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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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分岐点

 エメナ王女の旅はその後も順調に続き、いよいよ明日王都へ……という段階にまで到達する。こちらのことが露見されないレベルで集めた情報によれば、リヴィナ王子が何かしら動いているらしい。


「町中の人に伝わっているということは、大々的に動くってことだな」

「これは賢者が見た筋書き通りよね」


 リーゼの指摘に俺は「そうだ」と同意した。

 決戦の地は王都から外れた場所……エメナ王女はリヴィナ王子から連絡を受け、指定された場所へ赴く。そこでいよいよ決戦という形になる。そこで俺達は、


「予定では密かに観察するってことにしているが……」

「場所がわかっているのであれば、予め準備しておくとかどうかしら?」


 リーゼからの提案。見つからない空間とかを作っておくというわけだが。


「問題は実現可能かどうか……カティ、どうだ?」

「仕込みさえできれば、確かに不可能ではないと思うわよ。ただそれなりに魔力を集積している場所が望ましいし、決戦の場所に選ばれたところに都合の良い場所があるのかどうか」

「……まだリヴィナ王子は行動を開始していないだろうし、今のうちに下見をしておくか」

「そうね」


 カティからの賛同も得られたので、俺達は一路決戦の地へ。王都から少し距離があるのだが……まあこれは余計な人間が来ないようにという配慮のものなので、王都から何日もかかるような位置ではない。

 そこは、古い神殿……王都ができる前、自然を崇めるという意味合いで存在していた太古の神殿だ。ただこれは古代の人間のものではなく、星神による崩壊後の人々が建造した建物だ。リーベイト聖王国としては過去の遺物として実質放置されている場所なのだが、人が寄りつかないために決戦の地に選ばれたわけだ。


「使い魔によると、人影があるわけでもなさそうだ」

「なら、周辺を魔力で探りましょうか。歩き回ったなんて痕跡が見つかればリヴィナ王子も警戒するでしょうし」


 それもそうだな。ということでその辺りの作業はカティに任せ……やがて、俺達は神殿が見える場所の茂み、その一角が上手いこと利用できそうだとわかった。


「神殿周辺には魔力が存在しているな……これって、そういう場所に人々が建物を造ったってことか?」

「魔力を知覚できなくとも、五感に訴えかけるものがあったということでしょうね」


 カティは答えながら手早く作業をしていく。


「うん、これなら私達の気配を消せる……ルオンの姿隠しの魔法に魔力を遮断する能力を付加した形ね」

「改めて問い掛けるけど、こういう魔法も習得していたんだな」

「ルオンのを見て便利そうだと思ったし。それに、魔物との戦いでもゆっくり休める場所を作るには、こういう魔法も必要かと」


 そこまで考えて習得したのか……それが実際役に立っているわけだが。


「ルオン、決戦は神殿の前よね?」

「ああ。神殿といってもかなり壊れているし、中で戦うのは無理だろ」


 俺はボロボロになった神殿を見据える。石造りの階段の上にあるため内部はあんまり見えないけど、外観がかなり損傷しているのは明確にわかる。


「この位置からなら神殿周囲が見えるな……とはいえ、エメナ王女が来るタイミングでここに来るのは露見される可能性もあるけど……魔法を使えば大丈夫か?」

「人数も多いし、事前に準備しておくのが一番かしら。この近くでキャンプでもする?」

「さすがにそれは……近くに町があるし、そこに宿泊しよう。で、王子達に動きがあれば即座に動いて先回りだ」

「そうね」


 俺達は準備を済ませて一度森を出る。これで、不測の事態に備えることもできるようになった。よって俺達は町で休むことに。


「いよいよってところだな……なんだかエメナ王女と話す時も同じようなことを思っていたけど」

「今回の戦いでは、そういう風に気合いを入れることが多いわね」


 リーゼが言う。つまりそれだけ緊張の連続というわけだが、


「ルオン、不安はある?」

「いや……なんというか、これだけ面子が揃っているんだ。なんとかなる気もする」

「ま、気張らないでいきましょう」


 カティが同調。そんな言葉の後、突如通信が入った。ラディやシルヴィからだ。


『ルオン、エメナ王女が明日にも神殿へ向かう……ボクらはどうする?』

「近寄れるなら近寄って構わないと思う。ラディの魔法ならば看破はされない……と思うけど、不安ならば待機してもらっても構わない」

『そうか……そちらは動くんだな?』

「ああ。事前の準備は済ませた」

『ならボクらは少し休ませてもらおうか』

「了解。何かあれば深夜でもいいから連絡してくれ」

『わかった』


 通信終了。長旅で疲れたことだろうし、合流したら労ってあげないと。


「シルヴィとラディはひとまず待機させて……後は俺達で対処しよう」

「はい、わかりました」

「とはいえ、何もなく進めばいいんだけど……」

「大きな分岐点、ですよね」


 ソフィアが言う。俺は即座に頷き、


「そうだな。作戦の成否によって……星神の戦いと、リーベイト聖王国の王族達の未来が決まる」


 エメナ王女は全てを知り、プレッシャーになっていないか……そこが不安だったが、今は彼女を信じるしかない。


「今日は早々に休んで、日の出前から動くことにしよう。リヴィナ王子もおそらくそのくらいには動くはず。距離的にこちらの方が近いし、王都を出るタイミングで俺達が動けば、先回りできるはずだ」


 俺の言葉に仲間は一斉に頷いた……作戦の成否は王女に掛かっている。俺達にできることは非常に少ない。

 というより、俺達は場を上手く設けただけにすぎない。後は王族同士の……王女と王子の問題となる。そこに彼女の仲間も介入することはできないだろうし。


 エメナ王女の心情は……そしてリヴィナ王子の真意は――色々と思いを巡らせる間に日は沈んでいく。そして俺は最後に改めて仲間に休むよう言い渡して、決戦前夜は静かに終わりを告げることとなった。


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