別荘と国王
俺達が研究を開始して一週間経過した時、エメナ王女から連絡があった。国王が話をしたいと……ただその内容が、少し予想とは異なるものだった。
「王子について、ですか?」
「ああ」
休憩時間の折、仲間へ話をする前に俺は屋敷の廊下でソフィアと話をすることに。そんな彼女は小首を傾げ、
「私達に、というのが何か解せないものを感じるのですが」
「俺もだ。連絡を受けたシルヴィによると、複雑なことになっていると」
「……どういうことでしょうか?」
彼女の頭の上に疑問府が浮かぶ。俺も同意見だった。
国王はエメナ王女から俺達のことを聞いて、星神のことを確認したいのだと思っていた。話をするなら当然そこになるだろうし、俺達としてはその答えを提示するべく作業をしながら色々と準備はしていた。
けれど俺達と王子について話をしたいと……むしろ俺達が行って何になるのかという問題ではあるのだが、
「ともかく、話し合いの理由はそれだ……王子が脱走したとか、そういうことだったら俺達に声は掛からないし、むしろ協力してくれと言うはずだ」
「そうですね……疑問はどちらにせよ王宮へ行けばわかることですし、私達は出発しましょうか」
「そうだな」
――そういうわけで、俺とソフィア、さらにリーゼの三人で向かうことに。ただ指定された集合場所は、当然ながら王城ではない。というか位置的には、
「別荘かな?」
「の、ようですね」
俺達は建物を見て会話をする。周囲はほとんど人気のない、湖近くにある屋敷。森に囲まれた空間は、屋敷という存在がむしろ異質なものに見えるほどだった。
「こんなところに屋敷を建てて、どうするつもりなんだろうな?」
「バールクス王国にもこうした施設はありますよ」
「……考えることは一緒ってことか」
庶民感覚の俺には理解できないけど……玄関まで向かうと、さすがに俺達のことを察してから扉が開いた。中から現れたのは、
「ようこそおいでくださいました」
エメナ王女であった。俺達は礼を示した後、
「国王は?」
「奥でお待ちです」
「……出迎えが王女というのは、もしや」
「はい、必要最低限の人員しかここにはいません。全員、口は固く信頼できる方々ばかりです」
ずいぶんと厳重だな……これから話をする内容がよっぽど深刻なのだと否が応でも認識させられる。
俺達はエメナ王女に通されて屋敷の中へ。内装はシンプルで、装飾の類いはあまりない。進む廊下も赤い絨毯が敷かれているくらいで、特徴的なものはあまりない。
そして、奥の部屋へと通される。そこに、
「ようこそ」
リーベイト聖王国、国王がいた。
「お招き、ありがとうございます」
「そうかしこまらなくともいい……今回は忌憚なく話をしようと思っていた。エメナからある程度の事情は聞いている。まずは座って欲しい」
王は自身が座るソファの対面を手で示す。正直、国王が話をするような場なのかちょっと疑問だけど……密談するのに適した場所ということでここを選んだのだし、いいか。
こちらが着席すると、エメナ王女が王の隣へ座り、
「では、私から話そう」
王が語り始めた。
「おそらく貴方がたは疑問に感じたはずだ……用件は王子のこと。つまりリヴィナについて、だ。そこについては自分達は関係がない……そう思ったはずだ」
「はい」
正直に答える。王はそれを予期していたという風に頷き、
「無論、この内容で呼んだのは理由がある……と、その前にまずは情報交換だ。星神に関して、それについては私もエメナを通して知ることができた。現在このリーベイト聖王国に広まっている技術。あれが危険なものを呼ぶものであることは把握している。しかし、星神について判然としないことが多い」
「それは無理らしからぬことです……とはいえ、こちらも全てを知っているわけではない」
「うむ、そうだな……さすがにどういう対策をしているのかなど、訊こうとは思っていない。そもそもそれは軍事的な技術に関わることだからな。私が聞くのもまずいだろう」
そこについては触れず、か。もしかすると国王は自分由来で情報が漏れるのを懸念しているのかもしれない。
「星神について、おおよそ……どういった活動をしている存在なのか。それを改めて聞かせて欲しい」
「わかりました」
あくまで概略的ではあるが……星神が過去どのように崩壊をもたらしてきたのか、それについて語る。そして国王はどういった存在なのかを深く知り、
「強大かつ、恐ろしい存在だな……いつか目覚める存在が、この時代に地上に現れる。しかもこのリズファナ大陸に、か」
「私達が、絶対に倒します」
ソフィアが明言。すると王は、
「大変心強い言葉だ……強大な存在であるが故に、私達では手に負えないものだろう。よって私達は、貴方がたの支援に回ることになるだろう。具体的に言えば、星神と戦う際の環境……住民の避難や、もし戦争級の戦いとなれば、兵站の確保などがそれに当たる」
「……よろしいのですか?」
俺は確認の問い掛けをした。国の援護があればこちらは大変心強い。むしろ、俺達はそれを交渉しようとも思っていたくらいだ。
「どのような経緯であれ、星神の目覚めるきっかけを作ったのはこの国だ」
国王は応じる。そうした事実を、重く受け止めている。
「よって、できる限りのことはしようと考えている……貴方がたが国のせいではないと否定することはわかっている。しかし、星神はいの一番にこの国を破壊する。それを止めるには、貴方がたに協力することが必要不可欠であり、最善の道だろう」
「……ありがとうございます」
俺は頭を下げた。国王からの確約をもらった以上、リーベイト聖王国が協力してくれるのは確定だ。もちろん裏組織といった不確定要素もあるから、まだ大っぴらに援助をもらうわけにはいかないが、この言質を取っただけでも今回の話し合いには価値がある。
ひとまず、本題へ入る前の段階は終了。俺達は互いに手を取り合って星神を打倒するという意思確認はできた。ならば次は……こちらが言葉を待っていると、国王は改めて俺達へ語り出した。




