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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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闇夜の作戦

 次の日の夜、俺達が静かに行動を開始した。使い魔などを介して敵の動向については把握済み。町から比較的距離があるので、俺達が下手なことをしなければ、おそらく露見することはない。

 しかし星神に由来する武器を持っている以上は、油断はできないので露見しないよう慎重に行動をする。敵がいる拠点へゆっくりと進む俺達は、気配隠しの魔法さえ使って絶対に気取られないような処置を施した。


「音はバレるから注意してくれよ」


 言いながら俺が先頭で歩を進める。さて、単純に倒すだけならばそう難しくはない。しかし今回は迅速かつ、的確に事を進めなければならない。

 俺達の技量であれば、十分可能であるはずだが、敵を倒さず、というのは案外大変なものである……これが普通の人なら簡単だが、相手もそれなりに技量がある。瞬時に相手の能力を察し、過不足ないように魔力を高め攻撃する必要があるわけだ。


 まあ俺やソフィアならばそれほど問題はないけど……で、道中で作戦を改めて組み立てる。


「俺とソフィア、そしてシルヴィで一人ずつ担当する。ラディは魔力障壁によって拠点を隔離。情報交換の場は猟師小屋だから、十分可能なはずだ」

「了解」


 ラディは頷く。で、リーゼについてだが、


「そしてリーゼはラディの護衛に加えて、もし敵が逃げた場合に備えておく……色々な戦法が使えるリーゼがベストだろ」

「相手の動きに応じて対処しろってことね。ま、私の出番がない方が楽なのでしょうけど」

「念のためだからな……で、作戦なんだが、事前に猟師小屋については検分してある。入口は一つしかないし平屋だけど、周囲の土地よりも高く建てられている。玄関扉へは三段ほどの階段を使うことになる。で、窓は二ヶ所で位置は――」


 小屋について簡単な説明。それで状況は理解したか、ソフィア達はしっかりと頷いた。


「具体的な作戦だが、まずは小屋の周辺に展開。窓から出てきても問題ないように小屋を囲うように布陣。次いでラディが障壁を構成すると同時に攻撃を仕掛ける。俺が入口を担当するから、ソフィアとシルヴィは窓を頼む」

「わかりました」

「窓を塞ぐように動けばいいか?」


 シルヴィの問いに俺は頷き、


「窓、といってもガラス窓じゃなくて木製で開けるタイプのものだから、敵側も蹴破って逃げるとは考えにくいけど……な。で、そこからは流れで瞬時に判断するしかない。敵の武器については未知な点も多いから、最大限注意するように」


 ラディが魔力障壁を構成することで、星神関係の武器を持っていたとしても、多少の足止めはできるだろう。逃げられた場合はそのわずかな時間によって、仕留める……リーゼがいるけど、俺も動かないといけないかもしれないな。


「あと注意することは……小屋の損壊は気にしなくてもいい。どうせ魔物の仕業にするからな。猟師小屋は町の所有物みたいだから、町の予算が少し削られるくらいの影響は出るけど」


 心の中で役人さんにごめんと謝りつつ、俺はさらに説明を続ける。


「そこからの段取りは、戦闘が終わった後に考えるしかない。首尾良く全員気絶できたら、領主フォルナの所へ連れて行く……帰りは少し強引になるかもしれないけど」

「強行軍ね」

「ま、そこは仕方がないさ」


 リーゼに応じた時、俺達は森の中へ足を踏み入れた。そこでラディへ目配せすると、彼は俺達に魔法を使う。それは暗視の魔法。さすがに明かりを灯すわけにもいかないので、こういう処置になった。

 ただ相変わらず音だけは消せない。足音を殺すにしても、葉擦れの音などはさすがに誤魔化せない。とはいえ派手な動きをしなければ獣が動いている程度の認識だろうから、たぶん大丈夫なはず。


「ルオン、現在も使い魔は観察しているのか?」


 疑問はシルヴィからのものだった。


「ん、そうだな。とはいえあんまり近寄るのも危ないと思ったから、距離はある。具体的に言うと、猟師小屋の真上」

「高度があるということか……彼らは現在小屋の中にいるのは間違いないな?」

「ああ。そこは確かだ」


 これで四人目が急に出てくるとかだったら面倒だけど……ま、それならそれでやりきるしかないな。

 その時、夜の森の中でいよいよ小屋が見えた。まだ少し距離はあるけど、今のうちに準備をするべきだな。


「小屋の周辺は円形に開けている。窓の位置はさっき伝えた通りだから、ソフィアとシルヴィは散開してくれ。俺の魔法は離れたら途切れるけど、ラディの魔法は継続するから可能な限り気配を殺しながら移動を頼む」


 ソフィア達は静かに頷き、行動を開始。そして残った俺を含めた三人は、小屋の入口へ向けて突き進む。


「いよいよね」


 リーゼが声をこぼした後、俺達は小屋の近くまで到達。森が途切れる場所まで来たので、一度茂みに隠れて様子を窺う。


「……明かりが見えるな」


 ラディの指摘。確かに、窓が開いているのか、中から光が見える。ただそれは魔法の照明ではない。ユラユラ揺れているので、カンテラか何かの類いだろう。


「この距離で声とかはさすがに聞き取れないか」

「まだ距離があるからな……さて、二人は」


 周囲を見回す。暗視の魔法を使っているため、距離があるソフィアとシルヴィの位置も捕捉できた。うん、準備完了だ。


「ラディ、障壁準備を。そちらのタイミングで魔法を使ってくれ」

「おう」


 彼は魔力を高める。といっても気取られる可能性を考慮して、少しずつではあるが。彼が魔法を使用した時点で一斉に攻撃を開始する。この距離なら、相手が異常に気付いて動き出すよりも早く、小屋へ到達することができるだろう。

 俺は静かに足へと力を入れた。動く際、クラウチングスタートを構える陸上選手みたく、作戦開始直後に飛び出すような心構えだ。


「リーゼ、後ろは頼んだぞ」


 そして小声で彼女へ告げる。それにリーゼは笑顔で応じ、


「任せて」


 その言葉で俺はもう後ろを見なかった。少しの間、静寂が森の中に生まれる。俺達の存在が夜の森に溶けたかのようであり、俺達の存在を知る者は誰もいない。


「……それじゃあ、いくぞ」


 ラディの言葉。俺が黙って頷いた直後、魔力障壁が展開――作戦が、始まった。


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