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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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達人級

「来たか」


 ローデンの一味が到達した所にいたのは、オルディア……彼に加えてロミルダが近くにいた。


「妙な取り合わせだな」


 告げた人物は、初老の男性……細身で腰に剣を差した白髪の男性。リーゼ達が相対していたガディアと比べればその体つきは貧相にも見えてしまうが……物腰とか動きとか、そういうところで普通の剣士でないことは明瞭にわかる。


「剣士に子供か……まあこちらの魔法が通用していない時点で、相当な使い手であることはわかるぞ」


 男は後方にいる冒険者達――いや、剣士達へ手を振る。よくよく見れば彼らは全員が一様に先頭に立つ男性の装備に近しい……弟子とか、そういう感じだろうか?


「ローデンの手下だな?」


 オルディアが確認のために問い掛けると、男性は笑みを浮かべる。


「事情は把握済みか。いいだろう……エズワ=ブローデルだ」

「……なぜ名を名乗る?」


 オルディアは訝しげに尋ねる。それに対し男性――エズワは、


「なあに、儂らが本気を出すためには、少しばかり手順が必要でな」


 剣を静かに抜く。対するオルディアは……魔力無効化においても今のオルディアなら一歩で踏み込める程度の距離なのだが、攻撃はしない。それほどまでに、エズワは隙がない。

 達人レベルってことか……他の場所とは異なり、公園に彼が訪れたということは、何かしら意味があるのだろうか?


「名乗ることについて、そちらが気にする必要性はない……ああ、そちらは名乗らなくていいぞ。どうせ忘れる」


 オルディアは黙ったまま剣を抜いた。次いで後方にいるロミルダも構える。彼女については護身術の類いを教えたとソフィアが以前言っていた。とはいえ、基本的には竜族の力を結集した武具を用いての攻撃が主体。魔力無効化という環境において、彼女は足手まといになるかもしれないと考えるところだが……公園に彼女がいるのはもちろん理由がある。


「……先ほど、話し合った通りに」


 オルディアはロミルダへ小さく呟く。彼女はコクリと頷くと、一歩引き下がった。


「一人で戦うつもりか?」


 エズワが問う。次いで彼の周囲にいた剣士が前に出る。


「取り巻きは、弟子か?」

「おう、その通りだ」

「……なぜ弟子を従えローデンに手を貸す?」

「大いなる目的のためだ」


 またその台詞か……ローデンがどういうやり方で勧誘したのかわからないが、少なくとも説得などが通用しない相手であることは明瞭にわかる。


「儂は忙しいからな。これから予定も立て込んでいる故、さっさと終わらせてもらうぞ」


 エズワが告げると、弟子達がさらに前へ出る……弟子の人数は五人。先ほどまでのように冒険者を操ってというわけではないため、潜在能力以上の力を出すなんてことはないだろうけど、厄介さは間違いなく上だ。

 一方でオルディアは二振りの剣を構えつつ、相手を鋭く見据える。どう戦うつもりなのか。


 エズワ達が徐々に近づいていく。交戦までそう時間がない……思っていた矢先、弟子の一人がオルディアへ猛然と駆けた。

 鋭い動きであり、操られている冒険者と遜色のないもの。あれが無理矢理引き出したものであるのに対し、彼らは自らの意思で行動している。それを踏まえれば、どちらがより強力なのかは明白だった。


 一気に間合いを詰められ、オルディアは――動いていなかった彼もまた反応した。しかし弟子の一人が剣を振り下ろした段階。普通ならば間に合っていないタイミング。

 しかし、オルディアはそれに見事応じた。放たれた剣を受けると逆に弾き返す。相手がわずかにくぐもった声を上げた直後、彼の刃が剣士に通過した。


 峰打ちではあるのだが、相手は一挙に吹き飛び、受け身もまともにできず地面に激突し転がった。そして止まった時、ピクリとも動かなくなる……気絶したらしい。


「さっさと……何て言っていた?」

「ほう、やるじゃないか」


 オルディアの動きに対し、エズワは褒めそやすような返答だった。


「まさか一撃でやられるとはなあ……しかも、気絶までさせている。実力差がなければ到底できない所業だ」


 これでオルディアの実力はわかっただろう……とはいえ、彼は本気を出しているわけではないはずだ。一斉に弟子達が飛びかかってきても、応じられるだけの実力がある……この調子で戦えば勝てるとは思うのだが――


「まあいい、それでも方針は変わらん」


 他の弟子が距離を詰めてくる。しかしオルディアは動かない。どうやら彼自身、カウンターのような形で戦うつもりのようだ。その理由は、


「儂にはわかる。後方のお嬢ちゃんを気に掛けているな」


 その指摘は紛れもなく正解だった。オルディアが動いていないのは、後方にいるロミルダのことを案じているからだ。一方で話題を振られたロミルダの方は沈黙しつつも、エズワを見据える。


「その理由は、何か支援魔法でも……いや、こんな状況じゃあそれも無理か。ともあれ理由もなく、足手まといになるためにここにいるわけじゃないだろう。つまるところ、現在足を引っ張っても問題ないくらいの何かを抱えている」


 警戒しているな……オルディアの実力を分析した上で、ロミルダの役割を推し量ろうとしている。

 ただ、ロミルダは何一つ手出ししていない状況から、推測はできても確信には至らないはずだ……問題はオルディアがどう動くか。魔力無効化の状況でもロミルダには戦う手段がある。だからこそ彼と共に配置したわけだが……当のオルディアは、彼女を守りながら一人で戦うような雰囲気がある。


「……どうします?」


 弟子の一人がエズワに問い掛けた。彼は「ふむ」と一言呟いた後、


「策があるようだが、それらを考察するのは意味がないな……ここは、押し通るべきか」


 決断は早かった。とはいえ、他の敵が来ないとも限らない現状を鑑みると、こっちとしても戦闘を終了させたいという思惑はあった。

 向こうもどうやら、早々に戦闘を終わらせたいようだし……しかし、その理由は何なのか? ローデンの一味はバラバラに行動して様々な場所へ向かっているわけだが、それには時間制限があるのか?


 疑問が膨らむ中で、オルディア達の戦いが再開する……エズワの指示により、弟子達が一斉に――オルディア達へ向け、突撃を開始した。


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