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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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権力の度合い

 翌日、移動を重ねながら俺達は格好と顔立ちを魔法で変えた……ただまあ、魔法を使っている者同士だと普通に見える形にしたので、俺からすれば見た目だけ変えた感じになっている。


「このくらいで十分かしら」

「やり過ぎ感もあるけどな……」


 リーゼの呟きに俺はそう答えた。


 といっても派手な見た目というわけではない。むしろ目立ったら逆にダメなので、地味な配色の衣服であることは間違いない。

 まずリーゼについては主武装はハルバードなのだが、魔法などで生成することから武装ではなく旅装系の軽い感じになっている。傍からすれば魔法使いに見えなくもない……普段ハキハキとした彼女がいざそういうのを着ると、なんだか違和感がある。ただまあ、そのくらいの方がリーゼであると勘づかれる可能性は低くなるから問題はないか。

 髪型も後ろで縛って結い上げており、傍からすれば魔法で人相まで変わっているのだから、露見する可能性は限りなく低いだろう。


 そしてカティについては……髪を後ろで束ね、ローブ姿ではなく軽装となっている。キャルンとまではいかないにしろ、その見た目はスピードを生かして戦う戦士のそれ。短剣も所持しているし、少なくとも魔法使いのようには見えない。

 まあカティはあくまでリーゼやソフィアを護衛する役目の人間なので、王都で顔を合わせた貴族とかでも顔を憶えているかは怪しいけど……これで彼女も問題ないだろう。


 最後にソフィアだが、こちらは具足や小手を身につけて完全に戦士スタイルとなっている。騎士としての訓練を受けているためその辺りの装備は着慣れているのか違和感もない。髪はカティと同様に後ろでまとめているが、こちらは三つ編みにしているのが特徴か。

 一方で俺とフィリは……端的に言えば俺がより戦士に近づいたスタイル。フィリが旅装という感じで、装備品を実質入れ替えたみたいな形になっている。フィリに魔法も憶えさせたし、少なくとも露見する可能性はないと断言してもいいだろう。


「うん、これなら大丈夫そうだな……念のため、リーゼとソフィアは少し距離を置いて、両方同時に見られないようにしよう。王女二人として貴族が認識しているとしたら、同時に視界に入れば見咎められる可能性がある」

「用心深いわね……ま、見つかったらとんでもないことになるのだから、そのくらい警戒するのが当然かしら」


 リーゼはそう言うと、軽く伸びをした。


「さて、それじゃあ改めて出発しましょうか……ルオン、確認だけれどここからの旅路でエメナ王女に障害となる敵は――」

「ゼロだな。道中で魔物とかに遭遇したらその限りではないけど、王女の周辺には頼れる仲間もいるし、後れは取らないだろ」


 魔物を誰かがけしかけるなんてことも、おそらくない……ゲームであれば魔物とエンカウントして王都へ進んでいくって構図になるかもしれないが、さすがにそう頻繁に魔物が現われるわけではない。この辺りは問題ないはずだ。

 ということで、俺達は姿を変えエメナ王女へ追随することに……その間に情報収集だけは行う。敵の出方が俺達の知る物語と比べて変化があるのか……それはしっかりと注視しなければならない。


 もっとも、王都へあまり使い魔を派遣すると見つかる恐れもあるし、あくまで町中で情報収集する程度だけど……結論から言えば、対外的には何も起こっていない。王子王女の争いではあるが、その戦いについては王城の外に情報が漏れていない。

 この調子だと他ならぬ現国王にもその辺り情報は回っていないだろうな……リヴィナ王子は星神の技術に関わっている以上、権力も相応に持っているし、国王に情報が渡らないよう動けるだろう。ただエメナ王女がいつまで経っても帰ってこないというのはあまりにおかしいので、その辺りのことについてはどういう理屈をつけるのかと思ったのだが――


「王女様が旅をしているらしい。霊峰から国を見て回りたいってことで、何やら事件も解決したらしいぜ」


 そんな情報を冒険者ギルドから得ることに成功した。どうやらあくまで彼女は世直し的な旅を行っているだけで、従者と共に霊峰から自らの意思で旅をしているという形になっている。

 現国王がそれで納得するのかと言われると微妙なとこではあるけれど……少なくとも城側が表立ってエメナ王女を迎えに行くとかには至っていない。リヴィナ王子が誤魔化しているのか、それとも何やら適当な理由をでっち上げているのか。


 その辺りのことをソフィアやリーゼに言及したら、ソフィアはある提言をした。


「予想以上に権力中枢に王子がいるのかもしれません」

「どういうことだ?」

「確かに現状、エメナ王女が帰ってくることなく旅をしているというのは違和感があります。いくら国王が説明を受けたからといって納得できるかは微妙なところ。かといって国王が傀儡になっているとか、そういうことではないでしょう。エメナ王女から聞いた話の限り、リヴィナ王子が保有する権力はあくまで王子としての力。中枢にいるとしても、そこで扱える力は国王よりも遙かに少ないでしょうし、国王周辺の人物を懐柔したという雰囲気でもありません。ただ」

「ただ?」

「国王をなだめすかし、時間を稼ぐくらいの力はあるということでしょう」

「例えば……リヴィナ王子の手勢を用いて王女を迎えに行っている、とか?」

「そういうことです。他ならぬ兄の手勢であれば国王も納得するでしょうし。現状を鑑みるに少なくともリヴィナ王子は王城内では情報を上手くコントロールできていると言えます」

「なるほど……その場合、多少暴れてもなんとかなるってことにも繋がるな」

「はい。だからこそ王女暗殺などを実行した……けれど王女が帰ってくればまずいことになるでしょうし、リヴィナ王子としては相当気合いを入れた出迎えをするでしょうね」


 その結果については……俺達は知っているが、これについて変化があるのかも注視しなければならないだろう。


「このまま順調にいけば、そう経たずして王都に辿り着きます。後は……作戦が上手くいくことを、祈るだけですね」


 ソフィアの言葉に俺は頷き……俺もまた、祈るような気持ちとなった。


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