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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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鮮明な夢

 結局、以降の試練についても俺は問題なくクリアできた……最初の時点でずいぶん感触が悪かったけれど、それ以外は何の障害もなかった。


『どうしたのだ?』


 で、そのことに対し俺が引っかかったような顔をしているとガルクが尋ねてくる。


「いや、何でもない……今日のところは一通り終わり、でいいのか?」

『うむ、そうだな』


 ガルクは同意し、俺は部屋へ戻ることに……良好な結果に終わったので、明日からでも本格的に修行を開始するとのことだ。

 違和感はあるけど、良いのだからそれでよしとしよう……などと思いつつも、食事をしても部屋でゆっくりするにしても、心のどこかで引っかかりは存在していた。


 このモヤモヤ感を抱えたまま修行をするのは……とも思ったため、明日になったらガルクに相談してみるかと考えて、俺はその日眠ることにした。

 そして……原因がわかったのは、眠りに入ってからのことだった。






 ――ふいに、俺は自分の視界が部屋の中でないことに気づく。周囲を見回せば、きれいに整備された街道……そこに、俺は立っていた。


「……あれ?」


 思わず首を傾げ、周囲を見回す。どうやらここは、街道のど真ん中……何が起こったのかわからず、俺は立ち尽くす。


「一体……?」


 さっきまで屋敷の中で眠っていたはずなのだが……? これが夢であるとしたら、ずいぶんとはっきりしている。リアリティがあると言えばいいだろうか。明晰夢とか、そういうやつか?

 とりあえず、眠りについた記憶はあるし……などと考えていると、


「おーい、どうしたんだ?」


 ふいに声がした。視線を転じると俺の方へ視線を送る鎧姿の男性がいた。

 ただ、その鎧はなんだか変わっていた。胸部の辺りに複雑な文様が施されている。例えばバールクス王国でよく見るような標準的な装備とは違うのだが……。


「無言でどうしたんだ?」


 再度問いかけてくる。俺は何か返答した方がいいのだと思い、


「あ、ああ悪い――」


 そこで、自分の声でないことに気づいた。反射的に喉に手をやった。そんな動作に対し男性は眉をひそめる。


「調子が悪いのか? 木陰で休憩するか?」

「いや……大丈夫……」


 俺はそう返答した後、歩き出す。夢の中ではあるのだが……なんだかこれが現実であるようにも思えてくる。妙な感覚だが、別に不快ではない……ただ、疑問ばかりが頭の中に浮かび上がる。

 で、場所なのだが……周辺に町はないし、ここがどこなのかもわからない。遠くには山肌なども見えるのだが、それで場所を特定するのは難しい。


 俺は自分の装備を確認する。木製の杖に、青いローブ……典型的な魔法使いだ。そして体つきは、ずいぶんと細い。なんというか、今まで研究機関で仕事をしていて、今はフィールドワークをしています……なんて感じにも見えてしまう。

 ただ横にいる戦士は今の俺に対しずいぶんと馴染みのある雰囲気だし……ここで俺は自分の体のことではなく、周囲に目を向けることにした。とにかく情報が欲しい。まあ明晰夢であったとしたら、こんなことをする意味などないんだけど。


 少しすると、街道沿いに右手に森が見えてきた。そこに沿うようにして道は続いている……なおかつ、次第に人が多くなっていく。この道の先にはどうやら、町か何かがあるらしい。


「なあなあ、都へ辿り着いたらどうする?」


 戦士が聞いてくる。俺としてはどうとも言えないため、


「ああ、そうだな……楽しみではあるな」

「そうだよな。旅を続けて一番でかい町だからな。着いたら少しくらいは羽を伸ばしてもいいだろ」

「それもいいかもしれないな」

「なら、宿をとって遊ぶとしますか」


 陽気に語る戦士に俺は頷く……道中、様々な人とすれ違う。

 商人や傭兵だけでなく、兵士など街道を警備する人まで……今から向かう町は、よっぽど大きいのだろうと予想はできる。


 そんな視線を戦士は感じ取ったのか、


「ああ、最近物騒だからな。魔物が頻繁に出現しているらしいし」

「魔物?」

「特に南の方が……らしいぞ。俺達は北へ北へ進路を向けていたからあんまり自覚はなかったけどな」


 魔物か……ここがどういう場所なのかもわからないし、答えようがないな。

 そもそも、ここは一体どこで俺は何を……昼間の修行と何か関係があるのか? 疑問が膨らむ中で足だけはどんどんと進んでいく。


 ふと、俺は頬をつねってみる。うん、痛くないぞ……ということは、夢であることは間違いなさそうだ。


「おい、どうしたんだ?」


 そんな俺の様子に再度戦士は問いかけてくる……ここまで律儀に尋ねられると、ずいぶんリアルに作った夢だなと思ってしまう。

 あるいは、他に何かあるのか……などと思った矢先、いよいよ町が見えてきた。


「お、到着だな」


 その町は――山を背にして存在し、なおかつ城も存在している。外観の様子はまったく違う。けれど、俺はその姿を見て直感した。ここは――

 何か、口を開こうとした……その瞬間、俺は夢から覚めた。屋敷の天井が見え、俺はしばし呆然となる。


「……今のは……?」


 最後に見た町……あれは――


「バールクス王国の首都、フィリンテレス……?」


 いや、外観はずいぶんと違っていた。より具体的に言うと、規模が少し小さかったように思える。

 俺は呟いてから、何が起こったのか少しずつ理解し始める。まず、昨日の試練……あれがきっかけなのは間違いない。明日以降も同じように夢が続くのだとしたら――


「……話を、しないといけないな」


 ガルクか、ソフィアか……とにかく、これについて色々と確認したかった。

 そして、何より……自分が一体どういう存在になっていたのか。答えは一つしかないのだが、それが間違いないのか。


「確かめる方法はあるのかどうかわからないが……」


 あの夢がどういう意味をもたらすのか……そして、これは修行に関係することなのか。

 謎は深まるばかりだったが、俺は起き上がって支度をすることに。その途中もずっと頭から夢のことが残り離れない。逸る気持ちを抑えつつ、俺は着替えを済ませて部屋を出る。道中で仲間に挨拶をしながら食堂へ向かい……ソフィアを発見した。


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