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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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剣士の実力

 迫るウッドに対し、真正面から挑んだのはアルト。そしてキャルンは横手に回り、イグノスは後方で杖を構える。

 三人の中で、イグノスについては魔力無効化の魔法が効いている故に、出番がないようにも思える。もちろん身体強化などは可能だが、アルトやキャルンと比べればその出力は低いだろう。


 もっともこれは、あくまで二人を基準とした話。修行により強くなった以上、彼の強化魔法は間違いなく歴戦の戦士を超えるほどになっているはずだ。

 再びアルトとウッドが激突する。鍔迫り合いとなったが、即座にウッドは退いた。キャルンが常に動向を探っている……隙を見せれば横から一撃で仕留めるだろう。


 相手をするウッドとしては、数的不利の時点で厳しいはずだが……どうやら対峙しているアルト達は別の見解を抱いているようで、


「その力、どうやって手に入れた?」


 大剣を構え直しながら、アルトは問い掛けた。


「こっちはそれこそ、巨大な魔物さえ倒せるくらいには修行をしているわけだが……例え魔力無効化があってもしっかり身の内を強化し、こっちに食らいついている」

「俺からすれば、お前達がどうしてそこまで強いのか甚だ疑問だな」


 切って捨てるような口調で、ウッドは応じた。


「こちらには明確な理由がある……エメナ王女の知り合いならば、どういう理屈がわかるはずだ」

「まあ、確かにな……それと同じだと考えないのか?」

「王女が星神の力を利用するとは思えん」


 応じた直後、ウッドの気配が変わる……外面は何も変化がない。けれど、使い魔を通してもわかる。確実に体の内にある魔力を高めた。


「答えはしないだろうが……こちらの力に対抗できる何かがあるというのは、由々しき事態だ」

「そうは言っても、余裕があるように見えるな」


 アルトの指摘にウッドは押し黙る。


「確か脅威ではあるが、自分達ほどではない……といったところか?」

「そちらも余裕そうだな」

「正直、お前さんの能力についてはわからないことだらけだが……こっちも色々とやってきたからな。自信はあるさ」

「なら、それをへし折ってやる」


 明言と共に、ウッドは走った。再び交差する彼とアルトの刃。即座にキャルンが横から攻めようとしたが――今度はウッドが上手だった。


「はあっ!」


 気合いと共に放たれた剣戟は、アルトの体を大きく押し返す。体勢を崩すようなことにはならなかったが、ウッドの剣戟に勢いはあったため守勢に回る。

 それをウッドは見逃さず、なおも攻撃しようとして――彼は、足を大きく横へ動かした。


「おっ……?」


 アルトが声を発した時、ウッドは彼の横をすり抜けた。キャルンがいる場所とは反対から抜け、その狙いは――イグノス。


「そう来たか!」


 アルトは叫び、彼の背を狙おうとする。だがそれよりも先に――ウッドはイグノスへ肉薄した。


 神官の出で立ちである以上直接攻撃は得意ではない。よってまずは彼を仕留め精神的に揺さぶろう……そんな意図かもしれない。実際、アルトと延々切り結んでいてもキャルンに隙を狙われるだけだし、かといってキャルンを狙うにしてもウッド本人よりも俊敏な動きから考えて捉えるのは難しい。ならば最初に後方にいる人間を……ということだろう。

 それはウッドが状況を打開する方法としては、おそらく最適だった。イグノスはまったく動いていない。援護しようにも魔法無力化の魔法が続いている以上、できることはほぼない。


「仲間だとして連れてきたのが徒になったな!」


 ウッドが叫ぶ。アルトもキャルンも決定的に対応が遅れた。そのくらい、ウッドの動きは速かった。


「終わりだ!」


 彼は告げ、イグノスへ刃を向ける――この戦いにおいて、ウッドがここまで手にした情報を基にした戦略としては最善。だから彼は、考えなかっただろう……アルトやキャルンがイグノスを連れてきた意味を。

 剣を防御すべく、イグノスが杖をかざす。ウッドはそれにも構わず剣を振り下ろした。杖ごと両断する――そういう狙いだった。


 けれど、結果は……杖で剣を受け、イグノスはあっさりと耐えた。


「……何!?」


 そればかりか、杖を振りウッドの剣を押し返した。これには彼も驚愕の表情を見せる。

 それと共に、彼は状況に気づいたかまずいという顔をした。背後から、アルトとキャルンが迫っている。


 同時、彼はどうやら悟ったようだ……この戦型こそ、アルト達が狙っていたものなのだと。


「そういう、ことか……!」


 失態を犯したと判断し、ウッドは舌打ちしながら迎撃しようとする。そこでまずイグノスの杖が放たれた。膂力は十分。急造で杖術の手ほどきも受けていたようだし……それにより、ウッドを大きく弾き飛ばす。

 けれどもし、接近戦を挑まれていれば突破されていただろう……いくら鍛えたといっても、元が剣士と神官ではあまりに違いすぎる。けれど、魔力強化……星神に挑むために行った魔力強化の恩恵によって、実力を知らないウッドを押し返すことに成功した。


 彼は即座に背後から迫る剣から逃れようとする。半ば無理矢理体を反転させ、まずアルトの剣を受けた。しかし、今回はさらに状況が違う。


「ぐ、う……!?」


 受けきれない。星神の力を使っているにもかかわらず、押し込まれる。

 このままではまずいと判断したウッドは、どうにか大剣をいなして逃げようとする。だが一歩遅かった……いや、ウッドの想定よりもキャルンが速かったと解釈すべきか。彼女の短剣がとうとう彼の腰を捉え、一閃した。


「が……!?」


 そこで短剣を受けた衝撃を利用し、大剣から逃れることに成功。だが体勢を大きく崩し、隙を晒してしまう。

 それはアルトが一撃を決める決定打となった……大剣がウッドの体を通過する。鮮血が舞い、彼は剣を取り落とし道路の上を幾度も転がり……動かなくなった。


「悪いな」


 アルトは言いながら彼に駆け寄る。気絶しているのだが……魔力無効化により治療魔法も使えない。そして彼を取り調べする必要があるため、


「イグノス、予定通り城へ連行を――」

「その必要はなさそうです」


 具足の音が聞こえた。援護するべく騎士が駆けつけたようだ。


「なら、ここは彼に任せて俺達は……」

「そうだね」


 キャルンは同意。イグノスもまた首肯し……やがて来た騎士にウッドを任せ、三人は走り始めた。


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