スキャンダル
エメナ王女とそれからさらに話をして、彼女は部屋を後にした。資料についてはまだ部屋にあるが、次彼女が訪れた時に、回収されているだろう。
それまでにまとめる必要はあるのだが……俺は自問自答する。王女と接触することで状況を理解し、また何をすべきか道筋は立った。しかし、これだけ干渉した結果、物語の展開はどこまで変わるだろうか?
色々と疑問はあったのだが……リヴィナ王子が黒幕か、それに近い人物だとすると、展開はそう変わらないかとも感じた。元々エメナ王女はリヴィナ王子が敵だという答えを持っていた。それは俺達がいなくとも変わらない。とすれば、ゲームにおいて彼女は自らの口で事情を明かし、仲間の協力を得る……そういった筋書きになるだろう。
王女が事件の全容を把握しているのなら、旅路そのものも俺達が密かに護衛するとはいえそう変わるものではない……内情を把握することでそれは鮮明になった。ならば俺は星神に関する情報を最優先に行動すべきだ。
「とはいえ、さすがに候補を絞るだけでも大変だな……」
何か手がかりがあれば……頭をかきながら資料とにらめっこをする。その中で考えたこととしては――
「遺跡……遺跡について調べている人を調査すれば、辿り着ける可能性があるのか?」
かなりか細い糸ではあるが、可能性があるとするならこの辺りか……なら、遺跡について調べよう。もらった資料では、その辺りのことを記載したものがあったはず。
そうやってさらに資料を漁り……ユノーの手伝いもあって、俺は遺跡がある場所を見つけた。ただ山脈奥深くに存在していた場所と違い、古代の技術とか、そういう分野での価値はあまりないみたいだが、
「遺跡を調べた人間もいるな……この辺りのことを調べるには――」
文献などを調べるにはどうすればいいか……それらしい場所はある。先ほどユノーが指し示した場所、自由都市トルバスだ。
古い都市なので、遺跡関係の書物などもありそうだ……ここには学院もあるみたいだし、都市近くの山岳地帯に遺跡があるようだ。なら、トルバスに赴いて遺跡関係の学者を調べることにしよう。
「王子にその辺り知っている人がいたら……遺跡の技術を研究していることから、王家と縁のある人だっているだろうし、その辺りは注意すべきかな」
とりあえず方針は決まったといっていい。後はソフィア達にエメナ王女が語った事実を伝えるのは、会談が終わってから……後は国同士の交渉が上手くいくことを祈るとしよう。そんな風に結論づけ、俺は散らばった資料を片付けることにした。
以降、俺はひたすら資料などを調べつつ、今後の方針をまとめる。基本は自由都市トルバスへ向かうことを前提として、他の候補を色々と探した。
それなりにまとまったところで、エメナ王女が資料を回収。ひとまずこちらが色々動いていたことはバレずに済みそうだった。
加え、リヴィナ王子についてだが……ひとまず遠目から様子を窺うことにした。使い魔を用いて、動向を観察するくらいに留めることにする。星神の研究をしているとしたら、何かしらの方法でこちらの使い魔などを捕捉されてしまう可能性もゼロではないので、できる限り悟られない方法で……まあ、リヴィナ王子が外に出て何かをするという可能性は低そうだけど。
そんな形で方針が決まったタイミングで、俺達はとうとう出立の日となった。既にエメナ王女の姿はなく、俺達は代表としてリヴィナ王子に見送られる形で、港まで赴いた。
「今後、双方の発展のため、尽力しましょう」
「はい」
リヴィナ王子とソフィアは握手を交わす。まだこの段階で俺はソフィアを含め仲間にエメナ王女が語った真相については伝えていない。さすがにソフィアやリーゼが顔に出すということはしないと思うが、念のためだ。
少なくとも、リヴィナ王子が俺やソフィアと同じ技量を持ち、戦闘能力などに秀でているとは思えないし、こちらの気配を察するとか、そういうことはできないと思うのだが……星神の研究――いや、古代の研究を通じて何かしら力を得ているかもしれない。穏当に会談を終えることができるのではあればそれに越したことはないからな……というわけで何事もなく、俺達は船に乗る。
リヴィナ王子は出航直後、こちらに手を振った。俺やソフィアが振り返し、ようやく旅の第一段階は終了することとなった。
「……さて」
甲板を歩きながら、リーゼは告げる。
「ルオン、何かしら情報を得たみたいだけど」
「そうだな。まずはそこから始めようか」
俺達は船内へ。そこでユノーを利用して神霊達を交え協議を行う。
最初に俺からエメナ王女が語った内容について伝えると、ソフィアが口元に手を当て、
「星神に関連する技術だった、ということですか?」
「より正確に言えば、俺達が見た夜の町……あれは、古代に存在していた技術を応用したものだ。模倣ではなく、既存の魔法技術と組み合わせて、使えるようにしたってところか……少なくともあの技術については健全だと思う。ただ、魔石などを利用するとなれば、資源の問題が生じてくるが」
「大量に魔石が必要になったら、資源を巡って争うかもしれない、というわけですか」
「ああ……とはいえ、国の発展のためには是非とも欲しい技術と言えるかもしれないな。その辺り、どうだ?」
「危険がないのであれば……ただ、資源が絡んでくる話ですからね。技術については大変魅力ですが、持続的に発展できるものでなければ、色々な意味で危険がつきまといます」
……この調子なら、技術についてはソフィアの判断に任せて大丈夫そうだな。
「わかりました。お父様とも協議した上で、魔法技術については検討してみます」
「それがいい……で、本来は星神に関すること。古代技術の中に星神に関連する研究があった。それを巡ってエメナ王女とリヴィナ王子は対立しているわけだが……王子は研究していること自体を秘匿している。これは現国王も禁じた研究内容であるためだ」
「それが露見すれば、スキャンダルということね」
リーゼが口を開く。
「話の構図は理解できたわ……エメナ王女としてはその辺りを公表すれば……って考えがあったかもしれないけれど、発言権はリヴィナ王子が上。たぶん王子は城内に息のかかった人を配置しているだろうし、研究をしていると王女が国王に語っても、それを誤魔化せるだけの手段があるんでしょう」
「ま、そういうことだな……それじゃあ、物語の構造と共に解説しよう」
そう言って俺は、改めてゲームの冒頭を思い返した。




