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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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たった一つの候補

 わからないことが多い中、最終的に俺達はエメナ王女の近くに誰かを派遣して状況を見定めることに決定した。


「どういう目論見で、どういう意図で……それを探るには、こちらから誰かを派遣して、調査するしかない」

「そうですね」


 ソフィアがいち早く同意し、他の仲間達も承諾したが……ここで問題が生じた。


「では、誰が行くかについてですが……」

「一番の問題だな。リズファナ大陸の人間ではない俺達なら誰でもいいという考えもあるわけだが……とある可能性を考慮すると、危険になる」

「転生者がいるかどうか、ね」


 リーゼが発言。そこで他の仲間達は押し黙った。

 転生者――つまり、この世界のことを事前に、神の視点で知っている人間がいる可能性を踏まえると、例えば俺が向かうのは大問題になる。


「転生前の知識がどういうものなのかによっても変わるけどな……例えば俺の場合は、ビジュアルもかなり近しい状態で知識を得ていた。だからソフィアを始め賢者の血筋の面々については顔も知っていた。他の大陸の人間についても、同様だった」

「もしルオン様と同じであれば……」

「ルオンという存在は本来魔王との戦いにおいて脇役中の脇役だが、少なくとも関わりがあることは確かだ。転生者であれば、そうした情報を保有している可能性は十分あるし、そうであれば俺達が登場した瞬間、まずいことになる」

「関わりのない人物なら良いのでしょうか?」


 ソフィアが問う。確かにありだとは思うのだが……、


「色々な可能性を考慮すると、単に賢者の未来に直接的な関連がなくとも危険だと思う」

「というと?」

「例えば、リーゼなんかは魔王との戦いでほとんど関連がなかった……よって、転生者であっても知らない可能性が高いわけだが、それとは別に王族だから……あるいは、シェルジア大陸の人間だから知っているという可能性もある。まあリーゼは城に滞在していたわけだから、面が割れているから採用はなしだけど」

「なら、誰が候補に?」

「賢者の未来に直接的な関わりのある人物は全員却下だな……」


 シェルジア大陸以外の人間についても、同様のことが言える。デヴァルス達についても組織に入り込んでいるから当然却下。

 こうなると頭が痛いな……根本的に俺の記憶を下に仲間を引き込んでいたこともあるため、転生者に露見しないようにする、という前提で考えるとかなりまずい。


『我らが人間として入り込むのはどうだ?』


 ガルクからの提案だった。しかし俺は首を左右に振る。


「相手は転生者……しかも星神の力を所持していることを考えると、例えば使徒と戦い連携した存在も危ういと思う。魔法で誤魔化せるにしても、星神から情報をもらっていれば露見する可能性はある」

『むう、そうか……だがそれを言ってしまうと、この場にいる面々では誰も残らなくなるぞ? 人間に擬態できるのであれば、十分では?』

「……転生者の能力によっては正体がばれなくとも、神霊だと見破られないとも限らないんだよな」

『転生者か……ふむ、ルオン殿のことを考えると、あながちないとも言い切れんな』

「俺達が考えすぎという節もあるが、敵方はまだこちらの存在を捕捉できていないかもしれないわけで……そうであれば、この屋敷にエメナ王女達の味方がいる……星神を討とうとする存在がいることを知らないわけで、そういうアドバンテージが残るのではあれば、その可能性は失いたくないな」

『今回のこと自体、非常にイレギュラーだからな』


 ガルクも沈黙する。しかし、こうなると手詰まり感が――


「たった一つ、候補があるけれど」


 ふいに、手を上げた……アンヴェレートだ。


「アンヴェレート? そちらの場合は星神の力を利用していたこともあるから――」

「わかっているわよ。堕天使となっていた以上、星神に情報が渡っている可能性は十二分にあるから」

「では、誰だ?」


 アンヴェレートが黙ってある一点を指さした。それはテーブルの上……ふよふよと会議室を飛び回っているユノーの存在だった。


「……へ?」


 当の彼女は間の抜けた声を上げる。


「彼女は星神とは関係のない場所でこの現代に出現した。話していなかったけれど、彼女には人間のように立ち回れる術式を仕込んでいるの。私と顔立ちはうり二つだけれど、化粧でもすれば他人のそら似くらいにはごまかせるでしょう。それに、この子のことはよく知っているから、擬態についてもかなり綿密にできる」


 いきなり引き合いに出されてユノーは右往左往し始める。けれどその間にも、アンヴェレートは説明を始める。


「懸念としては、もしもの場合戦えるのかだけど……これについても案があるわ。そもそも、この子は私が自ら作り上げた存在だし、今から技術的に力を加えることも可能よ」

「え……ええ……!?」

「……確かに、一番悟られない候補だな」


 俺は頷きはしたのだが……困惑するユノーを見て、


「けど、最大の問題が一つ。演技とかできるのか? どんなことがあっても動じないような態度を見せなければ、危険だぞ」

「それもまあ、色々処置できるし」

「言い方がなんだか怖いな……みんなはどう思う?」

「まず本人に聞くべきじゃないかしら」


 リーゼが矛先をユノーへ向けた。


「ユノー、あなたはどう思うのかしら? やれるかどうか」

「う、うーん……あたしは……」


 腕組みをして考え始める小さな天使。本来なら神霊とかに任せるべき案件かもしれないのだが、露見されないという確率を上げるためには彼女がベストと呼べるような状況。


「そもそも、アンヴェレート」


 ユノーが悩む間、俺は一つ問い掛ける。


「処置を何かしら施すにしても、時間がないぞ。交渉する云々はおそらく、長くて十日後とかに始まるだろう」

「十日あればなんとかなるわよ。エメナ王女には多少時間を稼ぐように言ってもらえれば」

「……だそうだけど、ユノーはどうする?」


 なおも悩むユノー。なんだか頭の上から湯気が出そうなくらい考えている……無理なら辞退して構わないと言おうとした時、小さな天使から返答がやってきた。


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