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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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名を告げる

 ウッドとアルト達の戦いは単純明快で、アルト達が最初全力を出さずウッドと互角であるように見せた。そして力量を誤認したウッドが墓穴を掘る……という作戦だった。

 最初の戦いで、どうやら敵側は星神の力を得てはいるが魔力無効化の効果によってその力の大半を封じられていることがわかった……こちらもそれは同じだが、実力的にこちらが上である可能性が高そうだし、現段階では問題ないとは思うのだが――


 アルト達はひた走る。元々、所定の位置へ移動している最中だったので、そこへ足を向けているわけだ。とはいえそこに敵の存在はいないので、空振りに終わるかもしれないが。


「呼び戻した方がいいか?」


 疑問を口に出しつつ思考する。現在、使い魔を用いて観察はしているが、連絡などの能力は使用できない。魔力無効化により、魔力を多大に拡散するようなことが難しいためだ。俺の能力ならば無理矢理打開は可能だけど、場合によって魔力無効化の魔法そのものに影響が出るかもしれない。やるにしても、それはまずい状況になった時……最終手段とすべきだ。

 現在は使い魔の内にある魔力で稼働し、電波などの要領で俺に映像を飛ばしているような状況。ただ伝言をアルト達へ送る場合、別に使い魔を飛ばす必要があるのだが――


『問題はないだろう』


 と、ガルクは俺へ述べた。


『敵がいなくとも、護衛はつけておくべきだ』

「そうか……騎士も多少そちらの護衛に回るみたいだから、連携すれば大丈夫そうだな」


 俺はアルト達から別の場所にいる使い魔の視点へ変える。そこに、路地をひた走る男性戦士がいた。

 先ほどのウッドと比べてずいぶんと大柄。冒険者勢の中でも一際目立っていたのだが……体格から鈍重なイメージを持ちそうだが、走る速度はなかなかのもので、爆走と言って差し支えないほどだ。


 で、その狙いは……町中にある魔法研究所。国が管理している施設で、城からはやや距離がある。白い塀に囲まれており関係者以外立入禁止となっているのだが、今回城側が守るべき場所として指定し、俺達に護衛を頼まれなおかつ対策魔法を構築していた。よって、現在も塀の内側にいた人は普通に動いているし、騎士もいる。

 で、爆走する戦士は一人なのだが……いや、散らばった他の冒険者が集まり始めている。どうやらその人員は魔法によって行方不明となった人間らしい……ふむ、盾にでもする気か?


「ガルク、どう思う?」

『行方不明者のリストを見せてもらったが、決して戦力的に強いとは言いがたい者達ばかりだった。戦闘面の人員として数えているとしたら、行方不明となった以後に何か仕込まれたと考えるべきか』

「……彼らが王都に向かってくる道中に調べてはみたが、何かされた形跡はなかったけど」

『だとすれば、何かしら道具を利用しているのかもしれん。星神の技術を用いているのだ。方法は多くあるだろう』


 まあ、時を止める魔法なんてものがある以上、何でもありのように思えてしまうよな。


「で、こっちとしては殺すことはできない……」

『行方不明者であるなら、なおさらだな。敵はそれがわかった上で、彼らを動員しているのだろう』


 ……様々な策を要してきている以上、そう考えて間違いなさそうだな。


『えっと、魔法研究所の護衛は……』


 俺は誰を派遣したか思い出して……小さく頷いた。


「問題はなさそうだな。人数は多いけど……ソフィア、どう思う?」

「大丈夫だと思います」


 彼女もまた同意する……さて、お手並み拝見といこう。






 やがて冒険者達が大柄の戦士と合流し、魔法研究所へひた走る。障害は存在しないため、その速度は思った以上に早かった。加えて、大柄の戦士の速度に行方不明だった冒険者達が難なく食らいついていることも驚愕だった。これは間違いなく星神の技術に由来する何かが原因だろう。

 その何かが解明できれば楽になるのは間違いないので、こちらが考察していこう……と、考える間に戦士はいよいよ魔法研究所に辿り着いた。


「……いるな」


 相手は封鎖している門を易々と飛び越えた。それに冒険者達も続く。内面の魔力強化だけで跳びはねたりできているため、かなり身体能力が向上しているのがわかる。

 そして研究所の敷地内にいたのは、


「人数が多いわね」

「ですが、問題はないかと」


 リーゼとエイナの二人……両者とも既に臨戦態勢に入っている。

 そして大柄の戦士は二人を見て、


「ほう……片方は王女か」

「私のことを知っているとなったら、やっぱり城の内部に情報提供者がいたようね」


 リーゼの言葉に対し大柄の戦士は嘲笑するように息を吐く。


「当然だろう……なるほど。この場所に今もいるということは、他国の人間がずいぶんと協力しているのか」

「だったら、どうするのかしら?」

「別にどうもしないが……排除した場合、面倒ごとになると思っただけだ……まあいい。この戦いに勝利すれば、何もかも意味はなくなる」


 その言葉から、星神を降臨させることでどうなるのか理解はしているらしい……。


「知っていてなお、手を貸すのはなぜかしら?」

「決まっている。大いなる目的のためだ」


 戦士ウッドも同じ事を言っていたが……果たしてそれは何なのか。


 首を傾げる間に、戦士の周囲にいた冒険者達が動き始める。リーゼとエイナを真正面と横から……包囲しようとしてくる。対するリーゼ達は……動かない。背後に研究所の入口があるためか、あえて動かず相手の様子を窺うような形だ。


「……ガディア=レーンベだ」


 そして名乗りを上げる。と、ここでリーゼが小首を傾げた。


「名前を告げるのは意味があるのかしら?」

「その胸に刻み、頭にしっかり叩き込んでおけ……この俺こそ、全てを終わらせる者の名だ」


 その口調は……どこか陶酔しているようにも見える。意図はわからないが……いや、名乗りを上げることに何か意味があるということか?


「名前を口にすることで、何か恩恵があるのでしょうか」


 俺と同じ事を考えたのか、ソフィアが言う。俺はひとまず「わからない」と答えつつ、リーゼ達の戦いを眺めることとなった。


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