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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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賢者の戦い

 賢者の夢があることに気づいたのは、実際に夢の中に入り込んだ後のことだった。意識が飛び戦場を走っている光景を見た時、そういえばと思い出したくらいだった。


「ふっ!」


 賢者はふいに杖をかざした。空へと向けた先端から雷撃が生まれ、飛来しようとしていた鳥型の魔物を打ち落とす。

 周囲は混沌という言葉が似合う情勢となっていた。場所は平原の一角だと思うのだが……魔法を打ち込んだ結果なのか、周囲の地面はずいぶんとボコボコになっていて、元々どういう土地だったのかも正確に理解することが難しいほどになっていた。


 なおかつ、周囲は……俺は自分の意思で辺りを見回す。多数の人がある一点を目指して突き進んでいる。賢者もまた同じ方向へ足を進めている。

 では、どこへ……真正面を見る。そこに、遠目から見てもわかるほど、巨大な竜が存在していた。


 体表面が黒く、なおかつその鱗は鋭くまるで刃のよう……確かゲームに存在しているような見た目だった。名前は『カオスヴォイドドラゴン』だったか……それこそ隠しダンジョンで出てくるような魔物であり、『エルダーズ・ソード』シリーズの数作品に顔を出していた。

 見た目通りに固く、また攻撃能力が高い……ダンジョン内で遭遇し、全滅しかかったことがある……それほどの難敵に対し、人間側は総攻撃を仕掛けていた。


「くっ!」


 土砂が巻き上がる。どうやら竜の周囲には魔族や魔法を扱う魔物がいるらしく、時折魔法が飛んでくる。それを賢者はかわし、さらに地面が隆起した場所を遮蔽物として隠れる……まるで塹壕に逃げ込むようだった。


「このまま直進すればたどり着けるが……さすがに分が悪いか?」


 賢者の傍らにいる男性が告げる。顔に傷のある男性で、その装備から歴戦の戦士であることがわかる。おそらく賢者と同じように集められた戦士の一人なのだろう。


「俺達だけであの竜を打倒するのはキツいだろ」

「……だとしても、誰かがたどり着いて竜の周辺にいる敵を片付けないと」


 賢者はそう告げてから、敵の様子を窺う。


「竜は最悪後回しでいい……とにかく、竜を守っている奴らを片付けないと」

「遠距離からの攻撃も通用していないからな……幸い、こちらもまだ被害は少ない。地形が無茶苦茶になって隠れる場所もできたから、近づくこともできる……が、それでもキツいことに変わりはないな」


 どこかで爆音が響く。さらにバリバリバリ! という雷撃音。これは味方側の魔法だろうか。

 賢者が様子を確認すると、竜を守る魔物の一体を雷撃が打ち抜く光景が見えた。誰かが接近して魔法を浴びせているようだ。ふむ、地形的には竜を中心に魔族や魔物が扇状に陣形を組んでいる。竜の背後は森なのだが、あちらから味方が来ないのは、森は魔物のすみかになっているかだろうか。


 そして人間側は竜の背後を除く方向から攻め立てている……現状、人間が取り囲んでいる形なので、地の利としてはこちらが有利ではあるのだが、


「――あんまり長期戦になったら、さすがにこっちがもたないな」


 と、戦士が賢者へ告げた。


「今はこっちが攻勢に出ていて、魔族達が守勢だからどうにかなっている。だが、魔族が反撃に転じたら……均衡はあっけなく崩れる」

「俺も同意見だ」


 杖を構える。その先端から溢れる魔力。まだ距離はあるが、賢者の視線は次に隠れることができる場所を見つけ、指を差す。


「あそこへ向かうぞ。あの地点まで行けば……魔法が届く」

「わかった……ああ、確かに絶好のポイントだな」


 その言葉の直後、賢者達に近寄ってくる人影が。騎士や兵士……後方からの援護部隊だった。


「助力を」

「お、助かるぜ。あの地点まで行くが……ついてこれるか?」


 騎士達は全員頷く。それで賢者も決断し、


「では……進む!」


 走り出す。賢者と併走する形で戦士が続き、さらに騎士や兵士達が相次いで飛び出していく。すぐさまそれに気づく魔族。魔物が魔法を放つが……それを賢者が障壁を形成して防いだ。

 少し距離はあるが、このペースなら一分ほどで……そんな予測を立てた矢先、他ならぬ竜が咆哮を上げた。それと共に魔力が……賢者の体へ打ち付ける。


 まだ距離はあるのだが、賢者の体を震わせ、また同時に恐怖を呼び起こすには十分すぎる圧だった。けれど賢者が立ち止まることはない。勝たなければ――そういう言葉が胸の中で響く。周囲にいる戦士や騎士、兵士達でさえ後退は選択しない。この戦場に立っている人間は全員がわかっているのだ。ここで退却すれば未来はないと。


「突撃!」


 誰かが叫んだ。それと共に賢者はさらに足を前に出す。人間側から魔法が竜へと降り注ぎ、魔族や魔物がそれを防御する。

 その間に賢者はとうとう目的の場所へ到達する。竜までの距離は魔法の射程範囲であることは間違いない。


「で、どうする? まずは魔族や魔物か?」

「ああ」


 賢者は杖を振りかざし魔力を溜める。それにより相手も気づいたが、別の場所から魔法が打ち込まれ、賢者達への対処が遅れる。

 そこで賢者は、杖の先から魔法を発動させた――それは巨大な雷撃。まるで雷雲から迸るような巨大な雷撃……それが、魔物達へ放たれた。


 一瞬、視界が真っ白に埋め尽くされる。敵の気配さえも一時消失するほどの規模であり――杖が魔法を放ち終えた時、賢者は荒い呼吸をした。


「大丈夫か?」


 戦士からの問い掛けに賢者は小さく頷き状況を確認する。目前にいた魔物や魔族はかなり負傷し、動きを大きく鈍らせていた。竜についてはまだ影響はないようだが……続けざまに魔法がたたき込まれる。集中砲火により、とうとう魔族達も滅びていく。


「……いよいよだな」


 戦士が呟く。目標とする竜へ向け、突撃しようということか。


「アイツを倒せば、ようやく国境が開かれる……援軍が来るかどうかはわからないが、な」

「……でも、希望はつながる」


 賢者が言う。ふむ、重要な場所を封鎖するのがあの竜ってことか。

 ここで、周囲にいる魔族や魔物が消え失せる。残るは竜だけ。しかし、それが最大の戦いであるのは賢者もわかりきっていた。


 賢者より先に、突撃を開始する者達が現れる。それを見た賢者は――戦士に目配せをした後、竜へ向け走り始めた。


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