけだ』

「そんな大層な話なのか――」

「はい」


 大真面目にソフィアが言う。俺はなんだか照れくさく思いつつ……戦況を確認する。

 フィリに続き、今度はシルヴィの剣が入った。勝負を決める剣戟にはなっていないが、苦痛を感じているようだからベルハには間違いなく効いている。とはいえ、その全てが決定打にはなり得ていない。


「ただ、現状ではまだ……」

『うむ、刃を届かせるにはもう一手が必要だ』


 ガルクが言う。そして現状、圧倒的に有利ではあるが誰かが倒れたら……それこそ、オルディアやフィリが攻撃を食らってしまえば勝負はわからなくなる。


 仮に、魔力無効化という環境でない場合はどうなるのか……疑問に感じつつ、俺は戦いの推移を見守る。ベルハは幾度となく剣を受けたことで苛立ったか、一度距離を置こうとした。包囲を脱し、仕切り直す……とはいえオルディア達からすれば、現状を維持し続けたい。


 ただ膂力も速力もベルハが上であり、技術だけでは包囲を維持するのは……と、ここでロミルダが魔法を放った。魔力無効化の空間において唯一、遠距離攻撃ができる彼女。放たれた光弾は威力についてはベルハに傷を負わせるものではないが、それでも彼は当たらないようにと回避に転じた。


 それは明確に隙となる。即座にオルディアとシルヴィが踏み込んだ。包囲を狭め、脱出する機会を潰す。

 ベルハは苛立った顔を見せながら、それでもなお引き下がろうと動くのだが……オルディアの剣が先に入る。しかしそれでもまだ決定打にはならない。


 無理に攻め立てているため、反撃を受ければまずいか……そう思っているとシルヴィもまた仕掛けた。さすがに連撃では防御を突破できないと悟ったか、たった一撃……けれどそれは、これまで以上に鋭く、強烈な一撃だった。

 彼女の刃もまたベルハへ直撃し、二人の剣がとうとうベルハの足を浮かせ吹き飛ばした。いかに魔力を高めているにしろ、足が地面から離れればどうすることもできなくなる……ベルハは地面に激突。とはいえダメージはほとんどなく、すぐさま態勢を立て直す。


 その時点では既に再度仲間達が包囲しており……そこでオルディアが発した。


「次で――終わらせる」


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