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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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操る者

 疑問はあるが、とにかく倒さなければ始まらない――双子の動きは先ほどと変わっていないのだが、その魔力に変化があった。冒険者を操っていたのと同じように、どうやら魔力を操作して無理矢理力を引き出している……外部に魔力が露出すれば無効化されてしまうのだが、それにも構わず力を引き出してくる。

 この場合、非常に消耗は激しいが一応体の内に魔力を循環させるよりは能力が向上するはず……とはいえ、消費が激しいため間違いなく長い時間はもたない。敵がどういう意図で双子の剣士を操る能力を授けたのか不明だが、少なくとも長時間戦うような想定はしていない。


 というよりこれは、完全な捨て石。


「ふっ!」


 シルヴィは双子の片割れが放った剣を防いで弾き飛ばした。一方でクウザもまた杖で相手の攻撃をいなす。

 魔力を多大に消費することで、短時間ではあるがシルヴィ達に食らいつくだけの力を得たようだ。それがわかったため、二人は警戒し自ら仕掛けることはない。というより、倒したら今度は罠が……というのを、考慮しているのか。


「クウザ、何か仕掛けはありそうか?」

「今、調べている……魔力を放出しているが、ひとまず罠の類いはなさそうだ」

「なら、さっさと片付けるべきだな」


 シルヴィは告げると、一歩前に出た。どうやら彼女が二人を食い止める……そんな算段らしい。


「クウザ、そちらは魔法を使って倒せ」

「了解」


 クウザが一歩退いた途端、双子の剣士は同時にシルヴィへと走り出す。そして綺麗な軌道を描き、刃がきらめく。

 それに対しシルヴィは――内にある魔力を高め、剣を薙いだ。それはどうやら『一刹那』とまではいかないにしろ、連撃系の技。目にも留まらない速度で繰り出される剣戟により、双子の刃は完全に止まった。


 いくら魔力を無理矢理放出して強化しても、シルヴィには及ばない。まして二対一であっても……彼女の剣により、双子の足もまた止まった。そこへ、クウザが進み出て片方へ杖をかざした。

 トン、と相手の腹部に杖の先端を押しつける。何をするのか――と、もし相手が正気であったなら疑問に思ったことだろう。


 次の瞬間、バチッと雷撃魔法を使った時のような音がした。それによって双子の剣士の片割れはビクリと体を震わせ、ゆっくりと倒れ伏した。


「よし、いけた」


 そして残る片方をシルヴィは間合いを詰めて剣を薙ぐ。こうなっては相手も為す術がない。あっさりと斬撃を受け、倒れ伏した。


「ふう、立ち上がった時は驚いたが……」

「怪我なく対処できて何よりだ」

「クウザ、そちらも上手くいったようだな」

「ああ。この環境下でも、とりあえず魔法が使えた」


 ――端的に言えば、ゼロ距離で相手へ無詠唱魔法を使った。魔力無効化の効果は大気に触れると発動する。ならば杖を押しつけ、大気を介さずして魔法を放てば……というのが大雑把な理屈だ。

 とはいえ、そんな対策をしても無効化するくらいにこの魔法は強固なもの……しかし無効化の度合いがゼロ距離ならば通常よりも低くなる。それによって、クウザは魔法が使えたというわけだ。


「さて、ボク達はどうする?」


 シルヴィが視線を変える。オルディア達と戦っていた者達を拘束した騎士が、彼女達の近くへとやってきていた。こちらも合わせて捕縛するというわけだ。


「オルディア達と合流するか?」

「そうした方がいいな……とはいえ、公園の外に出るのはまずいな。そこそこの戦力をここに投入したのを考えると、まだ守るべきだな」


 言いながらクウザは空を見上げる……そこには俺が展開している使い魔が。


「さっきの双子……突然起き上がったことを含め、解明はそっちに任せるぞ」


 使い魔越しに言われ、俺は小さく頷いた。






「さて、ガルク……どう見る?」

『双子に関する異変だが、可能性としては二つある』


 ガルクはこれまでの状況を踏まえ、語り始める。


「一つは道具によって操った人間の中で、優れた人物をスカウトした。しかし道具による操作能力についてはもたせており、それが強制的に発動した」

「確かにそれなら説明はつくけど……」

『うむ、ルオン殿が考えている通りだ。行方不明者の中に双子はいなかったはずだな?』


 問い掛けに俺は小さく頷いた。


「ああ。名前を照らし合わせてもそれらしい人物は出てこない」

『ならば彼らはローデンの配下であることは確定だ。ならばもう一つの可能性だな』

「それは?」

『元々、ローデンの配下達も冒険者達と同じように道具を所持しており、何かあれば発動するようになっていた……とはいえそれでは、他の場所で倒れ伏した戦士が動かない理由にはならない』

「捕まってからわざと……と、考えるのもさすがになしか」


 俺は拘束される戦士達を見る。彼らを捕縛している物は、古代の技術を応用したものだ。星神対策の一つであり、また聖王国が得た技術の一つでもある。


「魔力無効化がある状況で、あの拘束を振りほどくのは無理だ」

『うむ。ならば考えられるのは――』

「戦況がまずいと悟り、誰かが道具を経由して双子を操った」


 と、ソフィアが口を開いた。


「魔力無効化については、例えば道具に備わった機能を発動させる、とかそういう簡単な魔力であれば飛ばすこともできるかと」

「ローデンの配下であるなら、冒険者と同じ道具を持っているなんてむしろ当然かもしれない。で、敵としては妨害が入っているため、それを打開するべく能力を発動させ、シルヴィ達を倒そうとした……か。うん、こっちの方が可能性は高そうだ」

「問題はそれを指示した相手ですね」

「ああ。戦況を見ていないと、そのようにした判断がつかない……どこかで、戦いの動向を監視している」

『使い魔による観察はどうだ?』


 ガルクの問いに俺は首を左右に振る。


「使い魔利用による情報取得は想定していたから、俺は念入りに調べているけど……少なくとも、これまで俺が飛ばしている以外の使い魔はいないな」

『星神の技術を使えば、使い魔は利用できるにしろ……動いているならばこちらも気づくはずだが……』


 敵もまた戦場を観察している。できればそれを破壊したところだが……俺は戦場を観察しつつ、次の一手を考え始めた。


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