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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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夢の続き

 目を開けると、そこは屋敷の天井ではなく、木目の天井が見えた。起き上がるとそこは宿屋の一室のようだった。


「さて……」


 周囲を見回した後、俺は自分が寝間着であることに気づく。とりあえず着替えて……鏡とかを探してみたのだが部屋の中にはない。自分の姿くらいは確認したいのだが、どうやらできないらしい。


「あるいは、見せないようにしているのか?」


 疑問を口にしつつ、俺はひとまず部屋を出る。二階らしく、階段を降りると一階は酒場だった。

 そこで昨夜の夢で見た戦士姿の男性がいたので近寄ってみる。


「おう、起きたか。どうだ? 目覚めはいいのか?」

「まあね」


 答えながら彼と向かい合う席につく。昨夜の夢から時間が経過しているのだろうか……内心で思っていると彼から答えを提示した。


「で、今日はどうする? 昨日町へたどり着く途中で話し合った通り、遊ぶか?」

「ああ、そうだな」


 頷く俺。そこで彼は指をパチンと鳴らし、


「なら、今日は自由行動ということで頼むぜ」

「計画があるのか?」

「まあな。そっちはどうするんだ?」

「俺は……町を見て回るよ。今日一日くらいは観光だ」


 その言葉で彼は納得したのか深く頷き、


「なら、そういうことで。朝飯を食ったら外に出るからな」


 ――そこから彼はものすごい早さで朝食を平らげると外へ出ていった。対する俺は出されたパンをかじる。明晰夢で自分は思うがままに動けるのだが……いや、これはあくまで賢者の記憶だ。こういう風に行動する、というのがすり込まれているのかもしれない。

 ともあれ、夢の中で動き回れる……ちなみにパンの味はない。さすがにここまでは再現できていないらしい。ま、夢の中なので腹が膨れるわけでもない。俺は朝食をとりあえず平らげた後、外に出た。


 外は大通りで、人の往来も多い……ここがバールクス王国の首都であるフィリンテレスだとしたら……周囲に目を向けてみるが、そうだと判断できる材料がない。

 さすがに賢者のいた時代と俺のいる時代とはかなりの年数離れているからな……あれ、現在この国はバールクス王国なのか? そういえば歴史とかあんまり詳しくないから、よくわからないな。


 その辺りを確かめてみようか……などと思いつつ歩き始める。大通りを歩く人々の姿は、格好からしてずいぶん違う。一般の人々はデザインが少し違うくらいでさほど違和感はないのだが、時折冒険者らしき人物なんかは、俺達のいる時代と比べて奇抜な……といっていいのか微妙だが、変わったデザインの鎧を身につけている。

 これは、もしかすると古代技術に関連するものか……? 古代の時代から賢者の時代までずいぶんと経過しているはずだが、古代遺跡から何かしら武具とかが出土しているのかもしれない。もしそうならこの時代の人々にとっては切り札となるだけの力を持っているだろう。


 俺は大通りの店などを見回しつつ歩き続ける……賢者もまたこうして歩いていたのだろうか? もしそうだとしたら、どんなことを考えていたのか。

 現時点で彼はまだ、星神に出会ってはいないしそもそも魔王と戦ってもいない。つまり名が知られるより前の時代であり、単なる冒険者としての姿であることは間違いない。そうした姿を見せて俺に何を伝えたいのか……。


 で、何もイベントとか起こらないのだが……もしかして、毎日こういう夢を見せるのか? それはそれで賢者は何をしたかったのか疑問になるのだが――


 ふいに、俺は何かを感じ取った。夢の中であるため判然としないが……おそらくそれは魔力だ。俺と同じように何かに気づいた冒険者が視界の隅に捉える。そうした人物は一様に、町の入り口方向……城壁にある城門へと視線を注いでいた。

 俺が立っている場所から城門までは距離がある……大きく堅牢な門で、現在は開放されており人が行き来している。門近くでは兵士がいて、逐一町へ入っていく人間をチェックしていることだろう。


 そうした中で、魔力……何があるのかとそちらに目を向けた矢先――城門の奥、街道の先に、何か黒いものがあった。


「何だ……?」


 疑問と共に目を凝らしたその瞬間、今度は耳に人の声が。それはどうやら、悲鳴――


「あれは……魔物か?」


 呟くと同時、俺はどういった存在なのかを察した。人型であることは間違いない……しかしどうやらそれは、人間などよりも遙かに巨大な存在のようだった。

 巨人……そう形容すべき存在が、この町へと近づいてくる。それに気づいた者達は悲鳴を上げ、一様に逃げていく。方向はバラバラなのだが、少なくとも城門付近を逃れるようにして、人々が散らばっていく。


 城門付近にいる兵士も気づいたか、ピィィィィィ、という笛の音が聞こえた。魔物の襲来を告げる意味合いがあるのだろう。それと共に、弾かれたようにどこから兵士が現れ始めた。

 さらに、大通りを闊歩する蹄の音も聞こえ始める……臨戦態勢というわけだ。


「……お、ここにいたか!」


 するとここで戦士の声。振り向けば、慌てた様子で彼が立っていた。


「高台に行って景色を眺めていたら、街道から魔物が来たんで探してたんだよ」

「……巨人、だよな?」

「ああ。あんな図体の魔物は見たことないんだが……」

「騎士や兵士が向かっているようだけど」

「俺達の出番はないだろうけど、どうする?」


 逃げるか、戦うか。ここで賢者はどのような選択をしたのか。

 まるでゲームの分岐みたいな状況だが、俺の心は片方に傾き始めている。おそらくだが、その答えを戦士へ提示しろ、ということなのだろう。強制力というほどではないし、別の言葉を口にはできるのだが……いや、もし俺が間違った方を答えても、戦士が何かしら返答して賢者が実際に見聞きした方向にもっていくのだろう。


 ともあれ、わざわざ逆を選ぶ必要もない……俺は答える。


「冒険者の端くれとして、手伝えるなら手伝おう」

「そうだな。運が良ければ謝礼とか出そうだしなあ」

「そういうのが目的じゃないが……」

「わかっているさ。なら、早速城門まで走ろうじゃないか――」


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