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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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変化か必然か

 翌朝、ベッドの上で起床して朝食を、と思った時、連絡が入った。それはエメナ王女の護衛をしているシルヴィからだった。


『早朝に済まない。判断に困る事態が発生したため、相談がしたい』

「どうした?」


 やや切羽詰まった口調に俺は不安を覚える。


『まず、王女の旅自体は問題ない。ルオンに教えられた通り……賢者の予知の流れそのままを辿っている。ただ、その周辺に問題が』

「周辺?」

『王女のことを嗅ぎ回っている人間がいる。直接的ではなく、悟られないようにだが……これは予知の中に入っていないため、ボク達が対処するべきなのか?』


 ――賢者の予知はあくまでエメナ王女に関する旅路についてだった。もし王女と関わりがあるのであれば、賢者が残した資料に載っているはずだ。


『ルオン、これはどう見る?』

「……可能性は二つあるな。一つは俺達が来たことによって生じたひずみ。何らかの勢力が動いている」

『それは、本来あってはならないものか?』

「賢者の資料には載っていない以上、そういうことになる……ただ二つ目の可能性も否定はできない」

『それは?』

「エメナ王女が気付かないままだったということ」


 賢者の資料は、星神が降臨するまでに何が起きるのかを記してあったわけだが、その中心はゲームで言うところの主人公達の動向だ。つまりエメナ王女の行動――ひいてはリーベイト聖王国の主要な人物が動くことによって降臨する。従って、エメナ王女とその仲間やリヴィナ王子の動向などを知ることができている。

 逆に言うと、王女達が直接関わっていない物事については、記載が極端に少ない。まあ賢者とて予知能力にも限界はあるだろう。どこまで見通せていたかわからないが、エメナ王女が結局触れることのなかった勢力の話であれば、筋書き通りの展開でも存在することはできる。


「賢者の資料はあくまで王女達の動向を中心に書かれていた。つまり逆を言えば、王女に接近しても物語の舞台に上がっていなければ、予知の範疇外でも不思議じゃない」

『それは理解できるが……どう判断すればいい?』

「そうだな……」


 シルヴィとラディが王女の近くにいる以上は、介入ができる。もしエメナ王女に干渉してきたのなら、二人に対応をお願いすればいい。他ならぬエメナ王女は近くに護衛がいることを知っているので、上手く口裏を合わせてくれるはずだ。

 ただ……放置する場合、懸念もある。


「これが仮に物語の枠内であったとしても、問題が生じるな」

『問題?』

「王女のことをどこまで追うかわからないが、仮に俺達がいる領主フォルナの屋敷にまで到達してしまったら……俺達のこともバレるな」


 その勢力がどういう者達なのかを調べる必要性がありそうだ。もしエメナ王女の旅路において、本来なかったはずのものだったりしたら、俺達が来たことによって出現した形になる。そうであれば、対処すべきだ。

 ただその判断が難しい……とはいえ、丸っきり無視というのもさすがにできないな。


「早急にこちらは対応策を考える。シルヴィ達は引き続き頼む」

『わかった。もし賢者の予知通りに事が進まなかったら……その原因が報告した勢力であるなら、介入していいな?』

「ああ、構わない」


 ま、エメナ王女と渡りはつけてあるので、大きな混乱は生じないだろう……。


「あ、それとシルヴィ。その勢力について、何か情報はあるか?」

『総人数まではわからない。ボクやラディが見つけたのでは少なくとも三人。格好はバラバラだが……あ、待て。ラディが何か気付いていたらしい……ふむふむ、腕輪か』

「腕輪?」

『ああ、どうも同じような腕輪を身につけていた。自分達の味方だと識別するためなのか、それとも他に用途はあるのか……遠くから観測した限りでは、銀製の腕輪だったらしい』


 情報としては微妙なところだな。周辺を嗅ぎ回っている人間全てに同じ腕輪なら組織だって動いていることが確定だが、それだけでどういう勢力なのか見当をつけるのは難しそうだ。


「わかった、引き続き頼む」

『ああ、もし事態を重く見るのであれば、早急に連絡を頼む』


 通信が途切れる。さて、昨日までのプランを真っ白にしなければならなくなったな。


「何はともあれ、まずは話し合いだ」


 ――よって、俺は朝食の際に仲間達へ現状を伝えた。で、これが賢者の予知通りなのかを考察する。


「普通に考えれば、変化だろうな」

「私も賛同します」


 俺の意見にソフィアが同調。次いで彼女はフォルナへ視線を向け、


「フォルナさん、詳細などはわかりますか?」

「現時点ではなんとも言えないな。ヒントが銀の腕輪だけでは、さすがに絞るのは難しい」

「候補はありますか?」

「うーん……腕輪を介して同胞だと知らせる、という行為はこのリズファナ大陸では存在している。まあこれは腕輪だけの話ではなく、帽子なりペンダントなり、どういう物でも良いのだが」

「識別、ですか」

「他の国でそういう事例があるのかは不明だが……まあ町中ではそういう装備は隠しているだろう。よって接近して確かめるというのは難しいが……ただ、組織で行動しているのは間違いないだろう。エメナ王女に張り付いている護衛は有能だな」


 とりあえず、嗅ぎ回っている存在が組織であることは確定か。であれば余計厄介なので、動き方を考えないといけない。


「それより一つ確認だが」


 ここでフォルナは俺へ話を向ける。


「今回の件、予定外である以上は優先的に対処する、でいいのか?」

「害があるのかないのか……俺達が来たことによって変化したことなのか。それを確認するまでは注力する他ないな」


 何よりもエメナ王女のことを優先すべき……ただ、彼女の旅路に介入する以上、予定外の展開になる可能性は十分ある。


「……エメナ王女とは顔を合わせています」


 俺の胸中を読むかのように、ソフィアは言及する。


「よって、現時点で私達が動いても、敵方に露見されなければ作戦は続行可能だと思います」

「ま、そうだな……元々、エメナ王女とは話し合おうと考えていたところだ。ギリギリなんとかなる範囲だとは思う……が、ネックはやはりどういう組織なのかを調べないといけないことだな」


 シルヴィ達に探させて、使い魔で動向を観察するか? ただ、観察がバレたら面倒な展開になる……色々と考えていると、今度はリーゼから意見が出た。


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