表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

856/1082

星神と王族

「その、今後の作戦について、私の考えが必要だと?」


 確認のような問い掛けに、俺はすぐさま頷いた。


「そうだ。俺達の作戦の中に、リヴィナ王子に関することがある。けれど、一緒に作戦を遂行しようとする人物の中に王子の関係者がいる以上は、尋ねておかなければならないし、何よりあなたの意に反するような可能性があるのならば……他ならぬあなた自身が納得しないだろう」


 エメナ王女は沈黙し、俺のことを見据える。


「リヴィナ王子をどうするかについて、作戦上どうするかはひとまず置いておく。一番重要なのは、エメナ王女……あなたがリヴィナ王子のことをどうしたいか」

「私は……」


 呟き、考え込む。この様子から見ると、恨みきっているというわけではなさそうだ。

 というより、この旅で襲われている事実を踏まえ、問い質したいという思いが強いということだろうか。そうであれば、エメナ王女が行う回答そのものは、極刑を望むなどの荒っぽい内容ではなさそうだが。


「……そうですね、私自身この旅を始めた当初は混乱の極みにありました」


 そして王女は語り出す。


「命を狙われている……そのことは旅を始める前に皆様にお伝えしました。しかし本当に……明確な殺意を持って狙われたことで、信じられないという気持ちにもなりました。ただ」

「……ただ?」

「そこに、憎しみなどはありませんでした。どうしてそこまで……多大なリスクを背負ってまでやり遂げなければならないことなのか、と。純然たる疑問がありました」


 もし露見したら、政治生命は終わるわけだからな……そもそもリヴィナ王子は何もしていなくとも……星神と関わらなくとも、その勤勉さから王位に就くのは確定しているわけで、わざわざ研究に首を突っ込み、あまつさえ技術に否定的な人間を捕まえようとする必要性などどこにもないはずだった。


「……賢者の見た未来においても、王子の感情がどういうものなのかは定かじゃない」


 俺の言葉にエメナ王女は再度こちらと目を合わせた。


「俺達が知る情報は、あくまで起きうる出来事と結果だけだ。誰がどういう思想や信条で動くのかまではわからない。もしそれを知りたければ、直接問うしかない」

「そうですね……私は、まず兄上になぜこんなことをしたのか尋ねたい。その上で、私がどうすべきなのかを決めたい……ただ、どれほど恨まれていようとも、おそらく処刑を望むといった答えにはならないと思います」

「それは、なぜ?」

「肉親だからというのもありますが、今回の一件が露見した時点で兄上の地位は追いやられる……それで、十分ではないでしょうか」


 彼女自身、王子をどうこうするという感情はないらしい。そうであれば、俺達の答えとしては、


「わかった。今回の戦いに勝利しても、王子に危害を加えるという考えはないと」

「はい」

「なら……そうだな、仮に名誉回復をさせるという方向性になった場合、どう思う?」


 問われ、エメナ王女は再び考え込んだ。その瞳にはこれほどのことをしでかした以上、果たしてそれができるのかとか……そういう疑義も存在しているのだが、


「私は、それが国の総意であるのなら……例えばお父様がそれを肯定しているのであれば、とやかくは言いません。もちろん私を殺めようとしたという事実は残りますから、時間は掛かるでしょうけれど」

「そうだな」

「皆様はそれをやろうと?」

「……リヴィナ王子を助けるという作戦上、そういう形に引き込むということになるかな」


 エメナ王女に殺意はない。であれば話してもいいだろう。確認のためにソフィアやリーゼへ視線を向けると、双方とも頷いていた。


「なら、作戦の骨子を語ろう……といってもそれほど複雑な話じゃない。まずエメナ王女がリヴィナ王子と直接対決するという展開は同じだ。加え、王子のやったことが公となり、失脚するのもまた作戦の内だ」

「星神との戦いについて時間を稼ぐには、それしかないというわけですね」


 俺は頷く……ここまでは賢者が見た未来――シナリオ通りなのだが、


「俺達が変えるのは別の場所だ」

「別?」

「少なくとも戦いの流れの大枠は変えない。リヴィナ王子は失脚し、そこからの騒動も、同じように……というわけだが、それについてとある前提がつくのであれば、王族を救いながら時間を稼ぐことができる」

「それは……どのような方法で?」

「といっても難しい話じゃない。むしろ極めて単純な話だ……リヴィナ王子を説得して、こちらの陣営に引き込んでしまえばいい」


 俺の言葉にエメナ王女はさすがに目を丸くした。


「俺達だけで動くにしても限界がある……星神に対する時間稼ぎはできても、王族のいざこざについては干渉するにも限界がある。エメナ王女がいてもそれは同じだが……リヴィナ王子さえ引き込むことができれば、解決すると思わないか?」

「つまり、兄上を説得し、その上で戦いを進めようと……?」

「そういうこと。普通にやっていたのでは、星神と王族、両方の問題は解決しない。それを打開するためには……王族側の問題を解決するには、王子や王を全てこちら側に取り込むことが最善策だと考えたわけだ」


 その上で、シナリオ通りに事を進める……重要人物を味方に付けることができるのであれば、シナリオそのもののコントロールも十分可能なはず。


「もちろん全てを同じにするということは難しいし、なおかつリヴィナ王子を説得しなければならない……重要なのは王子がどのように考えているのか。まずはそこを確かめないといけない」

「私が兄上の真意を聞き、その上で味方にできるかどうか判断すると」

「そうだ。交渉材料は、名誉回復……王が納得するかは不明だが……」

「手段は色々とあります。例えば星神そのものを利用することも可能でしょう」


 ソフィアが語る。彼女はエメナ王女へ視線を向けながら、


「星神に関する警告を王子自ら行い、陣頭指揮する……もちろん王位などを剥奪されている状況であれば戦争において先頭に立つのは難しいでしょうから、そこは状況を見て上手く取りなす必要がありますね」

「なるほど……そうして星神と、私達王族の問題を両方解決するというわけですね」


 エメナ王女は吟味し始めた。俺達はカードを全て切った。後は、エメナ王女の回答を待つだけだ――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ