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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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遠い目標

 朝食後はいつものようにソフィアと共に訓練を重ねる……訓練開始からそれほど日数は経過していないにしろ、ずいぶんと進展はしている。とはいえ、この鍛錬はおそらく星神と戦うときまで続く……それに、ここまでは早足でたどり着いたが、ここからはかなり大変ということで、現状は多少足踏みしているような状況だった。


『今は、次へ進むための助走段階だと思えばいい』


 と、訓練を続ける俺達にガルクは言った。


『焦る必要はない。我の目から見て、着実に進んでいる』

「それだったらいいんだが……」

『正直、今の段階まで進むのに下手すれば数ヶ月も覚悟していた。それを踏まえれば、十分すぎる結果だ』


 語ったガルクの視線はずいぶんと温かいものだった。


『ふむ、次の段階に到達するまでは我もここにいる必要性がないな。少し別所にいるとしよう』

「何をするんだ?」

『星神を打倒するための手はず……ルオン殿達以外にも、我らでやっておくべきことはある』


 そう話すガルクの声は重い。


『こちらのことは気にせずともいい。ルオン殿達はそちらに注力してくれ』

「ならお言葉に甘えて……」


 こちらが返答した矢先、ガルクの姿が消える。残された俺達は相も変わらず四苦八苦しながら修行を続ける。


「……ソフィアは、ガルク達がやることについて何か聞いているか?」


 ふいに彼女へ話を向けてみる。それに対し、


「私は何も……ただ、アンヴェレートさんと色々やっているみたいです」

「星神との戦いについて、組織を編成したけど、現在の主役は人間以外の存在だな」


 ガルク達神霊が俺とソフィアの修行を施し、デヴァルスは裏組織の調査に……つまり天使達が動いている。そして星神の研究の中核にいるのは元堕天使……改めて考えても凄まじい面子だな。


「まあ、星神との決戦は人間達が主導で動くことになるし……今のうちに英気を養っておけってことかな」

「そうですね」


 決戦になったら仲間達にはしっかり働いてもらおう……で、俺達はひたすら修行を進めていくのだが――


「終わりが見えないな……」

「そうですね……」


 ちなみに朝から始めて、さらに昼をまたいだのだが……まあ焦る必要はないと言われたし、ゆっくりとやろう。


「ふむ、食事以外休むこともほとんどなかったし、休憩するか」

「わかりました」


 息をつく。気づけばずいぶんと疲労が溜まっている。どれだけ戦っても疲労感がないような体なのだが、今回ばかりはきつい。

 今までにないようなことをしている上に、作業の進み具合が本当に牛歩だからな……堕天使との戦いや共鳴などについては似たような形だったが、なんというか今回は手応えが全然ない。


 ここはガルクの言葉を信じて続けるしかないけど……というわけで休憩に入る。食堂へ入った時、ぐったりとしている人を発見した。


「……どうした?」


 机に突っ伏していたのは……リーゼだった。


「何かあったのか?」

「……訓練で疲れただけよ」


 と、顔を上げながら彼女は答えた。


「二人は順調?」

「手応えがなくて苦戦しているけど、ガルクが言うには進んでいるってさ」

「なるほど。手探りだから大変なのね……」

「そっちは?」

「こっちは神霊達が作成した存在とスパーリングといったところね」


 へえ、スパーリング……俺とソフィア以外の面倒も見ているわけだ。ガルクのやっていることの一つかな。


「星神との戦いを想定して……といっても、あくまで現段階で知り得た情報に基づいた敵だけれど」

「敵か……それ、どういう形をしているんだ?」

「とりあえず人型よ。でも、本当に厄介で現在のところ私達はまったく歯が立たない状況ね」


 歯が立たない……組織のメンバーはそれこそ歴戦の勇者といっても差し支えないほどの力を持っているはずだが、それでも勝てない相手か。


「ロミルダのように基礎能力の高いメンバーを中心に据えて戦っているのだけれど……」


 と、リーゼは横を見た。そちらを向くと、お茶を飲んでいるロミルダの姿があった。


「想定しうる能力を持たせた存在なのだけれど、どれだけの人数で相手をしても勝てないわね」

「……確認だけど、どういう想定で戦っているんだ?」

「ルオン達を星神の核へ向かわせるための時間稼ぎ」

「ああ、なるほどな……」

「その想定だから、別に勝てなくてもいい……けれど、時間を稼ぐ必要はある。だから、どれだけ戦い続けられるのかという修行なのだけれど……」


 星神想定だから、とんでもなく強いのだろう。


「人型だからまだ切り結べるけど……」

「なるほどな……それ、時間を稼げるようになれば目標達成なのか?」

「今はまだ全員で押さえ込んでいるけれど、最終目標は単独で食い止める。どれだけの数、敵が現れるかわからないから」

「……その内、複数体食い止めろとか言われそうだな」

「たぶんそれをさせる気でしょうね」


 リーゼは息をつくと、天井を見上げた。


「星神という存在について私達は情報を得たけれど、まだまだ……神霊達が想定として生み出した存在ですら、厳しいのであれば修行が全然足らないわね」

「……間に合うのか?」

「間に合わせる、と神霊様は言っていたわよ」


 どうする気なのか……なんだか不安になるけれど、リーゼ達はやる気みたいなので、俺は口を挟まないでおく。


「ロミルダなんかは武器が強力だから、おそらく対応するのは早そうだな」

「そうね。能力的には十分で、本質的な問題はまだまだ戦闘経験が足りないから、らしいわ」

「経験か……」


 彼女の能力は目を見張るものがあるし、共鳴により星神の使徒を倒す際は中核部分を担った。けれど確かに、戦闘面という点ではまだまだ足りないものが多いか。

 とはいっても、俺達は率先して戦闘経験を積ませるとかいう発想はなかったからなあ……ま、考えても仕方がない。ガルク達に任せるとしよう。


 ソフィアがロミルダに近寄って話をし始める。俺はそこでリーゼと向かい合わせで座り、お茶を飲むことにする。


「もう少し話すか……といっても、現状だと話せることって星神に関することだけだな」

「外にも出ていないからね」

「……気分転換に、何か話題がないか探すけど――」

「ああ、それなら……一つ、聞きたいことがあるんだけど」


 と、リーゼが笑みを浮かべながら俺へ話を向けてきた。


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